建築から1世紀を迎える「本宮映画劇場」は、古き時代の雰囲気を残したまま、本宮市本宮にたたずんでいる。休館から45年……。復活させてほしいというファンの要望に応えて昨年、計3回上映会を開催。評判がよく今夏も計画している。テレビでDVDを見るのとは違う味わいで、人々を魅了している。
劇場は1914(大正3)年、演劇や踊りを披露する「本宮座」として建設された。木造3階建てで、当時は近代的とも言われた。戦後は映画館として親しまれたが、テレビの普及で客足は徐々に遠のき、63年に幕を下ろした。
社長の田村修司さん(72)は自動車会社に就職したが、「退職後、また再開したい」と夢をもち、当時のスクリーンやフィルム、映写機、ポスターなどを大切に保存してきた。それどころか、別の閉館した劇場からもフィルムや機材を地道に買い集めた。昭和30年代に活躍し、今では珍しい「カーボン式映写機」には50年間、定期的に油をさし、メンテナンスを怠らなかった。
昨年、「建物の中を見たい」と街の人から要望があったのをきっかけに、上映会を企画。機材を点検し、宇津井健さんの映画の予告編や米国の映画会社が配給したニュースを30分に編集するなど、3カ月の準備をへて上映した。130人の観客から惜しみない拍手を浴びた。
次の上映会は終戦記念日の8月15日に予定している。米軍が撮影した真珠湾攻撃と硫黄島の記録映画ニュースを上映する。11月3日の文化の日には、石原裕次郎さんの映画の予告編などを上映する計画だ。
田村さんは「次の世代にもこういう映画館を残したい」と、日々編集と機材のメンテナンスに励んでいる。問い合わせは田村さん(0243・33・1019)。【金寿英】
毎日新聞 2009年6月10日 地方版