超新星の爆発などで生じた宇宙線ミュー粒子を使い、火山内部のマグマやガスの様子を撮影することに、東京大地震研究所の田中宏幸特任助教(高エネルギー地球科学)の研究チームが成功した。火山版レントゲン写真といえ、火山の中を直接観測する世界初の技術という。研究チームは「ミューオグラフィー」と名付け、噴火のメカニズム解明や噴火予知につながるものと期待している。
ミュー粒子は、宇宙線が地球の大気と衝突する際に発生。上空や地平線などあらゆる方向から地上に降り注いでいる。研究チームは、ミュー粒子が、X線など他の粒子が通過できないキロ単位の岩石を透過し、その密度が高いほど透過しにくくなる性質に注目。持ち運び可能な観測装置を開発し、鹿児島県三島村、薩摩硫黄島の活火山、硫黄岳(標高704メートル)を撮影した。
その結果、火口の深さ約150~250メートル、幅60~80メートルの領域で、泡状のガスを多く含んだマグマがたまり、ガスを上部に放出している火山内部の様子をとらえることに成功した。
噴火の形態はマグマの硬さやマグマに含まれるガスの量で大きく変化する。マグマの密度が低くて軟らかければ、ガスが簡単に逃げてしまい、米ハワイ島の火山噴火のように溶岩流が静かに流れる。しかし、高密度で硬いマグマの場合、ガスが蓄積され、鹿児島県・桜島のような爆発的な噴火になると考えられている。
田中特任助教は「日本発の新技術を世界に広め、各国の噴火災害の軽減などに役立てたい」と話す。【石塚孝志】
毎日新聞 2009年7月4日 15時00分(最終更新 7月4日 15時01分)