皆既日食の状態から少し時間をずらして撮影。大分では最も大きく欠ける時、おおむねこのくらいの食の状態で見える=1994年11月3日、パラグアイ
国内では46年ぶりとなる皆既日食が22日に迫ってきた。太陽が月の輪郭にすっぽり隠れた皆既日食の状態で観察できるのは、国内では鹿児島県の屋久島やトカラ列島など。県内では最大で太陽が見かけの直径の90%ほど欠ける部分日食が観察できる。 (日食写真はいずれも船田工さん撮影)
「皆既日食の醍醐味(だいごみ)は、きれいなダイヤモンドリングとコロナです」。1968年以降、皆既日食を観察するために旧ソ連やアフリカ、南米などを計13回訪れた大分天文協会名誉会長の船田工さん(76)=大分市坂ノ市=はこう話す。
ダイヤモンドリングは、皆既日食の直前と直後に見られる。月の輪郭から漏れ光る太陽がダイヤモンドの輝きのように見えることからこう呼ばれる。コロナは太陽の周囲で白く輝いて見える。いずれも皆既日食の場所でしか見られない。
細い三日月形に
皆既日食にロマンを追い求める船田さんは、ダイヤモンドリングやコロナをはじめとする天体ショーをカメラやビデオで撮ってきた。白夜の南極では、真夜中に氷原の地平線上に浮かんだ黒い太陽を撮った。
今回は屋久島で観察する。「63年に北海道であった時には見に行けなかったので、日本で見るのは初めて。日本でコロナを見て写真を撮るのが夢だった」
大分市では午前9時39分に欠け始め、同10時58分に食が最大になる。最大食分は0・901。この時、太陽は左側に光る部分が残った細い三日月のような形。その後、徐々に丸い形に戻り、午後0時20分には欠けた部分が完全になくなって天体ショーは終わる。
日食観察は目を傷める可能性があるため、肉眼ではできない。国立天文台(東京都)は、可視光線以外の有害な光線も遮ってくれる日食観察専用の「日食グラス」の使用を呼び掛けている。かつて使われた黒い下敷きや、すすを付けたガラスは危険だという。日食グラスは天体観測施設や書店などで販売しているが、ない場合は次のような楽しみ方を勧めている。
(1)鏡で壁などに反射させる(2)地面に映った木漏れ日を見る(3)厚紙などに直径2~5ミリの穴を開け、穴を通って地面などに映った太陽を見る―
これらの方法で見ると、太陽が欠けた状態で映る。疲れにくいので長時間観察できる。(3)では穴の径が小さいほど、欠けた太陽の形がくっきり映るという。
ネットで中継も
船田さんも「県内で見るなら、木の下に行くと良いでしょう」と勧める。「実際にタイで経験したが、欠けていく様子を木漏れ日で観察できる。太陽を直接、写真に撮るより簡単なので、木漏れ日を写してみてもおもしろいのでは」
県内でも当日は観察会が予定されている。皆既日食やほかの場所の日食をライブで見たい人向けにはインターネット中継サイトもある。福岡管区気象台の資料によると、7月22日の晴れの出現率は大分市では73・3%とかなり高い。
(文化科学部・田崎啓三)
<ポイント>
食分(しょくぶん) 日食で太陽が欠ける度合い。見かけの太陽の直径と、月の輪郭に遮られて欠けた部分との割合で表す。1・000以上が皆既日食。6分25秒皆既日食が続くトカラ列島悪石島(あくせきじま)の最大食分は1・039で、月の輪郭が見かけの太陽の直径より大きい。最大食分の値が大きいほど、皆既日食の時間は長くなる。札幌市は0・506で半分程度しか欠けない。
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