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きょうの社説 2009年7月7日
◎“竹退治”に助っ人 里山の再生を加速させたい
石川県などが開発した竹林分布を正確に把握する新手法を活用し、県内の山林で急速に
広がる竹害を食い止め、里山景観の再生を加速させたい。今回の手法は、最先端の航空機観測技術を使い、他の樹木と混在している竹の分布を把握することで、優先的に駆除が必要な場所が分かり、竹害の拡大を効率良く防ぐ効果が期待できる。新手法を竹林整備に生かし、官民が協力して里山再生の先進県をめざしたい。国内の竹林は、物干しざおなどの竹製品の生産やタケノコの収穫が主だが、プラスチッ ク製品の普及や安価な中国産タケノコの影響で、国全体で16万ヘクタール程度と言われる竹林面積のうち、かなりの部分が放置状態という。繁殖力旺盛な竹は、杉などを枯らし、生物多様性を脅かすことで知られる。さらに地表から浅い部分に根を張るため土壌を固める力が弱く、土砂崩れとの関連も指摘されている。 このため全国各地で密林状態の竹林を伐採し、日光を山の斜面に当ててカエデやクリを 植樹する取り組みが行われている。県内では、曽野綾子さんをリーダーに金沢市の山林で実施された日本財団の「竹切りボランティア」などの活動が推進力となって、地元有志が竹林整備に当たっているのをはじめ、竹粉を使った土質改善策や炭として加工するなど、多方面から竹の再利用に取り組んでいる。 整備された竹林と多種多様な樹木との織りなす里山の景観は、日本の原風景とも言える だけに、林野庁の事業から草の根まで、活動の領域を広げていきたい。 今回の新手法は衛星などと比べて小回りがきくことから、場所を絞り込んで一層正確に 分布状況が把握できるメリットもあり、時間を置いて同地点を観測することで、竹林が拡大する速度を把握し、重要地点の基礎情報を提供できる点に期待が高まる。 進行する竹害に、人力での駆除は「焼け石に水」との指摘もあるが、伐採や再利用に取 り組むボランティアは、県などと連携を密にして、観測で得た情報を有効活用してほしい。活動を展開する中から「里山を使いこなす」発想を広げる意識も高めていきたい。
◎PKO待機制度参加 目に見える貢献をもっと
国連平和維持活動(PKO)に日本が積極的に参加するため、PKOに提供可能な自衛
隊の要員などを登録する「国連待機制度」に加わることを麻生太郎首相が表明した。日本は米国に次いで2番目に多くPKO予算を負担しているが、国際社会から要請の強いPKO要員の派遣数では80位以下にとどまっている。国連安全保障理事会の常任理事国入りをめざす国としては、さみしい状況であり、目に見える人的貢献がもっとなされてよい。PKOは1948年、イスラエルとアラブ諸国の休戦協定監視のためにスタートして以 来、既に60年が経過した。現在、世界で16件のPKOが展開され、100カ国以上から計約8万9000人の要員が送り込まれている。 PKO予算の最大の担い手は米国(分担率26%)と日本(同17%)であり、200 8年の日本の負担額は約12億ドルに上る。資金提供では胸の張れる実績であるが、派遣要員は現在、ゴラン高原、ネパール、スーダンでの三つのPKO合わせて50人ほどである。 PKO参加国の中で目立つのは中国の積極的な動きである。中国のPKO予算分担率は 3%程度だが、アフリカを中心に約2000人もの要員を送り込んでいる。これまでの参加要員数は1万人を超えるという。 中国がPKOに積極的に協力するようになった理由の一つは、天安門事件で失われた国 際的な信頼を取り戻すためとされるが、大部隊の投入で人的貢献を印象づけるPKO活動は、中国の国連での発言力、外交パワーを高めることにつながっている。また、とりわけ熱心に取り組むアフリカでのPKOは、中国の資源獲得外交と不可分のものになっている。 日本の場合は自衛隊の海外活動に対する制約もあり、中国のようにはいかないにしても 、自衛隊法改正でPKOは自衛隊の本来任務に格上げされており、もっと日本の存在感を高め、国益の確保に資する戦略性も持って積極的に取り組みたい。人的貢献度が低いと、日本のPKO活動に対する国際的評価も高まりにくい。
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