【社会】“トヨタショック”都市の懐直撃 愛知・田原2009年7月6日 09時58分
昨秋の“トヨタショック”が市の懐を直撃した愛知県田原市。法人市民税が前年度比93・7%減となる非常事態の中、歳出削減の一環で事業の先送りや変更が目立つ。一方、トヨタ自動車田原工場からの潤沢な税収で「膨張しすぎた各種事業を見直す機会」ととらえる見方もでている。 「(再開発を)早くやってほしい。完成まで4年も待てない」 6月下旬。豊橋鉄道三河田原駅周辺の再開発事業の進ちょく状況を説明する地元協議会の場で、道路用地を提供した住民の一人が市側に不満をぶつけた。 道路整備や駅移転を柱とした再開発の総事業費は52億円。2005年からこれまで用地買収など計16億円を投入してきたが、トヨタショックの影響などから事業の完全終了が2年延期される事態に。「市の懐が苦しいのは十分わかるが、これでは再開発の機運が中途半端になる」と住民は続けた。 市が2月に発表した本年度当初予算によると、税収激減で投資事業は総額83億から41億に縮小。下水道や市道整備の先送りなどを明らかにした。中には小学校の改築を断念して改修に切り替えたケースも。 市の貯金に当たる財政調整基金は、82億円のうち55億円を取り崩すなど危機的状況は今後も続く見込みだ。 だが、これまでが恵まれすぎていた側面もある。 市は昨年度だけでも市役所整備や道の駅設置、中央公園整備にそれぞれ約5億円を投入。潤沢な税収抜きには存在し得ない大型事業がめじろ押しだった。 「県内の同規模都市と比較しても公共投資は突出した額。加えてこれまでは、旧2町との合併算定で年間26億〜27億円の国の普通交付税を受けてきた。だが普通交付税は16年度から段階的に減る。さらに経済が回復すれば不交付団体となり、それもゼロになる」と市関係者は指摘する。自治体の規模に見合った事業見直しや歳出削減の検討は今や待ったなしの状況だ。 市は今年から三河田原駅周辺にある約400台分の市営無料駐車場の有料化や縮小を検討するなど具体的な動きも出ている。鈴木克幸市長は「財政は苦しいが、事業全体の需要度などを見直すいいチャンスでもある。(各種事業の進行が)遅れても、地域のための議論を深めるきっかけになれば」と話している。 (中日新聞)
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