2009年07月05日
オフショア法人と問屋商法
米国のインターネット通販大手アマゾン・ドット・コムの関連会社が東京国税局から140億円前後の追徴課税処分を受けていたことが分かった。アマゾンは、日本国内での販売業務を日本法人に委託する一方、日本の顧客との商品契約はこの米関連会社と結ぶ形で、売り上げも米側が得ていた。しかし国税局は、実際の本社機能の一部が日本にあるとして、数百億円の所得を日本に申告すべきだったと認定した模様だ。
米関連会社はアマゾンジャパンに販売業務を、「アマゾンジャパン・ロジスティクス」(千葉県市川市)に物流業務を、ともに委託して手数料(コミッション)を支払う一方、それ以外の大半の中枢機能は米側に集中させていた。問屋(といや)(コミッショネア)商法の一種とみられる。日米の税率はほぼ同水準だが、契約や売り上げと共に納税先を米側に集中させることで結果的に納税額も低くできる。
日米租税条約では、米企業が支店など「恒久的施設(PE)」を日本国内に持たない場合、日本に申告・納税する必要はない。アマゾンは市川市に物流センターがあり、仕入れた書籍などが置かれている。
こうした倉庫はPEに当たらない。しかし国税局は、
(1)米関連会社側のパソコンや機器類がセンター内に持ち込まれて使用されていた
(2)センター内の配置換えなどに米側の許可が必要だった
(3)同じ場所に本店を置く日本法人ロジスティクスの職員が、米側からメールなどで指示を受けていた
(4)物流業務以外に、委託されていない米側業務の一部を担っていた
――などに注目。
センター内にPEが存在するとして、05年12月期までの3年間に日本国内で発生した所得のうち、応分を日本で申告すべきだったと指摘した模様。
【問屋商法】 進出先の現地法人には販売などごく一部の業務に限定させる一方で、在庫の管理や為替変動などのリスクとともに、管理部門も本国に集中させてコストを削減することで、利益の最大化を図ることができる。米系の多国籍企業などに近年、採用されるケースが多いとされるが、進出先の国にとっては課税対象になる所得の流出につながる側面がある。
http://www.asahi.com/national/update/0704/TKY200907040278.html
昨今の景気悪化を受け、「オフショア租税回避スキーム vs 日本税務当局」 の課税を巡る攻防が激しさを増していくと予想されますが、裁判の場面では国側の敗訴が続いています。
オフショア法人と問屋商法の例
あまり知られていませんが、PDFでお馴染みのアドビシステムズは、登記上の本社がケイマン諸島に登録されたオフショア法人です(営業上の本社は米カリフォルニア)。
2004年に、アドビは今回のアマゾンと同じような理由で国税から37億円の申告漏れを指摘されましたが、アドビ側はそれを不服として提訴し、昨年2008年10月に東京高裁で国税側の敗訴が言い渡されました。
匿名組合スキーム
海外での法人所得が免税のオフショア法人が日本の匿名組合に出資する匿名組合スキーム(TKスキーム)は、国家間の税制・租税条約のすき間を突く租税回避スキームで、「オランダ法人+匿名組合」の組み合わせが良く使われます。
オランダ法人は、海外での法人所得が免税で、匿名組合の方は条約により分配金に対する課税が出来ないため、いずれからも課税されません。
このスキームを使ったアメリカの医療機器販売会社ガイダント・コーポレーションのオランダ法人と東京国税局が追徴課税を巡って争いましたが、最高裁で国側の敗訴が確定しました。これにより、最高裁も認める租税回避スキームとなってしまいました。
今後の予想としては、国が「課税が出来るように法律を変える」という手段に出る可能性が高いですが、課税範囲を広げることは税率を上げることと同じです。それをやると当然のように「海外からの日本への投資」が見込めません。
実質的に税率を引き下げ、その上で日本にお金が落ちる方法(例えば雇用などの人件費)を模索する必要がありますが、800兆円を超える借金を抱えた日本は動こうにも身動きが出来ない状態でしょうね。