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びっくりしました。「土曜深夜の過激お色気番組、突如打ち切り…サンテレビ」-。6月28日社会面(大阪版)の小さな記事です。兵庫の独立UHF局サンテレビの深夜番組「今夜もハッスル」(土曜・深夜零時~)が、27日深夜の放送をもって、唐突に打ち切られたのです。
1983年スタートの「おとなの子守歌」から、「おとこのララバイ」「のりノリ天国」「インリンのM時ですョ!」などコロコロとタイトルを変えながらも、土曜深夜に一貫して「エロ」を追求していた、同テレビの看板番組。スポーツ報知や読売新聞の報道によると、放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の「青少年委員会」(以下BPO青少年委)が23日に議論。「ポルノまがい。局の見識を疑う」などの意見が出たことを受け、番組趣旨を問う質問書を送付したところ、同テレビが「苦情が増えていたことや、BPOで議論されたことを受け、改めて検討した結果、放送基準を逸脱していると判断した」と、あっさり四半世紀以上の歴史に幕を閉じました。
34歳の僕は寂しさを禁じ得ません。インターネットなんてない中学生時代。テレビのボリュームを極限まで絞って、あるいはイヤホンを使って、こっそりと視聴した「おとこのララバイ」が、思春期の“エロの渇き”を潤してくれたのですから。月曜日の朝は学校で「きょうは女の子だけのパーティーなので~す」「今宵(こよい)の歓楽も明日への活力…カツリョクゥゥゥ」と、この番組でしかオンエアされないマニアックなCMをモノマネしてはキャッキャ言っていました。
そこで思いました。今の子たちは、「今夜もハッスル」の打ち切りについて、どう感じているのか。早速、大阪市内で50人の男子中学生にアンケートしてきました。「今夜もハッスル」が打ち切られて「困る」か「困らない」かの2択です。
結果は「困る」が34票、「困らない」が16票。なんと68%もの今の男子中学生が「『今夜もハッスル』が打ち切られて困っている」という結果がはじき出されました。
実はアンケート結果は驚きでした。正直、ネットで清濁さまざまな情報が氾濫(はんらん)している昨今、AV女優がラブホテルでエロ小説を朗読する程度のことでは、今の中学生はグッとこないだろうと思っていたのです。
それが、「土曜日の楽しみがなくなった」(中2)、「夜はハッスルしたいですやん」(中3)、「インリン様が好きやのに~」(中2)、「全国民が困っている」(中2)などと、「困る」サイドは、かなり悔しそう。「親が寝静まってからの緊張感を楽しめなくなる」(中3)という意見には激しく同意しました。中にはここで紹介できないような過激な意見もたくさんありました。
また、「親がパソコンを使わしてくれへんから、僕にとって唯一のエロやったのに」(中2)、「ケータイにアクセス制限がかかっているので、もともとHなサイトは見られない」(中3)という話が出てきたのは意外でした。
一方、「困らない」陣営は、「番組自体を知らなかった」が大半。他は「番組演出の度が過ぎていたと思う」(中1)、「見ているところを親に見られたら気まずすぎる」(中3)など。「アニメの方が好きなので」という中1は、「今夜も―」でアダルトゲームの紹介コーナーがあるのを知らなかった様子。「彼女がいるので、あんな番組を見てはイケナイ」というマジメなんだか不マジメなんだか分からない中3もいました。
まあ、中学生うんぬんは、笑って読んでもらったらそれで良しです。僕が本当に憂慮するのは、BPO青少年委のヒトコトで26年続いた番組が即刻打ち切られてしまう、その不条理です。“放送界の第三者機関”が立派な権力になってしまっていることです。
同委にとんでもなく政治的な委員がいるとしましょう。自分の政治信条にそぐわない番組があれば、「即刻打ち切るべき」と圧力をかけるのでしょうか。それでどんどん番組が打ち切られた揚げ句、残ったものが同委の「青少年に見てもらいたい番組一覧」にあるような、お上の広報番組だけになってしまったら-。いやあ、サブい世の中です。新聞屋としても看過できないですね。
そこまでは行かないでしょうが、そもそも、2年前に当時の副委員長が大麻常習で逮捕されたような組織が、どの口で"青少年に与える影響"を語るんやと言いたいです。
同委に常にやり玉に挙げられる他局の高視聴率バラエティー番組なんかは、のらりくらりと「番組趣旨を問う質問」をかわしながら、今も先進的で面白い番組をオンエアし続けています。サンテレビにも、もうちょっと気骨を持ってもらいたかったなあ。
(2009年7月3日21時19分 スポーツ報知)
97年入社。兵庫県出身。整理部、運動部でのボクシング、大学スポーツ担当などを経て、08年から週2度の特集面「大健康」取材を担当。名湯につかって執筆し、自ら写真のモデルを務めることも。顔が売れすぎて本人は照れるが、社内からは「天職だ」の声も。