トレーニングの後はシャワーを浴びるよりも先にまず糖の摂取を
グリコーゲンの再補充こそがハードな練習からの回復の鍵
- 臨床スポーツ医学1996年ワンポイントアドバイス
筋肉のグリコーゲンは運動を継続するための燃料であり、持久運動では特に重要である。多くのデータか ら、運動直前の筋肉グリコーゲンレベルが持久運動能力に直接的に影響することが明らかになっている。ハードな練習を行った直後では、筋肉のグリコーゲンは 枯渇しているので、十分な補給をしないと翌日の練習に大きなハンデを背負うことになる。グリコーゲンの再補充には練習後に一刻も早く糖を摂取することが大 切である。
グリコーゲンの原料となるグルコースは、グルコース輸送担体4型(Glut4)と呼ばれるキャリ アータンパク質によって血液から筋肉へ吸収され、グリコーゲンに合成される。Glut4はインスリンが存在するときにだけ筋肉への糖の吸収を促進し、イン スリンの作用がないときには働かない。この現象はインスリンによるGlut4のトランスロケーションとして知られている。しかし、運動直後に限っては、イ ンスリンの作用が無くてもこのGlut4のトランスロケーションが起こっており、強力にグルコースを筋肉に吸収できるのである。このタイミングを逃しては いけない。糖の溶液を練習前に準備しておき、シャワーを浴びるよりも先に飲むことが重要である。グリコーゲンが枯渇した状態が長時間続くと、人間の身体は 筋肉を分解してまで糖を合成しようとする。大切な筋肉を守るためにも糖の摂取は必要である。
摂取する糖は砂糖水が手軽ではあるが、砂糖はグルコースとフルクトースの化合物でありグルコースは 半分しかないので効率が良くない。麦芽糖(グルコース2分子の化合物、マルトースシロップなどの名前で市販されている)やデキストリン(グルコースのつな がったもの)が望ましい。腐敗を避けるために、作り置きをせず毎日調製する。長時間の激しい運動の後では体重1kgあたり1g程度(体重60kgの人なら ば60g)の糖分、例えば20%糖溶液をゆっくり300ml飲めばよい。人によっては飲みやすいように味を付ける工夫も必要であろう。
運動直後は食欲が低下しており、糖の溶液を受けつけないこともある。特に、練習中に水分が枯渇する と吐き気を催すこともあり練習直後に糖溶液を飲むことは難しい。練習中にも十分な水の補給を心がける必要がある。グリコーゲン回復のためには練習中の水分 摂取の時点から注意を払わなければならない。