米国で人気急上昇中の動画配信サービスに新たな動きが出た。ケーブルテレビ(CATV)事業者最大手のコムキャストと米メディア企業大手タイムワーナーはこのほど、インターネット上の番組視聴をCATV加入者に制限する新制度を導入することを発表。今夏、コムキャストの加入者5000軒を対象に商業実験が始まることになった。タイムワーナー傘下のケーブル局TNTやTBSの人気番組「ザ・クローサー」や「マイ・ボーイズ」などが、コムキャストの加入者に限ってオンライン上で無料視聴できるようになる。同システムには、衛星放送大手ディレクTV、ディッシュ・ネットワーク、さらにはIPテレビを展開するベライゾンやAT&Tなども参加の方向で検討中だという。
ネット上の番組配信は、地上波ネットワークが積極的に展開しているが、いまのところすべて無料。独立系サイトとして急成長している「Hulu(フールー)」もすべてのコンテンツが無料で視聴できる。今回の動きは、こうした無料型モデルに挑戦状を叩きつけるもの。米国におけるテレビ番組のオンライン配信に大きな変化をもたらす可能性もある。
番組のオンライン配信はうなぎのぼりの人気ぶりとは裏腹に、広告収入の伸び悩みが課題。ケーブル局からは、「無料電子版の普及で本紙が売れなくなった新聞業界の過ちは繰り返したくない」とする声も上がっている。記者会見に臨んだタイムワーナー会長のジェフリー・ビューケス氏は、「テレビ業界にとってまだ深刻な問題にはなっていないが、対応策を急ぐべきだ」と述べた。一方、CATV業界からは、動画配信がこれ以上放置されればCATV加入者の離反につながるとした懸念の声が巻き起こっている。今回の発表は、こうした両者が抱える問題の解決方法の一つとして浮上した格好だ。
ただ、消費者団体からは、「すべての情報が無料で公開されるためにつくられたインターネット革新に反するものだ」(Media Acces Project)などと反発の声が噴出。地上波ネットワーク関係者からも、「消費者を裏切り、デジタル・テクノロジーの発展に逆行することになる」(ウォルト・ディズニー、ロバート・アイガー会長)などと、反対意見も出ている。さらに、同システムには、オンライン視聴へのアクセスを特定のユーザーに制限する際の技術的な問題も指摘されており、商業実験の成り行きに注目が集まりそうだ。
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世界的な広告会社「WWPグループ」傘下の代理店「グループM」はこのほど、北米における2010年の総広告費が6.1%減少、総額1510億j(約14兆3450億円)になるとの厳しい見通しを発表した。2008年以来3年連続の減少が続くことになるという。金融危機に端を発した不況経済下にある2009年の広告費は前年比4.2%減となる1600億j、08年の広告費は前年比2%減となる1670億jだった。
同社で最高投資責任者を務めるリノ・スキャンゾニ氏によれば、地方向けメディアの広告市場の低迷は今年中には底を打つが、全国向け市場はさらに縮小する見込みだ。特にネットワークテレビへの広告支出が減少カーブを描き続けることになるという。スキャンゾニ氏は、米消費者の節約志向に変化が現れない限り、こうした傾向は変わらないと見ている。
同調査は世界70ヶ国の市場を分析したが、世界全体の広告費は減少幅が1.4%に留まる4110億j(約39兆450億円)と、若干明るい見通しだ。米国を含む先進7ヶ国(G7)が低迷を続ける一方で、ブラジル、ロシア、インド、中国の4ヶ国の広告費は回復基調に転ずるという。スキャンゾニ氏によれば、中国は、経済刺激策のおかげで、広告市場が自信を取り戻し始めているほか、原油価格が1バレル70ドル台で推移すれば、ロシアの広告市場も急速に回復するはずだという。
アジア太平洋地域の広告市場も回復する見込みで、グループMでは同地域の2010年総広告費は、今年、3.2%増加となる1170億j(約11兆1150億円)規模に達する見込みだ。
なお、産業別の広告支出を見ると、相変わらず自動車と金融業界が低迷するが、リセッション時につよい、食品や日常品などパッケージ商品(包装された商品)向けの広告費は堅調に推移するという。
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米広告主がターゲットにしている十代の若者(ティーンエージャー)のメディア接触習慣に新しい事実が浮上した。米ニールセン社がこのほど発表した調査結果によると、ティーンのテレビ視聴時間は一日平均3時間20分と、メディア利用時間の中で最も多かった。同調査は、「ティーンは、テキスト・メッセージやトウィッター(簡易ブログサイト)などに忙殺され、テレビを代表とする既存メディアの利用時間が大きく侵食されているとする説を覆すものだ」と結論付けている。
また、景気後退はティーンのメディア・娯楽時間に影響を与えないと考えられていたが、ティーンが外出した際の娯楽時間やメディア利用時間が大人と同様に減っていることも明らかになった。
テレビ離れの要因の一つとされている動画視聴についても、ティーンの利用時間は1日平均11分、一月当たりの時間も3時間となっており、18〜24歳若者層の5時間35分を大きく下回っている。35〜44歳層の3時間30分よりも少ないことも明らかになった。ちなみに、動画視聴でティーンが利用するサイトで最も人気があるのがYouTube(ユーチューブ)。マイスペースやフェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を上回っている。最近人気急上昇中のオンラインビデオ・サイト「Hulu(フールー)」利用もティーンの間に浸透し始めていることも分かった。
このほか、ティーンの半数が「毎日かならずMP3プレーヤーで音楽を聴く」。四人に一人が「毎日新聞を読む」ことも分かったほか、ティーンの家庭の35%がDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)を保有している模様だが、ティーンは、「テレビはリアルタイムで見たい」と考えていることも判明した。
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