アメリカン・メディア
555号    2009年04月10日    編集:テレビ朝日アメリカ・インク

アメリカン・メディア

アメリカン・メディア米長寿ドラマ「ER」が終了

アメリカン・メディアケーブル局シェアがさらに拡大

アメリカン・メディア大リーグ公式戦CM売り上げが好調

アメリカン・メディアディズニーがユーチューブと配信契約


米長寿ドラマ「ER」が終了

米テレビ界を代表する長寿番組で、医療ドラマ人気の火付け役となった「ER:緊急救命室(邦題)」(NBCネットワーク)が4月2日、2時間の特別編成で放送されたシリーズ最終回をもって終了となった。ニールセンの速報によれば視聴者数1640万人を獲得、ドラマ(シリーズ)の最終回としては96年以来最高の記録となった。ちなみに、米調査会社TNSメディアは、最終回の30秒CM枠が42万5千j―50万j(約4250−5000万円)で取引されたと推定。通常の料金は13万5千j(約1350万円)ほどに設定されていたといわれ、3倍以上の値が付いたことになる。


同番組はシカゴにある病院を想定し、緊急救命室(ER)で繰り広げられる医師や患者の様々な人間ドラマを描いたもの。1994年に初回が放送されて以来15年間、米国をはじめ、日本を含む世界各国で放送された。90年代には平均視聴者数3000万人を魅了する大ヒット番組になり、当時の社会現象にもなったほど。1998年に記録した視聴者数4780万人をピークに、その後は勢いが衰えたが、15年たった今も、NBCネットワークにとって、犯罪捜査番組「ロー&オーダー:SVU編」に次ぐ人気ドラマだった。

一方、CBSネットワークはこのほど、米テレビ界で最も長く放送されているドラマ「Guiding Light 」を、9月18日をもって終了すると発表した。同番組は昼間に放送される主婦層をターゲットとした「ソープオペラ」(昼ドラ)の代表格。1937年にNBCラジオでラジオ番組として放送が始まり、1952年にテレビ番組(CBSネットワーク)に生まれ変わった。通算放送期間72年間は米放送史上前人未到の記録となっている。しかし、5年前には500万人だった平均視聴者数が現在は210万人と振るわず、ネットワークが終了を決定した。


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ケーブル局シェアがさらに拡大

新シーズンの番組編成とCMの予約販売が行われる米テレビ界の重要イベント「アップフロント」を目前に控え、ケーブル局の好調さがより鮮明になった。ニールセン社によると、今年1−3月期におけるベーシック・ケーブル局のプライムタイム(午後8−11時)のシェアは昨年同期比4%増となる58.6%と好調だった。逆に4大ネットワーク(ABC、CBS、Fox、NBC)系列の地上波テレビ局は、昨年同期比5%減となるシェア34.8%と、シェアの低下傾向が続いている。


ケーブル局の中で最も元気なのが、米メディア企業NBCユニバーサル傘下の「USAネットワーク」。世帯視聴率、個人視聴率双方で首位の座を独占した。同局のプライムタイムにおける平均世帯視聴者数は昨年比12%増となる326万人だった。そして、2位につけたのがニューズ・コーポレーション社傘下のニュース専門局「Foxニュース・チャンネル(FNC)」。平均世帯視聴者数は、昨年同期比25%増となる226万人を獲得した。以下、3位には子供向け専門局「Nick at Nite」、そして、タイムワーナー傘下の「TBS」、映画・ドラマ専門局「A&E」などと続いた。ケーブル局は、トップ40局のうち13局が昨年同期比、二桁台の視聴率の伸びを見せた。

ただ、ケーブル局が米テレビ界を凌駕したわけではない。テレビ広告局(TBA)によれば、3月最終週の人気テレビ番組100入りしたケーブル局番組はたった2番組。ネットワークのヒット番組「アメリカン・アイドル」(Fox)や「ダンシング・ウィズ・ザ・スター」(ABC)などに匹敵する番組はケーブル局には見当たらないことを挙げ、依然としてネットワーク番組がテレビ広告の主舞台であることを強調している。


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大リーグ公式戦CM売り上げが好調

大リーグの公式戦が4月6日開幕した。昨今の不況下経済でCMの売れ行きが鈍り、料金の値下げを強いられる番組が少なくない中で、野球中継番組が健闘しているという。大リーグの放送権を保有するFoxネットワークのスポーツ部門担当社長エド・ゴーレン氏はメディア業界誌テレビジョン・ウィークに、「レギュラー・シーズンの中継番組のCM販売が堅調に推移している」ことを明らかにしている。


放送権を所有するケーブル局も好調だ。スポーツ専門局ESPNのマルチ・メディア営業担当専務のエリック・ジョンソン氏は、「長年にわたり当局の野球中継番組のスポンサーである、ホームデポ(住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーン大手)をはじめ、米通信大手ベライゾンやタコベル(ファースト・フード・チェーン)などがそろって継続スポンサーとして名乗りを上げている。今シーズンも例年通り好調なはずだ」と明るい見通しを示している。ケーブル局ターナー・ブロードも、「今シーズン降りたスポンサーは一社も無い」と説明している。

広告予算削減が当たり前のスポンサーの間で、野球中継番組の人気が何故衰えないのだろうか。広告代理店大手スターコム・メディアベスト・グループ傘下の広告会社「スパーク・コミュニケーションズ」のメディア担当部長ミラージュ・パリク氏は、「CM単価が比較的手ごろなことと、ファン層が広いことなどから、広告主の値下げ対象のリストからはずれているようだ。様々なスポーツ番組がCM枠の値下げに踏み切るなど苦労している中、野球だけは特別のようだ」と分析している。


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ディズニーがユーチューブと配信契約

米巨大メディア企業ウォルト・ディズニー傘下のABCテレビジョン・グループがこのほど、人気動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」と、配信契約を締結した。米メディアが一斉に報道した。同契約によって、ユーチューブは「ABCチャンネル」と「ESPNチャンネル」を創設、ABCネットワークの人気ドラマ「ロスト」や報道番組、さらにはスポーツ専門局ナンバーワンのESPNの番組などがインターネット上でオンデマンド視聴できることになる。ただし、番組はハイライト版などが中心で、全編配信はされない。


番組には動画CMが挿入されるが、スポンサーの選択などは一切ディズニー側が行い、収益は両社に分配されるという。ユーチューブは同様な配信契約をCBSコーポレーションとも結んでいる。ユーチューブでは、このような商業モデルをより積極的に展開していきたい考えで、ある業界アナリストによれば、これまで赤字経営だった同サイトが、今年は5億j(500億円)の売り上げを達成する可能性もあるという。

しかし、ケーブルテレビ(CATV)事業者の中からは、ネットワークとユーチューブの関係強化に対し懸念の声が上がっている。CATVが再送信サービス以外の収入源として番組のオンデマンドに力を入れ始めており、ユーチューブに商機を奪われたくないとの考えが背景にあるからだ。ABCネットワークもCATVのオンデマンド・サービスから2008年度には68億j(約6800億円)の配信料を受け取った(ウォールストリート・ジャーナル紙)模様で、その辺がディズニーに全編配信を留まらせた背景になっているという。

ところで、ディズニーが、米地上波ネットワーク番組の動画配信サイトとして人気急上昇中の「Hulu(フールー)」に共同出資する動きが取りざたされている。米ネットワークテレビによる動画配信への取り組みがますます加速する気配だ。フールーは、ディズニーのライバル、ニューズ・コーポレーションとNBCユニバーサルの共同出資で創設され昨年5月に正式スタートした。


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