http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20090503ddlk26040374000c.html追跡京都2009:京大の雇い止め問題 元非常勤を提訴、深まる溝 /京都 【毎日新聞 2009/05/03】
◇労組「研究に混乱招く」 交付金削減で人件費の固定抑える
雇用期限を5年とする規定に抗議して元非常勤職員2人がクスノキの木陰で座り込みを続ける京都大(左京区)の雇い止め問題。団体交渉の開催条件を巡って折り合わず、4月には大学側が2人にクスノキ周辺の明け渡しを求めて京都地裁に提訴するなど、両者の溝は深まるばかりだ。京大のシンボルツリーを舞台にした対立を取材した。【朝日弘行】
座り込みを続けるのは京大時間雇用職員組合「ユニオン・エクスタシー」の井上昌哉さん(37)と小川恭平さん(40)。2月23日、「5年規定」を問題化するため、多くの人が行き交うクスノキ前にテントを張り、座り込みを始めた。団交開催条件について「クスノキ前で15時間」などと要求。大学当局は「そんな条件は受け入れられない」と拒否し、座り込みは不法占拠だとしてテントの撤去を強く求めた。
団交開催のめどは付かず、2人は3月末で雇い止めに。現在はテントを木陰に移し、カフェを開いてカンパを募りながら座り込みを続けている。
非常勤職員の雇用期限を5年とする規定は05年4月から導入された。以前は1年更新だったが期限はなく、京大は「固定的な人件費を最小限に抑える必要がある」と説明。背景には04年度の法人化を受け、国の運営費交付金が年1%ずつ削減される厳しい経営環境があるとしている。5年規定の最初の期限を迎える09年度末、雇い止めとなる非常勤職員は約100人に上る見通しという。
これに対し、同じく5年規定の撤廃を求める学内最大労組の京大職員組合も「仕事に慣れた人を雇い止めにして、新しい人と入れ替えるのは研究などの現場に混乱を招く」などと反発。影響が大きい職場として各学部の図書室などを挙げる。同組合の栗山敦・書記次長は「教員や学生の求めに応じ、抽象的な情報から的確な資料を探し出すには経験が要る。そういう職員を辞めさせる意味があるのか」と訴える。
京大職員組合は大学当局に対し、昨秋以降の深刻な不況の出口が見えない中、一時的に雇い止めを凍結するよう要求することも検討している。しかし、大学側は「(5年規定を)変更する必要は今のところない」との姿勢を崩していない。「雇用をすべて保障するのが使用者の責務かというと、なかなか難しい」との立場だ。
テントをクスノキの木陰に移した「エクスタシー」に対し、京大は4月22日、土地の明け渡しを求めて提訴に踏み切った。大西珠枝副学長はテントにエクスタシーの支援者らが出入りすることについて、「土が踏み固められクスノキが泣いているんじゃないか。ますます心が痛む」と話す。
エクスタシーの井上さんは「5年で首を切られる非常勤職員だって泣いている」と反論。争いが法廷に持ち込まれることには「大学は高度な自治が求められるのに、国家権力をもって対応するのはいかがなものか」と学内から批判も上がる。
松本紘学長は「非常勤はあくまで戦力が足りない時に雇っている人たち」とし、5年規定の導入後に採用された非常勤職員が雇い止めになることについて「契約を履行しているだけ」と強調。その上で「有期雇用の問題はどういうシステムが一番いいか今検討している。人件費抑制の問題もあって苦しんでいる」と話している。
テーマ:社会問題 - ジャンル:ニュース
- 2009/05/04(月) 01:57:31|
- 派遣切り/派遣村/非正規問題
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