2009年06月21日

「ウェブはバカと暇人のもの」を読んでみて4

「ウェブはバカと暇人のもの」を読んでみた。

とっても過激なタイトルの本だが、いまのネットの現況を、ど真ん中の仕事の現場視点から捉えた洞察は、多少オーバーな表現な部分はあるかもしれないが、なかなかツボを突いていて面白かった。
それらが正解かどうかは別にして、自分的にはかなり共感できるポイントが多い。

ウェブはバカと暇人のもの



そんなこの本の印象的だったところや面白かったところを以下に抜粋してみた。


いまや光ファイバー接続でさえ月額3000円台があたりまえとなっている。これは映画2本分であり、チェーンの居酒屋で1回飲めばなくなってしまう金額だ。
映画2本は4時間の娯楽であり、居酒屋1回は3時間の娯楽でしかない。

だが、ネットの場合は延々見続けることが可能で、しかも外出しないから、交通費もかからず腹も減りづらい。
SNSやブログ、掲示板、フラッシュゲームにエロ動画のサンプルなどはいずれも無料で使用することができ、暇人にとってネットはうってつけの娯楽である。


ネットはプロの物書きや企業にとって、もっとも発言に自由のない場所である。


ネットが自由な発言の場だと考えられる人は、失うものがない人だけである。


断言しよう。ネットでウケるネタは以下のものである。
1.話題にしたい部分があるもの、突っ込みどころがあるもの
2.身近であるもの(含む、B級感があるもの)
3.非常に意見が鋭いもの
4.テレビで一度紹介されているもの、テレビで人気があるもの、ヤフートピックスが選ぶもの
5.モラルを問うもの
6.芸能人関係のもの
7.エロ
8.美人
9.時事性があるもの


王道は「テレビで見た→ネットで検索&書き込み」


私は毎朝6時30分に起き、「ズームイン!!SUPER」(日本テレビ系)、「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系)、「めざましテレビ」(フジテレビ系)、「やじうまプラス」(テレビ朝日系)を、8時からは「スッキリ!!」(日本テレビ系)、「とくダネ!」(フジテレビ系)、「スーパーモーニング」(テレビ朝日系)の計7番組を、ザッピングしながら9時まで見続ける。
テレビを見ることによって、その日どんなキーワードや話題がネットで関心を持たれるかがすぐにわかるからである。
そのキーワードや話題に合わせて記事をアップすれば、間違いなくPVは高くなる。


一方、雑誌に出ただけの記事(ウェブ版に掲載された記事は除く)は、テレビのネタと比べて知っている人が圧倒的に少ないだけに、ネットに書き込む人が少なく、盛り上がる話題となりにくいのだ。


私は第1章で、インターネットは暇人のためのメディアだと説明したが、これは地上波テレビのユーザーとかぶる。


テレビとネットの大きな違いは、テレビの収益の根源にある視聴率が有限であるのに対し、ネットの収益の根源となっているPVがほぼ無限であることだ。
だから、多少はライバルサイトからPVを取られたといっても、運営者は自分のサイトの改善だけを考えればよく、ライバルをいかに蹴落とすか、潰すか、ということを考える必要はない。
むしろ、相互リンクを貼ったり、コンテンツ提供を受けるなどして、トラフィックを互いに増やすといった提携に目を向けたがる。


ここで、ネットでうまくいくための結論を5つ述べる。(中略)
1.ネットとユーザーに対する性善説・幻想・過度な期待を捨てるべき
2.ネガティブな書き込みをスルーする耐性が必要
3.ネットではクリックされてナンボである。かたちだけ立派でも意味がない。そのために、企業にはB級なネタを発信する開き直りというか割り切りが必要
4.ネットでブランド構築はやりづらいことを理解する
5.ネットでブレイクできる商品はあくまでモノが良いものである。小手先のネットプロモーションで何とかしようとするのではなく、本来の企業活動を頑張るべき



(前略)自分の食べたものについては、「おいしかった〜。卵がふわふわなの」と正直な感想を書き、ネイルサロンに行ったら、「今日、ネイルサロンに行っちゃった。かわいいでしょ」などと、「何があって、それに対してどう思ったか」をシンプルに書くのである。

こういったブロガーは「素直な人」であり、「高感度な人」ではない。

そして、それらのブログを読み、コメントをつける人々も、「うわ〜、私も食べたーい」や「そのネイル、超かわいい〜」などとコメントをつける「素直な人」である。

この人たちがブロガーイベントについて書くときは、「招待していただきました」となかば特権階級的な心地良さ前提に文章を書きはじめ、「おいしい!」「かわいい!」と感想をストレートに書く。

そこには、企業の側がうだうだと考える「高感度の人々が……」「情報のハブとなって……」「長きにわたるファンになって……」「インフルエンサーとして、ファンを広げていただきたい……」うんぬんといった考えはない。
ただ、そこに無料のものがあるから参加し、行ったら楽しかったからブログで紹介しているだけなのだ。

(中略)「ファンになる」「商品の伝道師になる」ことまで彼らに期待するのは酷だ。
時間に余裕のある人にとって、企業のこうした活動は格好のブログのネタとなり、多少の優越感を持たせてくれ、ゆえに気持ち良く文章を書く、くらいに解釈したほうがいい。


かつて広告代理店で働いていたとき、自動車やマリンスポーツ関連の展示会の現場を担当したことがある。(中略)アンケートを無償で書いてもらうのことは難しいため、お菓子、レトルト食品などのタイアップ商品を別のクライアントから割引価格で大量購入し、アンケートを書いてもらう代わりにそれらを配っていた。

(中略)これらタイアップ商品はいくら用意してもすぐになくなる。何度も並ぶ人がいるし、なんせタダでモノがもらえるのであれば、時間を浪費することを厭わない人が多いのだ。

依頼されてブログに書く人たちも、このようにタイアップ商品のために並ぶ人々と同じような人々ではないだろうか。
べつに意見を進んで書きたいというわけではないし、そのタイアップ商品をもともと欲しかったわけでもない。タダで何かをもらえるから書く、それでトクした気持ちになれる人である。


一方、ネットであまりウケなさそうなものは、「見出しがつけられないもの」である。
前出のような商品は実に見出しがつけやすい。「ガリガリ君の妹が登場」や「通常サイズより2倍大きいカール登場」「1杯180円のカクテル登場」などはその最たるものだろう。
見出しがつけられないものは、「200万円くらいの国産車」「ウーロン茶がリニューアル」など、価格的にも中途半端だったり、単なるマイナーチェンジだったりするものだ。

ネットを使ったプロモーションを展開すべきかどうかの判断は、まずは自分がニュースサイトの編集者になったつもりで、タイトルをつけられるかどうかを考えたほうがいい


「おもしろいから書く」「突っ込みどころがあるから書く」「好きだから書く」―これがクチコミ発生原理だ。
そしてクチコミは作れるものではなく、商品力やおもしろいプロモーション・広告によって勝手に生まれるものである。
ブロガーイベントに招き、商品提供をしたうえでブログに書いてもらうの手法は、「クチコミ」ではなく「露出の増加」であり、従来型の広告と同じ手法だ。


90年代後半まで。既存のマス4媒体で押しつけ型の広告活動をしていた大企業がネットの可能性に気づき、時代に乗り遅れるなとばかりにネットでのプロモーション活動に続々と参入してきたが、結局は押し付け型で、「ユーザーはファンになってくれるはずだ」という楽観主義と根拠のない決めつけによってコンテンツを作り続きけてきた。

あくまでもネットは雑談の場であるにもかかわらず、「第5の媒体」と勝手に位置付け、これまでの「こんなにすげーんだぞ、オラ、見ろ」というプロモーションのやり方を押しつけたのである。

そしてクリックされるわけのない、突っ込みようのないうわべだけのキレイなコンテンツを連発したうえで、「ネットは効果がないですなぁ」と落胆してみたり、PVが少なかったとしても「新しい試みができたので良しとする」などと正当化するのである。

だが、そろそろネットを4媒体の延長と考えるのはやめるべきでは? くり返すように、ネットは居酒屋のような場所なのである。居心地の良い店に自然と人が集まり、そこで楽しんでいく場なのだ。


ここ数年流行っている「続きはWebで」CMだが、どれだけ効果があるのだろうか?
これは、テレビとネットのメディアミックスと解釈されているが、結局は、テレビにフィットする世界観を「擬似テレビ」としてネットに当てはめているだけのような気がする。

これではネットの「見たいものをクリックする」「そこから先に興味あるものがつながっていく」という特徴をさほど活かしておらず、「カネがかかるテレビでは30秒しか言えなかったけど、ネットだったらいくらでも言えるから、ネットに動画をアップしよう」という使い方にしかなっていない。そして、「広告を広告する」というナンセンスな作りになっている。


人はご飯を食べて体を育て、人と会って友情を培い、勉強をすることによって学校へ入り、そこでさまざまなことを学び、学校を卒業することによって社会進出の礎・資格を獲得し、恋愛をすることによって人生にスパイスが与えられ、性交することによって快感を得て子どもを作り、仕事をすることによって社会とのつながりを感じ、愛する人に死なれることによって悲しみを覚える。

私たちの人生、なんとリアルな場の占める割合が多いのだろうか、これら人生の大部分を占める要素にネットはどれだけ入り込めたのか?

大したことはない。
かなり入り込まれている人はヤバい。
もう少し外に出て人に会ったほうがいい。
なぜなら、ネットはもう進化しないし、ネットはあなたの人生を変えないから。






・・・確かにそうだ。

bko443116 at 03:53 │Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!おすすめ本  | 広告関連

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