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NHKオンデマンド苦戦 スタートから半年、採算の道険し

NHKオンデマンドが始まって半年あまりが経過したが、利用は予想を大幅に下回っている。朝ドラのヒット作を無料配信などテコ入れしたが、赤字解消にはほど遠い。
2009年07月06日 08時17分 更新
画像 NHKオンデマンドは「技研公開」でもアピールされた=5月19日、東京・砧のNHK放送技術研究所

 インターネット対応のテレビやパソコンなどを使い、過去の番組を有料配信するサービス「NHKオンデマンド(NOD)」が始まって、半年あまりが経過した。「懐かしい番組をもう一度」と鳴り物入りでスタートしたが、利用は予想を大幅に下回っている。あわてたNHKは5月以降、朝ドラのヒット作を無料で配信。こうした打開策が利用増に結びついたものの、赤字解消にはほど遠い事態に陥っている。(草下健夫)

 NODは昨年12月のスタート当初、番組購入者を「今年3月に月間8万1000人」と予想(パソコンとテレビの合計)。ところが実際は、3月、4月とも各1万4000人にとどまっている。パソコンでNODを利用するには、無料の会員登録をし、見たい番組を1本105〜315円で選んで購入する(まとめ売りもある)のだが、「会員登録はしても、意外に番組購入のボタンを押してもらえない」(NHKオンデマンド室)という。

 打開策として、NHKは有料の方針を一部転換。5月に連続テレビ小説のヒット作「ちゅらさん」の第1〜6話を、初めて無料とした。これが功を奏したのか、同作品の無料分が5月末までに計約4万回視聴されたほか、7話以降の有料分の視聴も、これまでに2万回以上にのぼっている。ほかにも人気ドラマ「ハゲタカ」「デスパレートな妻たち」を有料で投入するなど、キラーコンテンツでのテコ入れに躍起だ。

 6月4日の会見で、NHKは「手応えを感じる」(福地茂雄会長)、「やっと先行きが見えてきた」(日向英実放送総局長)とアピールしていたものの、予想を大幅に下回っている状況に変わりはない。「購入者が少ないなりに増えてはいますという、開き直った上での見解」(NHK職員)というのが実情のようだ。

 NODは受信料を前提とせず、独立採算で運営。昨年度決算で13億円、今年度予算では16億円を受信料収入から借り入れる形でコストを賄っている。昨年度の予算では4億円の視聴料収入を見込んだが、現実には5000万円にとどまった。平成23年度に単年度黒字、25年度に累損解消を目指しているが、達成はほど遠い。赤字が解消されない場合の道筋は示されておらず、来年度予算にも影響しそうだ。

 関係者によると、NODの計画段階では「新しい番組が日々放送される中、どれだけの視聴者が古い番組にお金を払うか」「赤字を解消できないと説明がつかない」など、NHK内部でも批判的な見方があった。開始に踏み切ったのは、一部の幹部らの強い意向があったためといわれる。

 藤竹暁・学習院大学名誉教授(メディア社会論)は「番組の蓄積が広く視聴される仕組みは、番組に批判の機会が与えられることにもつながり、意義がある。ただ、課金されてでも見たい、という番組は多くはなく、採算が取れるかは別問題だ」と指摘している。

[産経新聞]

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