警察庁は25日、電車内での痴漢事件で一般人が常人逮捕をした場合などの身柄拘束の判断や裏付け捜査はより慎重に行い、捜査員を集中投入して「プロの目」による現行犯逮捕を目指すとする通達を各警察本部に出した。最高裁が4月、強制わいせつ罪に問われた大学教授に逆転無罪の判決を出したことを踏まえたもので、鉄道事業者に目撃者確保のための車内放送を求めることなども盛り込んだ。
痴漢事件の捜査を巡っては、05年にも裏付け捜査の徹底や微物鑑定の積極活用を求めた通達が出されている。最高裁判決で被害者の供述の信用性が否定され無罪につながったことから、新通達に新しい項目を盛り込んだ。
「客観的証拠の収集」には、DNA型鑑定の積極的検討や、そのための資機材の配布など科学捜査をさらに活用するよう強調。「留置の要否の判断」では、最初に常人逮捕されるケースが多いため、捜査幹部らは事件の内容や捜査への支障の有無を吟味して身柄拘束の判断をするよう求めた。
検挙対策では、痴漢被害が多発する路線や時間帯を分析し、捜査員による逮捕を増やす方針を初めて打ち出した。駅ホームの防犯カメラ整備など鉄道事業者との連携強化策も求めた。【千代崎聖史】
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■ことば
逮捕の一形態。通常、容疑者の身体の自由を拘束できるのは捜査機関に限られるが、現行犯の場合は民間人でも逮捕できる。刑事訴訟法は、民間人が現行犯で容疑者を逮捕した場合、直ちに検察官か司法警察職員に引き渡さなければならないと定めている。
毎日新聞 2009年6月25日 東京夕刊