地方再生を目的にした国の補助金や交付金が有効に活用されず、使い残しが多額となっている実態が明らかになった。中央が決めた政策と地方の実情がかみ合っていない現状があらためて浮き彫りになった。
共同通信が、各省庁の最新となる2007年度一般会計の決算報告で、支出されなかったり、翌年度への繰り越しが認められなかった「歳出不用額」の項目(5億円以上)を対象に調べた。地方の再生や振興関連とした事業で、自治体の要望が予想を下回ったことなどを理由に使い残された額は、少なくとも14の補助・交付金で計560億円に達していた。支出予定総額約3071億円の2割近くだ。
厚生労働省の「地域介護・福祉空間施設整備交付金」は、予算総額422億円のうち179億円が不用とされ、14の補助・交付金の中で最多だった。使い残しの割合は43%。地域に密着した介護予防拠点などの整備を支援する狙いだが、06年度も222億円が不用とされていた。
文部科学省の「放課後子ども教室推進事業費補助金」は、予算65億円の実に64%が支出されなかった。08年度の予算でも整備目標1万5千カ所に対し、実績は約7800カ所で、使い残しが出るのは確実だ。
使い残しの理由について、国の担当者は「自治体の要望が少ない」「事業を理解してもらってない面もある」などと述べている。しかし、毎年のように使い残しがあるのに、同じように予算をつけているのも理解に苦しむ。事業の必要性についてしっかり検証すべきだろう。
地方の事情はどうか。補助事業は地方負担を伴う場合が多く、財政難の自治体にとって次々に事業費のカットに切り込んでいる中、新たな事業に手を出すのは難しいだろう。
また、事業内容が地域のニーズに合わないという批判も多い。中国地方知事会は昨年夏、国の施策に関する提言の中で、補助・交付金の改善を求めた。現行では、事務処理が煩雑だったり、対象の事業や施設が限定されていて使い勝手が悪いなど、運用面の問題が多いからだ。
国も地方も厳しい財政事情の中、予算の有効活用は言うまでもない。中央が決めて地方にばらまく従来の手法が、もはや限界にきていることを示している。市町村独自の判断で、住民ニーズに沿った事業に予算が使えるよう、国から地方へ税財源を移譲しなければならない。地方分権の流れを一段と加速させることが必要だ。
自転車に幼児2人を乗せる3人乗り自転車が今月から全国でほぼ一斉に解禁された。子育て中の母親の声を受けたものだが、今後取り組まなければならない課題も多い。
子どもをサドルの前後に乗せて運転する3人乗りは日常見られる光景ではあったが、以前から道交法で禁じられていた。むろん危険だからだ。
一転して認められるようになったのは、警察庁が2007年末、自転車の運転マナーを定めた教則に3人乗り禁止をあらためて明記しようとしたことに、母親たちが「非現実的だ」と猛反発したからだった。
ただし、認められたのは幼児2人を乗せても十分な強度や制動性能があるなど、警察庁が示した6項目の安全基準を満たした自転車だけだ。幼い子どもを抱えた母親を支援するための限定的な解禁で、乗せる子どもは6歳未満の条件がある。
問題点の中で、まず親にとって痛いのは価格だ。条件を満たす自転車は5万〜15万円もする。高すぎる、と購入を見送る親たちも多いだろう。新型の販売を始めた自転車メーカーも一部にとどまっている。
群馬県前橋市は4万円を上限に購入費の半額補助制度を設けており、東京都三鷹市では今秋からレンタル事業を始めるというが、まだまれなケース。国としても子育て支援の観点から自治体をサポートする仕組みをつくるべきだろう。
安全のための環境整備も重要だ。自転車が関係する事故は08年に約16万件発生し、全事故の約21%を占めている。頑丈な自転車の登場は歩行者にとってさらに「脅威」になりかねない。
自転車は「車両」という認識に立ち、交通ルールを守る安全運転教育の徹底や、自転車専用道の整備にも取り組みたい。
(2009年7月5日掲載)