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医療安全調、「過失」の評価などをめぐり議論

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 シンポジウム「医療への信頼確保と医療安全−事故調スキームを検証する−」(主催=医療と法律研究協会)が7月4日、東京都千代田区で開かれた。死因究明と医療安全向上の実現に向け、医師や法律家らが現状や課題などについて5時間にわたり議論した。

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 基調講演T「死因究明の医療・法への貢献」は、東大大学院医学系研究科法医学講座教授の吉田謙一氏。続いて、加治・木村法律事務所の加治一毅氏が基調講演U「医療安全対策研究委員会からの報告」を行った。

 その後行われた「事故調スキームを検証する」と題した討論では、厚生労働省医政局参事官の岡本浩二氏がまず、昨年4月に公表した第三次試案などを基に「医療死亡事故の調査などを行う新たな仕組みのイメージ案」について説明。
 これを受け、警察庁刑事局刑事企画課刑事指導室長の田中勝也氏が、「刑事手続きの対象となる医療事故に関連した事案について、大部分が必ずしも刑事責任を追及されなければいけない事案とは考えていない」と述べた上で、現在は捜査機関の負担が大きく、刑事手続きではさまざまな軋轢(あつれき)が生じていると指摘。厚労省が検討している医療安全調査委員会(仮称)のスタートによって、ごく悪質なものが警察に通知されるため、負担軽減が望めるとした。さらに、患者側から告訴の希望があった場合も、まず調査委員会の判断を待つなどと述べたが、これらは「調査委員会が実際に機能して、迅速に、また適切に原因を究明するといった機能を果たし、患者側からの信頼も得るといったことになった場合のことであり、調査委員会の活動が軌道に乗ることを期待している」とした。

 一方、全日本病院協会常任理事の飯田修平氏は、厚労省案に対し「目的と試案、大綱案の中身が全く違うことが問題」と批判。「原因究明・再発防止」と「有責判断・懲罰」は同じ組織内では両立しないと述べ、「安全調と事故調を分けていただきたい」と主張した。
 また、参院議員で医師の足立信也氏は、厚労省の事故調スキームが死亡例に限っている点を問題視。医療現場で問題や不信を感じている人は多く、患者と医療者間の情報格差の解消などが重要と述べた。死亡例の検証に当たっては、「医療関連死における業務上過失致死罪」とは何かについて第一義的に議論する必要性があると主張した。

 日本病院会副会長の大井利夫氏は、会員に実施した厚労省の大綱案に対するアンケート結果から、「(討論の)中心課題であるスキームの仕組みについては、90%以上が賛成と答えている」とする一方、「調査結果を刑事事件で利用することについては、58%が反対」と指摘。その上で、「(結果を)公表すれば、それで調査委員会の役目はおしまいだと考えている」とし、調査結果を訴訟などに利用すべきではないとの見解を示した。
 東邦大医学部社会医学講座教授の長谷川友紀氏は、実際の事例を挙げて「誰の過失か」の判断が難しいなどと指摘。厚労省の事故調スキームの場合、解剖で死因は究明できるが、システムエラーの改善などをどのように検討するかが課題とした上で、医療安全の観点から「システム的なアプローチをしないと、組織は改善しない」と述べた。

 また、責任追及の在り方を考えるに当たり、「過失」の評価も焦点となった。
 長谷川氏は、厚労省が示したイメージ案に、捜査機関へ通知する悪質な事例として「過失による医療事故を繰り返しているなど」の項目があることに対し、「安全調で過失の評価をするのか」と質問。これに対し岡本氏は、「法的判断はこの委員会の中では行わない。『過失を繰り返している』というのは、判断をするのではなく、前に事故を起こしていることについて情報があれば、それを踏まえて対応する」と応じた。

 さらに飯田氏は、起訴の有無にかかわらず、警察が介入することで診療が麻痺するなど、医療現場への影響が大きいと指摘。
 司会を務めた「医療と法律研究協会」副会長の河上和雄氏は、「患者やその家族の味方になれるのは、実は警察しかないという考え方もある」とし、大井氏も「結局、医学的に事故の究明をすることは患者との信頼関係を再構築するため。きちんと解明して報告することが一番大切だと思う。業務上過失致死の問題などが絡んできても、結果的にはそれが一番基本になる」と述べた。
 これに対し飯田氏は、「患者のためということもあるが、わたしは医療従事者のためということを強調したいと思う。このままでは、医療従事者の誇りもやる気もなくなってしまう」と反論した。

 このほか、解剖医などの確保難や、「医療関連死」の定義などについて合意がなされていないなどの問題点が指摘された。


更新:2009/07/06 21:44   キャリアブレイン

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