ノアの百田光雄前副社長(60)が、三沢光晴さん(享年46)の急逝を受けて決まった新人事を不満とし、退団することが決定的になった。前日、田上明社長(48)に辞表を提出した百田は一夜明けた8日、デイリースポーツの取材に対し、改めて辞意を表明した。6日の役員会、および臨時株主総会で小橋建太(42)の新社長就任を提案したが、却下されたことが要因。辞表は保留扱いとなっているが、力道山の次男である百田は「父なら『(団体に)しがみつくな』と言われると思う」と“日本プロレス界の父”に誓って、団体を去る覚悟を示した。
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新生ノアに早くも亀裂が走った。百田は6日の役員会、臨時株主総会で、新社長に小橋、副社長に田上と秋山準を据えることを主張した。だが、ノアの50%以上の株を保有する前社長・三沢さんの妻・真由美さんの意向で、田上が社長、小橋と丸藤正道が副社長に就任。百田案は受け入れられなかった。百田は「あまりにも僕が想像した人事とは違う。ショックでした」と打ち明けた。
父・力道山が興した団体「日本プロレス」に入門して41年。団体一のキャリアを誇る現役レスラーの百田は「プロレスは選手あってのもの。縦社会。三沢さんもそうだったけど、その時一番頑張っている選手が社長になるのが大切」と信念を語った上で「『考え直してください』という電話はあるけど、男が一度口にしたこと。潔く身をひく」と辞意を強調した。
新人事では副社長を退いて相談役に就いたが「今の体制で何か起きても、もう役員会にも出られない」と無力感に襲われたという。「田上と仲が悪いわけじゃない。僕には常に力道山の名前がついて回る。父なら僕に『(団体に)しがみつくな』と言う」。“力道山Jr.”としての意地があった。そして、自身の現役引退は否定した。
百田はシリーズ開幕戦の12日・後楽園大会に来場し、選手らに経緯を説明する。ノアの今後について、「選手が中心で盛り上げるのが大切」と後輩にエールを送った。現時点で百田の追随者はいないが、団体を支えてきた重鎮が去る影響は大きい。今後、思わぬ有力選手が離脱する可能性もある。