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<歴史観の狭間で 大田原・歴史教科書採択>(上)異例の選択肢 実質「つくる会」比較 次回採択狙い他社不在(7月1日 05:00)4年前、大田原市で採択された「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史教科書。国内外から賛否の声が上がり、教科書の内容や採択結果は大きな波紋を広げた。本年度、同市の採択では、つくる会系の2冊(扶桑社版、自由社版)が候補に挙がっている。信念、無関心、国際交流への複雑な思い−。つくる会や教員、保護者、在日韓国人の反応はざまざま。2冊が候補に挙がった背景とともに、歴史観の狭間で揺れるそれぞれの思いや行動を追った。 ◇ ◇ 「反対」「大東亜戦争賛美」−。激しい言葉が記された横断幕が翻る。2005年7月、大田原市勤労者総合福祉センター。会場を後にする小沼隆教育長の公用車は、数十人の人々に取り囲まれた。 この日、大田原市教育委員会で「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史教科書が全国市町村で初めて採択された。 同会が「自虐的な歴史観を払拭する」という理念で編集した教科書は、「太平洋戦争」を「大東亜戦争(太平洋戦争)」と記述。韓国植民地支配の項目に、鉄道整備など韓国内開発の内容を盛り込んだ。従来の教科書と記述法などで一線を画す部分が多い。 一方で在日韓国人や一部市民団体などの目には、「戦争美化」や「植民地支配の歪曲」と映った。同市で起こった不採択を求める抗議活動も、両者の歴史観の差が根本にある。 初採択から4年。再び迎えた採択の年に、もう1冊のつくる会系教科書が登場する異例の事態となった。 ■同じページも 自由社版は現在、大田原市内の全中学校で使用されている扶桑社版とほぼ同じ内容。同会県支部は「昭和天皇のお言葉と戦艦大和の読み物が加わったくらい。まったく同じページもある」と説明する。 異例の事態の背景にはつくる会や発行元の内部事情がある。同会主導の教科書は扶桑社版として過去2回、文部科学省の教科用図書検定に合格。その後、編集方針の違いなどから発行元の扶桑社と決裂した。同会は発行元を自由社に乗り換え、08年度の検定に合格した。 市町教委が採択する教科書は、文科省検定に合格していることが前提。中学教科書は12年度からの検定で、改訂された学習指導要領に沿った内容が必須となる。このため、教科書採択は通常4年ごとだが、次回採択は2年後。同社以外の出版社は08年度の検定を見送った。次回採択に向け、準備を進めたい思惑があるからとみられる。 ■調査省略も可 「新たに検定を経た教科書以外は、調査研究を省略することも可能」。自由社のみの検定合格を受け、県教委は6月3日、県内市町教委に通達を出した。 通達を受けた大田原市教委は、自由社版だけを調査研究する方針だ。「実質、自由社版と扶桑社版の比較になる」(市教委学校教育課)。つくる会系教科書が採択されることはほぼ確実だ。
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