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【コラム 撃戦記】

“華麗さ”で勝敗を決する時がきたプロレス

2009年7月2日

 ボクシングのリング禍が脳裏から離れないうちにプロレス・ノアの三沢光晴社長が試合中に亡くなった。事故は練習中でも起こるが、安全が最優先の試合中というのが尋常ではない。再発防止に原因究明が求められる。

 それにしても格闘技のリング禍が多い。思うにアスリートの“根性論”。現役時代は、あいさつや何げない会話、お互いの顔色やしゃべり方でコンディションを感じ取る。女子プロレスの特別コーチ時代の合宿だった。朝の声掛けに「大丈夫です」と応えていた新人が「受け身」の練習中にくも膜下出血で倒れて亡くなった。新人や若手はライバル心が強い。予兆を見抜けなかった悔しさは今でも消えることはない。それが試合中だったらなおさらだ。ボクシングは、セコンドの判断でタオルを投入、試合を止められるだけに死亡事故には後悔が大きい。

 三沢はノアの社長と団体のトップレスラーという“二足のわらじ”だった。不況で地上波のテレビ中継も切られた。資金繰りに奔走するのも社長だ。疲労の蓄積が受け身の天才を鈍らせたとしか思えない。三沢社長の死を機に主力3団体が団結、対策に乗り出すそうだが、反則もパフォーマンスの特異性からボクシング界のようにはいかないだろう。

 年齢制限やKOされた選手の90日間試合禁止など、事故のたびに規制を強化してきたJBC。残された選択肢は早めの試合止めしかない。劣勢をはね返す逆転KOの醍醐味(だいごみ)が薄れてもだ。精神力勝負のKOより、レフェリーストップのTKO評価だが、TKOでもスピードとテクニック、パワーは見せられる。野球のメジャーリーグに「故障者リスト」制度がある。最高のコンディションで最高のプレーを見せるプロの姿勢は、選手やファンにも歓迎されている。ボクシングもリングで死ぬことを本望とした時代は終わった。戦いの“華麗さ”で勝敗を決する時代に来ている。

  (格闘技評論家)

 

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