米テレビ界を代表する長寿番組で、医療ドラマ人気の火付け役となった「ER:緊急救命室(邦題)」(NBCネットワーク)が4月2日、2時間の特別編成で放送されたシリーズ最終回をもって終了となった。ニールセンの速報によれば視聴者数1640万人を獲得、ドラマ(シリーズ)の最終回としては96年以来最高の記録となった。ちなみに、米調査会社TNSメディアは、最終回の30秒CM枠が42万5千j―50万j(約4250−5000万円)で取引されたと推定。通常の料金は13万5千j(約1350万円)ほどに設定されていたといわれ、3倍以上の値が付いたことになる。
同番組はシカゴにある病院を想定し、緊急救命室(ER)で繰り広げられる医師や患者の様々な人間ドラマを描いたもの。1994年に初回が放送されて以来15年間、米国をはじめ、日本を含む世界各国で放送された。90年代には平均視聴者数3000万人を魅了する大ヒット番組になり、当時の社会現象にもなったほど。1998年に記録した視聴者数4780万人をピークに、その後は勢いが衰えたが、15年たった今も、NBCネットワークにとって、犯罪捜査番組「ロー&オーダー:SVU編」に次ぐ人気ドラマだった。
一方、CBSネットワークはこのほど、米テレビ界で最も長く放送されているドラマ「Guiding Light 」を、9月18日をもって終了すると発表した。同番組は昼間に放送される主婦層をターゲットとした「ソープオペラ」(昼ドラ)の代表格。1937年にNBCラジオでラジオ番組として放送が始まり、1952年にテレビ番組(CBSネットワーク)に生まれ変わった。通算放送期間72年間は米放送史上前人未到の記録となっている。しかし、5年前には500万人だった平均視聴者数が現在は210万人と振るわず、ネットワークが終了を決定した。
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新シーズンの番組編成とCMの予約販売が行われる米テレビ界の重要イベント「アップフロント」を目前に控え、ケーブル局の好調さがより鮮明になった。ニールセン社によると、今年1−3月期におけるベーシック・ケーブル局のプライムタイム(午後8−11時)のシェアは昨年同期比4%増となる58.6%と好調だった。逆に4大ネットワーク(ABC、CBS、Fox、NBC)系列の地上波テレビ局は、昨年同期比5%減となるシェア34.8%と、シェアの低下傾向が続いている。
ケーブル局の中で最も元気なのが、米メディア企業NBCユニバーサル傘下の「USAネットワーク」。世帯視聴率、個人視聴率双方で首位の座を独占した。同局のプライムタイムにおける平均世帯視聴者数は昨年比12%増となる326万人だった。そして、2位につけたのがニューズ・コーポレーション社傘下のニュース専門局「Foxニュース・チャンネル(FNC)」。平均世帯視聴者数は、昨年同期比25%増となる226万人を獲得した。以下、3位には子供向け専門局「Nick at Nite」、そして、タイムワーナー傘下の「TBS」、映画・ドラマ専門局「A&E」などと続いた。ケーブル局は、トップ40局のうち13局が昨年同期比、二桁台の視聴率の伸びを見せた。
ただ、ケーブル局が米テレビ界を凌駕したわけではない。テレビ広告局(TBA)によれば、3月最終週の人気テレビ番組100入りしたケーブル局番組はたった2番組。ネットワークのヒット番組「アメリカン・アイドル」(Fox)や「ダンシング・ウィズ・ザ・スター」(ABC)などに匹敵する番組はケーブル局には見当たらないことを挙げ、依然としてネットワーク番組がテレビ広告の主舞台であることを強調している。
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大リーグの公式戦が4月6日開幕した。昨今の不況下経済でCMの売れ行きが鈍り、料金の値下げを強いられる番組が少なくない中で、野球中継番組が健闘しているという。大リーグの放送権を保有するFoxネットワークのスポーツ部門担当社長エド・ゴーレン氏はメディア業界誌テレビジョン・ウィークに、「レギュラー・シーズンの中継番組のCM販売が堅調に推移している」ことを明らかにしている。
放送権を所有するケーブル局も好調だ。スポーツ専門局ESPNのマルチ・メディア営業担当専務のエリック・ジョンソン氏は、「長年にわたり当局の野球中継番組のスポンサーである、ホームデポ(住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーン大手)をはじめ、米通信大手ベライゾンやタコベル(ファースト・フード・チェーン)などがそろって継続スポンサーとして名乗りを上げている。今シーズンも例年通り好調なはずだ」と明るい見通しを示している。ケーブル局ターナー・ブロードも、「今シーズン降りたスポンサーは一社も無い」と説明している。
広告予算削減が当たり前のスポンサーの間で、野球中継番組の人気が何故衰えないのだろうか。広告代理店大手スターコム・メディアベスト・グループ傘下の広告会社「スパーク・コミュニケーションズ」のメディア担当部長ミラージュ・パリク氏は、「CM単価が比較的手ごろなことと、ファン層が広いことなどから、広告主の値下げ対象のリストからはずれているようだ。様々なスポーツ番組がCM枠の値下げに踏み切るなど苦労している中、野球だけは特別のようだ」と分析している。
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