環境部病虫科 三 上 哲 壮
モロヘイヤは近年の健康食品ブームにのり、島根県内でも出雲市、松江市、川本町などで栽培されています。モロヘイヤは、病害虫の心配はほとんどないと言われていましたが、1992年秋、県東部で茎葉に黒色斑点症状が発生し、商品価値を著しく低下させて問題となりました。原因究明の結果、《モロヘイヤ黒星病》と命名しました。本病は、近縁の病原菌から推定して、種子伝染するものと考えられました。そこで、その確認と圃場での発生推移について検討しましたので、その概要を紹介します。
研究概要
以上の結果から、モロヘイヤ黒星病の主要な第一次伝染源の一つに汚染種子が考えられること、また、発病は9月から急速に増加することが分かりました。
- モロヘイヤの1992〜'95年栽培用種子について、種子を25℃で多湿な条件下に置き、種子上に生育してくる黒星病菌を調査しました。その結果、1993〜'94年の栽培用種子では、3.5%の種子から菌が検出されました。
- 1994〜'95年に出雲市のプラグトレイ育苗施設を計11回調査し、育苗中のモロヘイヤの子葉や下位葉における発病率を検定しました。各調査での発病トレイの割合は0.0〜18.2%で、発病が認められたトレイにおける発病苗率は0.8〜5.1%でした。
- 1994年6月14日にモロヘイヤ初作圃場を用いて苗を定植し、その後の発病の推移を観察しました。黒星病の初発生は、7月27日で、病勢は8月下旬まで比較的緩慢に推移しましたが、以降進展拡大して9月中旬には発病葉率、発病程度がピークに達しました。その後、収穫終了期の10月中旬までほぼ同様の発病程度で推移しました(図1)。
防除方法としては、種子消毒が有効と考えられますが、現在のところ登録薬剤はありません。健全苗を植え付け、生育初期に発病を認めた株は、引き抜いて二次伝染しないようにすることが重要です。また、ポリマルチにより初発を遅らせることができます。今後、健康食品のイメージを損なうことのないような防除対策を、早急に確立したいと考えています。
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