以前、国交省に勤める友人と話していて紀勢自動車道が近くまで延びつつある尾鷲市が話題に上った。道路が延びれば必ず経済が活性化するという友人の主張に反論し、議論になった。
その後、取材で尾鷲を訪れる機会が多くなった。住人は高齢化し、採算性の高い地場産業も少ない。観光資源も生かし切れているとは言い難い。根深い課題が山積していると感じた。道路を延ばすだけでは地域は立ち直らないのではと、強く思う。
もちろん、高速道路が通れば、防災や救急医療の充実など経済面以外の効果も大きく、一概に反対する気はない。だが、競争力のない現状では交通の便が良くなっても、かえって経済が弱体化する恐れがあると思う。
商店街の洋服店で働く男性は、「これまでも伊勢自動車道など高速道路の整備が進めば進むほど、地元の客が名古屋や大阪に流れていった」と嘆いていた。
その言葉を、友人に伝えようと思う。
同市では今月末、出直し市長選が行われる。現場に足を運んで現状を正しく認識し、市を立て直す方法を粘り強く考える候補者を有権者が選ぶことを願っている。【岡大介】
〔三重版〕
毎日新聞 2009年7月6日 地方版