きょうの社説 2009年7月6日

◎北銀の公的資金返済 北陸の経済にとっても朗報
 北陸銀行と北海道銀行の持ち株会社、ほくほくフィナンシャルグループ(FG)が国か ら投入された公的資金のうち約400億円を返済する。当初投入された約1400億円の公的資金が残り約200億円まで減少することになり、今年度中の完全返済がほぼ確実になった。

 地銀の経営健全化は、北陸の経済にとっても朗報であり、1998−99年の金融危機 以降、再生の道を歩んできた同行の完全な復活を象徴する出来事として評価してよいのではないか。

 ほくほくFGが積み上げた余剰金は1339億円に達し、約400億円を返済しても十 分な余力がある。一度に600億円を完済してしまわなかったのは、景気の低迷が長引く可能性を見越して、十分な手元資金を確保しておくためだろう。400億円の返済で、自己資本比率は0・9%程度低下するが、北陸銀行単体、連結ともに9%台を維持し、国内営業に必要な4%を上回る。

 昨年秋以来の世界同時不況の影響で、一部の大手行や地銀の経営が悪化し、公的資金の 注入を検討するところが出てきている。来月にも金融庁への申請を行う地銀や予定していた公的資金の返済を延期した大手行もある。そうした業界の苦境を見れば、返済のために余剰金を営々と積み上げてきたほくほくFGの経営は、積極的かつ堅実だったといえよう。

 公的資金の返済が終了すれば、経営の自立性が高まり、収益力の向上にも弾みがつく。 金融機関が経営不安を抱えた状態では、積極融資に踏み切れるはずがなく、地場企業にすれば、そんな事情で融資が受けられないと、新たなビジネスの芽をみすみす見逃すことにもなりかねない。地銀が元気であってこそ、地域経済に活力が生まれるのである。

 今回の公的資金の返済で、国は差額分の約78億円の利益を得る。国民の血税に十分な 「利子」を付けての返済であり、金融システムを守るために、公的資金を投入した当時の判断は正しかった。

 ただ、そうは言っても公的資金の恩恵を受けての復活であり、今後、地域により多くの 貢献をしていくよう注文しておきたい。

◎静岡県知事選 「政権交代」の追い風さらに
 次期衆院選の前哨戦と位置づけられた静岡県知事選で川勝平太氏が勝利し、民主党への 追い風がさらに強まる結果となった。民主党が候補の一本化に失敗し、事実上の分裂選挙となったことや、川勝氏の出馬が遅れたことを考えれば、「政権交代」への期待感が川勝氏を押し上げたことは間違いないだろう。麻生政権はまさに崖っぷちに立たされたといえ、続く東京都議選の結果は首相の進退問題に発展しかねない重大な意味を持つことになる。

 民主党は選挙戦を通して鳩山由紀夫代表や岡田克也幹事長ら党幹部を総動員して与野党 対決型選挙を演出し、川勝氏陣営も「これは静岡だけの選挙ではない」と訴えた。政党と知事の選択は別とはいえ、勝利を呼び込んだのはやはり衆院選の前哨戦という構図を鮮明にしたことが挙げられる。政令市長選で連勝した民主党の勢いは今回も衰えず、全県選挙の勝利でさらに高まる上げ潮ムードは東京都議選にも大きな影響を及ぼすとみられる。

 静岡県知事選の告示後、鳩山代表に政治献金の虚偽記載問題が持ち上がり、与党はここ ぞとばかりに攻めたてた。一方、麻生首相は本来なら政権浮揚のきっかけとなるはずの人事カードを有効に使えず、兼務解消の閣僚補充人事にとどめたことで党内での求心力低下に拍車をかけた。それぞれの党首の失点は今回の知事選をみる限り、民主党の致命傷とまでは言えず、麻生政権の凋落ぶりを印象づける結果となった。

 東京都議選で麻生首相は候補者事務所を一巡して激励する異例の陣頭指揮に出たが、敗 北すれば「麻生首相で選挙は戦えない」という声が一気に広がり、自らの進退問題に直結するのは必至である。

 静岡県知事選を通して衆院選の最大の争点は「政権維持」か「政権交代」であることが 一層はっきりしてきた。自民党がこのまま局面打開のきっかけをつかめなければ総選挙の結果も自ずと見えてくるだろう。麻生政権が追いつめられ、潮目を変える場面も限られてきたなかで、東京都議選はその最後の機会と言えるかもしれない。