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新疆・ウイグル族暴動:建国60年、当局衝撃(上) 積極的「公開」、情報合戦の様相

 中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区ウルムチで5日夜に発生した大規模暴動は、建国60周年を迎える10月を前に引き締めを強化してきた中国当局に衝撃を与えた。暴動に至る経緯を巡り、在外ウイグル人組織との見解も対立。5日には中国の胡錦濤国家主席が主要8カ国(G8)首脳会議の関連行事に出席するためローマ入りしており、国際世論を味方につけるための情報合戦の様相を見せている。【ウルムチ浦松丈二、ベルリン小谷守彦、服部正法】

 ウルムチ市中心部の人民広場に近い高級ホテル。6日、ここに海外メディアが利用可能なプレスセンターが設けられた。市内ではインターネットや携帯電話がつながらない状態だが、プレスセンターからは電子メールのやりとりも可能で、約40人が詰めかけた。病院取材の案内や当局の記者会見も行われた。

 自由な取材が認められているわけではないが、昨年3月のチベット自治区ラサで起きた暴動で現地取材を厳しく制限したのと比べると、当局は情報公開の姿勢を見せている。

 中国中央テレビは暴徒化したデモ参加者の映像を流し、国営新華社通信も英語版で暴動を詳しく報じている。ウイグル族のデモ参加者による襲撃で漢族住民が被害を受けたとの構図を強調する狙いがあるとみられる。

 同様に中国当局が分離・独立を警戒するチベット族に比べ、ウイグル族に対する国際社会の支援の動きはこれまで必ずしも活発とは言えなかった。ノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマ14世のような国際的に影響力のある指導者がいないことも背景にあるが、中国側の宣伝が功を奏してきた面もあった。

 01年9月の米同時多発テロを受け、独立を綱領に掲げる「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」などの組織について、中国政府はアフガニスタンで軍事訓練を受け、国際テロ組織から資金も提供されていると指摘。中国は対テロ協力の見返りに、国連や米国にETIMをテロ組織と認定させた。ロシアや中央アジア諸国でつくる上海協力機構でもテロ対策での連携を強調してきた。

 また、昨年8月に新疆ウイグル自治区で治安機関の襲撃が相次いだように、ウイグル族の側でも国際社会の理解を得にくい手法で自らの主張を訴える事例が目立った。

 中国政府は、「テロ行為」を封じ込める一方、重点的な開発で東部沿海地域との格差是正に努めてきた。だが、経済発展は少数民族の生活に携帯電話やインターネットの普及をもたらした。チベット自治区で発生した昨年3月の暴動と同様に、今回のウルムチの暴動につながった抗議デモにもネットが大きな役割を果たしている。情報統制の網の目を抜けた少数民族の組織化は、中国当局にとって脅威となっている。

2009年7月7日

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