小泉改革の本質!?ゆうちょ銀行、手数料アップの怪
2009/7/7 16:56写真を拡大
小泉純一郎元首相(顔写真)が進めた郵政民営化。結局、金融事業が郵便事業を支える構図は変わらない(写真:夕刊フジ)
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2007年の郵政民営化により、持ち株会社である日本郵政の下に4社がぶら下がる組織形態になった。窓口業務を行う郵便局会社、手紙など郵便業務を行う日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の4社だ。
このうち、郵便局会社はゆうちょ銀やかんぽ生命から受け取る業務代行手数料などが収益源となっている。
中でもゆうちょ銀からの手数料は大きく、営業収益の約半分を占める。手数料には大きく2種類あり、貯金の預け払いや投信・国債の販売、送金などの事務に対して支払われるものと、定期貯金の純増額や年金の自動受け取り口座数維持など、郵便局会社の実績に応じて支払うインセンティブ(報酬)型がある。
このインセンティブ型手数料に昨年8月、大きな変更があった。定期貯金の純増額に応じたものに加えて、純増させた郵便局や地区の数に比例して支払う手数料を新たに設定。年金の自動受け取り口座数の維持についても、手数料の料率を引き上げたのだ。
夕刊フジが入手した資料によると、新設・料率引き上げによる手数料収入のアップ額は、昨年8月と9月の2カ月分が127億円、10月から今年3月までが162億円で計約289億円に上る。
郵便局会社の最終利益は、08年9月中間期が209億円、09年3月期が408億円だから、押し上げ効果は絶大だ。
不可解なのは、なぜ、年度途中に手数料が増えるような手続きがとられたのかということ。これはゆうちょ銀の収益を郵便局会社に移す行為にほかならず、日本郵政グループ全体(連結ベース)でみれば、業績になんの変化もない。
郵政問題に詳しいジャーナリストの町田徹氏は「8月の手数料引き上げは郵便局会社の中間決算対策と考えるのが自然。日本郵政の事業はもともと郵便、郵貯、かんぽの3つなのに、民営化では郵便局会社を含めた4分社化を押し切った経緯がある。4社とも経営が順調で民営化は成功しているとアピールするため、稼ぎ頭のゆうちょ銀から郵便局会社へ“ミルク補給”が行われたのではないか」と指摘する。
また、永田町有力筋もこう解説する。
「ユニバーサルサービス(全国均一サービス)を義務付けられた郵便事業(日本郵便、郵便局会社)は赤字転落の恐れがある。そこで、金融事業(ゆうちょ銀、かんぽ生命)から郵便局会社に払う手数料を調整することで、郵便事業を支えようとしているのだろう」
さらに「金融事業の収益で郵便事業を維持するのは国営や公社時代と変わらない。これは小泉純一郎元首相が進めた郵政民営化の本質を表している」と指摘する。
ゆうちょ銀広報部は手数料について「一部は、郵便局会社の販売力や事務品質の向上を促進するために営業戦略に沿って機動的に設定している」と説明している。
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