日本は分裂した状態に耐えることができるだろうか。「耐えることが強いことですよ。日本は今まで国内が一つの方向でまとまってきたから、太平洋戦争のように失敗してきた。国内で議論になってもなお、分裂した状態のままの姿勢を保つことが重要だと思う。米中両国のどちらについても日本は異分子です。そこは運命だと思って、その間で生きればいい。それこそが僕は普遍的だと思う」
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語り始めてから1時間半近く。柄谷さんが初めて大きな声を出し、空気が動いた。
軍備増強を続ける中国には「あなたがたは戦争をやるかもしれないが、われわれは過去の反省に立った証拠である憲法9条のもとで戦争はやらないんだと言えばいい」と。オバマ大統領が核廃絶を打ち出した米国には「日本は戦争放棄なのだから、核廃絶に決まっているじゃないか」と。
最後は「われわれの方が世界の先端に立っていて、世界は結局、その方向に向かうほかないんです」という言葉に力を込めた。誇りを持ちながらも、異分子であることを恐れるな、というメッセージである。
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■人物略歴
1941年、兵庫県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。69年「群像新人文学賞」を受賞し、以後、批評活動に入る。法政大学教授、近畿大学国際人文科学研究所所長を歴任。著書に「世界共和国へ」「定本 柄谷行人集」(全5巻)「倫理21」など多数。近著「柄谷行人 政治を語る」(図書新聞)。
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毎日新聞 2009年6月30日 東京夕刊