2009年7月6日
日本統治下の台湾で育った「日本語世代」の台湾人を7年がかりで追った初監督作「台湾人生」が東京・ポレポレ東中野で公開されている。
先住民の元国会議員、小学校を1年で辞め奉公に出た茶摘みの女性ら、5人が登場する。日本人として教育され、戦後は国民党の弾圧対象に。激動の時代の体験が滑らかな日本語で語られる。
「日本時代を懐かしむ言葉を心地よく感じる人もいるかもしれない。でも、その裏には様々なつらい体験がある。『日本に見捨てられた』とも思っている。台湾人の複雑な気持ちを日本人にも知ってほしい」
初めて台湾を訪れたのは、北海道で新聞記者をしていた98年。蔡明亮監督の映画が好きだから、という気軽な夏休み旅行だった。地元の老人に日本語で声をかけられて驚き、小学校時代の日本人教師を慕い続ける姿に心を動かされた。台湾をもっと知りたいと思うようになった。
仕事で映画祭やロケ現場の取材をするうちに、活字より映像に引きつけられ、30歳で新聞社を退職。「かもめ食堂」などの映画の宣伝や制作スタッフの仕事をしながら、台湾通いを続けた。
「台湾を取材しているつもりが、気がつくと『日本って?』と考えていた。問われていたのはこちらの方でした」
次回作の構想も膨らみつつある。今度も舞台は台湾。「日本語世代」の孫に当たる若者たちの日本観を探りたいという。(深津純子)