きょうの社説 2009年7月5日

◎北陸新幹線整備 民主党の考えも聞きたい
 自民党が次期衆院選マニフェスト(政権公約)で、北陸新幹線金沢−福井間の延伸を明 記する方向となった。新規着工区間まで具体的に公約化するのは異例であり、総選挙を強く意識した対応といえるが、地元にとっては歓迎すべきことである。だが、選挙で政権交代の可能性も高まるなか、気掛かりなのは民主党の新幹線対応が明確とは言いがたい点である。

 民主党は整備新幹線について、たとえば2003年の政策マニフェストでは「建設の財 源を考えた場合、費用対効果の観点からその必要性については多くの疑問があることも事実」と指摘していた。岡田克也幹事長も富山市内での会見で、公共事業などの歳出見直しに関し、整備新幹線も例外にしない考えを示した。

 民主党内では新幹線の沿線地域の議員による推進議連もできてはいるが、そうした声が 党全体に広がっていない印象を受ける。地方を重視するという民主党の姿勢が本物なら、整備新幹線に対する党としての見解をはっきりさせてほしい。

 北陸新幹線は政府・与党が年内の福井延伸の認可、着工で合意している。それらの公約 化は合意をさらに確実なものとし、沿線関係者にとっては心強い措置だが、総選挙で政権交代が実現すれば意味をなさなくなる。

 民主党のマニフェストは国直轄事業の縮小をはじめ、徹底した歳出改革が柱である。政 権を取ったあかつきには予算の総組み替えを明言するなかで整備新幹線の位置づけははっきりしていない。これでは福井延伸はおろか、2014年度末までの金沢開業のスケジュールへの影響を危惧する声が地元から相次ぐのも無理はないだろう。政権交代が現実味を帯びる今、民主党が明確な推進意思を示さない場合は、沿線県が働きかけることも今後の検討課題となろう。

 次期衆院選は政権選択選挙であると同時に、各党の地方政策を見定める機会である。北 陸にとって新幹線開業は最も重要なテーマといえ、民主党が党としてのスタンスを明らかにしてこそ有権者の大きな判断材料になる。

◎石川の器と食 世界を目指すブランドに
 石川県の九谷焼、加賀みそ、大野醤油(しょうゆ)を活用したプロジェクト3件が国の 支援を受けて、世界に通用するブランド化を目指すことになった。同様の取り組みを進めてきた輪島塗、山中塗、魚醤(ぎょしょう)「いしり」と合わせて、石川の伝統工芸と食文化が高い評価を受けているといえる。全国区から世界を視野に入れた郷土の器と食の商品化に弾みをつけてほしい。

 今回、中小企業庁の「JAPANブランド育成支援事業」に採択された3件のなかで、 九谷焼はワイングラスなどの食器を製作。欧米の展示会などで発表し、海外の販路開拓を目指す。九谷焼は多くの製品を輸出してきた歴史を持つ。和と洋を融合させた新たな九谷焼の可能性を探ってもらいたい。

 加賀みそと大野醤油は、それぞれ海外市場での調査研究や販路開拓を進める。ともに地 域団体商標の認定を受けており、スローフードや「食の安全・安心」など、食をめぐる近年の消費者の要望に応える食材である。今回の事業は、国内での一層の知名度アップと販売促進につなげる好機ともいえよう。

 これまで「JAPANブランド」事業の支援を受けてきた輪島塗、山中塗、いしりの各 プロジェクトは、欧米での展示会に出品するなどして、商品開発と販路拡大を図り、一定の成果を上げている。

 それでも、各プロジェクトともに、「自律的な経営体制」や「ブランド力」などに、ま だ満足いくレベルではない、と受け止めており、今後克服すべき課題も多い。新規プロジェクト組も先行事例を大いに参考にして、石川から国内外に売り出すブランド力を高めていってほしい。

 また、石川の食文化の海外発信に取り組んでいる県は、県ニューヨーク事務所などを通 じて今回の3プロジェクトも支援する方針である。器と食をセットにして売り込むことができる利点を生かし、効果的に県産食材や伝統工芸の販路拡大につなげる工夫が求められる。