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地方発リトルプレス活況 住民目線で伝わる「街の魅力」

7月7日15時3分配信 産経新聞

地方発リトルプレス活況 住民目線で伝わる「街の魅力」
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手作り感がかわいい「おかやま街歩きノオト」(左上)。一般誌に劣らない体裁の「てくり」(下)と地図付きで金沢観光ガイドとして人気の「そらあるき」は全国各地に取扱店がある(写真:産経新聞)
 ■「作りたいもの自由に作る」

 盛岡、金沢、岡山など地方発の自主制作冊子が、全国で読まれている。名所・旧跡や名物ではなく、住民目線でとらえた普段着の街の魅力を伝えるのが特徴。ここ数年広まった「リトルプレス」と呼ばれる形態で、カフェや雑貨ショップなどで販売されている。大手の流通ルートを通さない自主流通だが、中には全国に取扱店が広がっているものもある。(寺田理恵)

  地方発の冊子ずらり…東京堂書店神田本店のリトルプレスコーナー

 身近な歴史に触れる楽しみを、写真と文章でつづる「おかやま街歩きノオト」は、A5判20ページで350円。個性的な本を扱う書店やカフェなど6カ所で販売されている。発行者は岡山市の福田忍さん(51)。レイアウトにパソコンのラベル作成ソフトを使い、プリンターで印刷。製本も自分でする。最初に50部刷り、売り切れると増刷する。

 22年前、結婚を機に東京から岡山に転居し、知らない街が新鮮だった。子育てが一段落すると、郷土史を調べて2、3ページにまとめ、知人に配っていたが、ほかのリトルプレスを見て「きれいな体裁にすれば店に置いてもらえるかな」と、昨年2月に創刊した。

 最新号の特集「色街の残り香をたどる」では県内各地の遊郭跡を訪ね、妓楼(ぎろう)だった建物を撮影。住民の話を交えて往時のにぎわいを伝えている。「岡山は個人で創作や表現活動をする人が多い」と福田さん。

 リトルプレスを中心に扱う岡山県玉野市の書店「451ブックス」の根木慶太郎店長(49)は、「広告タイアップ企画のある雑誌と違い、作り手が気に入ったものを掲載する」と魅力を語る。同店のインターネット販売の7割は関東からの注文という。

 リトルプレスは個人レベルで好きなテーマを自由に表現するのが特徴。広告を入れず、利益を考えずに発行されるものが多いようだ。

                   ◇

 自主流通でも、全国で販売されるものもある。人や物などを通じて盛岡の日常をつづる「てくり」(500円)。発行部数約3000部で、取扱店が盛岡市内の主要な書店をはじめ、青森、仙台、東京など全国に広がる。広告や広報誌の編集に携わるライター、デザイナーら4人が「作りたいものを自由に作ろう」と5年前に始めた。赤坂環さん(41)は「情報誌やタウン誌で取り上げられない人やものを紹介します。『行ってみよう』と思ってもらえれば町も住民も元気になる」と話す。

 金沢市のギャラリーやカフェなどの店主がつくる「そらあるき」(330円)は地図付き。ガイドブックに載らないような自分たちのおすすめスポットを紹介する。編集長の田中義英さん(47)は「集金に回れないので広告は入れません。街歩きをする人が増えれば結果的に自分たちの利益になる」。発行部数約3000部で、東京、大阪、名古屋などでも販売され、街歩きのガイド本として人気だ。

 こうしたリトルプレスを扱う書店も増えている。「東京堂書店」神田本店には地方発の冊子がずらり。担当者の畠中理恵子さんは「地域の暮らしが想像でき、他地域の人も面白い内容のものを置いている。『好き』が原動力で、熱が入るから面白く、固定読者がつきやすい」と話している。

【用語解説】リトルプレス

 出版社ではなく、個人や数人のグループが企画から制作、発行、販売までを行う小冊子。大手の流通ルートを通さず、インターネットや雑貨ショップ、カフェなどで売られる。広告などの制約にとらわれない自由な本作りが特徴。著名なイラストレーターの大橋歩さんが7年前に創刊した「アルネ」が有名。デザイナーなど創作に携わる人が手がける凝った作りのものが多く、個性的なスタイルで読者をつかんだ。パソコンで手軽にレイアウトができるため、数年前から作り手の層が広がっている。

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最終更新:7月7日16時46分

産経新聞

 

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