2009年7月2日1時22分
厚生年金と国民年金の積立金の市場運用で、08年度の損失が9兆6670億円だったと、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が1日、公表した。損失が出たのは07年度から2年連続で、損失額は過去最大。収益率(運用利回り)も過去最低で、マイナス10.03%だった。
厚労省は2月に公表した年金財政の長期見通しで、平均運用利回りを4.1%に設定しているが、妥当性が問われそうだ。
米国の大手証券会社の破綻(はたん)に端を発する金融危機で昨年秋以降、国内外の株式が急激に下落した影響を受けた。08年度の東京株式市場の日経平均株価は、1年間で35.26%値下がりしている。
GPIFが08年度に運用した資産117兆6286億円のうち、市場運用分は92兆5397億円。運用方法は国内債券と外国債券を合わせて約8割、国内株式と外国株式で約2割。
運用利回りは、国内債券がプラス1.35%だった以外は、マイナス43.21%だった外国株式をはじめ、国内株式、外国債券もマイナスだった。
年金給付は、原則としてその時点の現役世代の保険料でカバーしているため、単年度の積立金運用の損失がすぐに給付に影響するわけではない。厚生労働省は「年金の運用は長期的な視点が必要。短期的に評価すべきではない」とする。
その長期の見通しで、厚労省は平均運用利回りを4.1%と設定した。
設定値より0.5ポイント低い運用利回りが長く続いた場合、年金の最終的な給付水準は約2ポイント低下する。2月の推計にあてはめると、2040年ごろには、モデル世帯(平均的な収入のサラリーマンの夫が40年間厚生年金加入。妻は専業主婦)について政府が約束した「現役世代の手取り収入の50%」を割り込むことになる。
どのような運用方法を採るかは5年に1度見直され、次の見直しは来年4月。株式や債券の構成比率の見直しについて、GPIFは「現時点では何とも言えない」という。