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特集ワイド:’09シリーズ危機 政権選択/中 評論家・柄谷行人さん(3/4ページ)

 話は中国とインドに向かった。1930年代に両国は植民地状態だった。今の世界金融危機を脱するため、中印両国のけん引に世界が期待するほどになった現在とは比べようもない。

 120年前には、中国の清朝は大国だった。「日清戦争の前、清朝に対する日本の恐怖感は並々ならぬものがあった。戦争に勝ったあと、そのことをコロッと忘れたのです。日本人は、今の中国を1930年代の中国と重ね合わせて見ていると思う。今の中国は、巨大だった1890年ごろの清朝だと思えばいいんですよ」

 日清戦争は、李氏朝鮮の日本派と清朝派の対立から始まった。清朝は日清戦争に敗れた結果、台湾を日本に割譲した。今の東アジアを取り巻く状況もそのころと類似性があるという。

 …●…

 そして、やはり日本だ。衆院選が近い。候補者の知名度や、各党が打ち出す甘そうな政策に惑わされないためには、歴史と世界から顧みて日本がどのように針路を取るべきかを有権者一人一人が考えるべきだと柄谷さんは言いたいのだろう。東アジアの周辺国との関係は防衛面だけではなく、経済など国民の生活にも大きな影響を与える。

 柄谷さんが憂慮するのは、米中両国との関係だ。早晩、米国と中国のどちらにつくかの選択に迫られるとみる。「その時、日本の針路や選択として両方を取る。つまりどちらも選ばず、両国と友好的にやること。後で見ると、米国にも中国にも属さないでやっていった方が正しく、新しいあり方だったことが分かると思う」。太平洋戦争を起こした反省から、両国のどちらも取らない選択が出てくると柄谷さんは考えている。

毎日新聞 2009年6月30日 東京夕刊

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