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支局長からの手紙:黒執事 /京都

 先日、阪急電車の特急に乗ったときに見た光景です。中学生ぐらいの金髪の外国人女性が辞書を片手に一生懸命、日本の漫画本を読んでいました。和英か和仏かわかりませんが、手のひらサイズの辞書をあちこちめくっていました。

 私は特急を1駅で降りたので5分間ほどでしたが、彼女はその間、どうもある一コマのせりふに悪戦苦闘していたらしく、漫画本を1ページもめくることがありませんでした。ただ、電車が揺れた際に漫画本の表紙がちらっと見え、タイトルに「黒」という字があるのが分かりました。

 どんな漫画か気になり、駅前の書店で探そうと思いました。手がかりは「黒」だけのため、見つける自信はなかったのですが、店に入ってすぐのカウンターの前にその漫画本は平積みにされていました。「黒執事 第7巻」(枢(とぼそ)やな作)。

 漫画には興味がないため、「黒執事」が平積みされるほどの人気作品だとは知りませんでした。しかし、第7巻を読んだだけでは内容はさぱっり分かりませんでした。テレビアニメ化もされたようでそのホームページなどを見て少し理解したことですが、「19世紀後半の英国」(?)を舞台に幼い貴族と彼に仕える執事(悪魔)が悪と戦うために裏家業を働いているという物語のようです。

 実は、私は高校生のころ、京都の書店で米国のユーモア雑誌「マッド」を1冊買ったことがあります。しかし、英語が苦手な私は辞書を引く努力もほとんどしなかったので、たった一つの短い笑い話しか訳せませんでした。英文はすっかり忘れましたが、内容は今でも覚えています。

 「頭がおかしくなるから、へたなホルンの演奏をやめてくれ」「えっ? 演奏はもう、何時間も前にやめたよ」

 たったこれだけです。「horn」を辞書で引いて、ここでは「角笛」なのか「ホルン」なのか、悩んだ記憶があります。こんなことで悩んでいたのですから、もっと別の長文にチャレンジしていても米国流ユーモアを味わって笑う余裕などなかったことでしょう。

 阪急電車で見かけた少女は「黒執事」を第1巻から読破してきていたのならすごいですね。「漫画ばっかり見てたらアホになるでぇ」と親から言われてきた世代ですが、電車の中でも辞書を片手に読みたくなるほど魅力的な外国の漫画に出会えていたら、と残念に思います。【京都支局長・北出昭】

毎日新聞 2009年7月6日 地方版

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