亡命ウイグル人で組織する世界ウイグル会議(本部ドイツ・ミュンヘン)によると、抗議デモはカシュガルやホータンなど他の都市にも広がっており、「非常に緊迫した状況」になっているという。
本部事務局の通訳メメトさん(35)によると、5日午後、ウルムチの人民広場で学生約100人が平和的なデモを始めた。間もなく警官隊が現れ、デモ参加者に発砲、学生3人が死亡した。発砲にもかかわらず住民や通行人がデモ隊に加勢し、参加者は2万人近くに膨れ上がった。一部の参加者は商店に放火。警察車両が女性や子供をひいたことに抗議して警察車両を次々にひっくり返した。
デモの引き金は、中国広東省の玩具工場で6月26日に発生したウイグル族に対する襲撃事件だったという。多数の漢族の労働者が倒れ込んだウイグル族労働者を棒などで殴りつける映像が動画投稿サイトを通じて全世界に流れた。
世界ウイグル会議は、事件捜査と事態解明を中国政府に求めるとともに、各国の在外中国大使館や総領事館前での一斉デモを7月3日に行うようにウェブサイトで呼び掛けた。亡命ウイグル人が対象だったが、米独、日本などでのデモに続き、ウルムチでも学生らが応じた。
世界ウイグル会議の日本での全権代表で、日本ウイグル協会会長のイリハム・マハムティさん(39)は「長い間の中国共産党の圧政がもたらした結果だ」と述べた。
イリハムさんは「(自治区の)ウイグル人は仕事がなく生活できない。大卒者も就職先はなく、働ける人の80%程度が失業状態ではないか。一方で、天然資源が豊富なウイグル(自治区)に、中国政府の呼び掛けで入ってくる中国人(漢族)は労働力として仕事を得ている。このような面への不平、怒りが頂点に達したと思う」と分析した。
新華社通信が、世界ウイグル会議が暴動を主導したと伝えた点について「真っ赤なうそだ」と強調した。
少数民族問題に詳しい星野昌裕・南山大准教授(現代中国政治)は「中国政府は、ウイグル人の独立運動発生の背景として宗教と経済発展の遅れがあると認識している。イスラムに対する規制を行い、自治区を豊かにしようとしてきた。しかし、富の分配はウイグル人に行き渡っていない」と指摘。「今回は早い段階で現地の映像が出たが、漢族の被害が強調される内容にも見える。『悪質な刑事事件』というイメージを強調し、国際社会に正当性を訴えようとしているのではないか」と分析。「中国は世界ウイグル会議を名指しで非難しているが、交渉相手がいなくなり、引き締め政策を続けざるを得ない可能性もある」と話した。
■ことば
トルコ系で多くがイスラム教を信仰。人口約840万人で中国の少数民族の中では5番目。大半は新疆ウイグル自治区に住むが、カザフスタンなどにも居住。18世紀に清朝支配下に入り、1930~40年代に独立の動きが相次いだ。49年の新中国建国とともに統合され、55年に新疆ウイグル自治区が置かれた。同自治区は中国全土の6分の1に相当し、天然資源や希少金属が豊富。
2009年7月7日