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きょうの社説 2009年7月4日
◎金融機関の寄付講座 地域経済学の良き先生役
北國銀行が9月下旬から金沢学院大で経済・金融に関する寄付講座を開設することにな
った。北陸銀行も既に富大で金融機関論をテーマにした寄付講座を開いており、このところ銀行や信用金庫などの地域金融機関が大学の経済教育に協力する活動が全国的に目立つ。いわゆる「地域密着型金融」の取り組みの一環であるが、資金供給などを通じて企業活動を支援するだけでなく、地域経済学の良き先生役として、これからの産業を担う若い人材育成に尽力することも、地域経済の持続的発展を支えるべき金融機関の大事な役割といえる。金融に関するトラブルに巻き込まれる若者らの増加もあって、金融・金銭教育の必要性 が強く叫ばれるようになって久しい。これを受けて、地域の金融機関も積極的に教育現場での指導に乗り出すようになっており、北國銀行もこれまで、石川県教委と連携して高校に行員を派遣して金融セミナーを開くなどしてきた。 今回、金沢学院大の経営情報学部で開設する寄付講座は、こうした教育活動をより高い 次元で展開するものであり、今年度後期の単位取得講座に組み込まれることになっている。 カリキュラムを組んでの本格的寄付講座では、北陸銀行が一歩先んじており、2005 年に富大と交した「包括的連携協力に関する覚書」に基づき、銀行業務や企業の経営戦略、中小企業を取り巻く金融制度、最新の金融商品の特徴などを内容とする講座を役員自ら教壇に立って展開している。 地域金融機関は地元企業との長年の取引を通じて、地域の経済動向や産業の実態に精通 している。地域経済の強みも弱みも知り尽くした存在であり、生きた経済教育の先生役として、まさに打ってつけである。寄付講座は学生にとって、実学としての金融・経済学を学ぶ格好の場になろう。 大学から優秀な人材を社会に送り出すことができれば、地域経済の強化につながり、金 融機関自身の経営にも好影響をもたらすことになる。各行はこうした人材育成の地域貢献活動でも大いに競い合ってもらいたい。
◎住民税の特別徴収 天引きを「悪役」にせず
個人住民税を公的年金から天引きする特別徴収制度の開始を控え、県内の自治体の窓口
に、対象となる高齢者からの問い合わせが相次いでいる。「何でもかんでも年金から引くな」などと、新たな制度への不満を漏らす向きも少なくないようだ。後期高齢者医療制度のスタートに際してのドタバタの影響が尾をひき、天引きはすっかり「悪役」にされてしまった感がある。ただ、天引きそのものは現役世代のサラリーマンらにはなじみ深い仕組みであり、必ず しも悪いものではない。天引きという言葉を聞くだけで身構えたり、年金の手取り額が減るように感じたりするのも分からぬでもないが、感情的に反発するのではなく、制度の中身やその目的をしっかりと理解したうえで、冷静にその良しあしを見極める姿勢も必要なのではないだろうか。 今回の特別徴収制度は、後期高齢者医療制度のように新たな負担が生じるわけではなく 、国民の義務である税金の納め方が変わるだけなのである。しかも、天引きによってこれまでより手間が省けて便利になる人はいても、面倒な作業が大幅に増えるというケースはほとんどないはずだ。 天引きの導入は自治体の徴収事務の効率化にも寄与し、ひいては税金の無駄遣いの削減 につながることも期待される。これから、年金を受給する高齢者はさらに増えていくと予想されており、古いやり方に固執せず、新たな制度を取り入れていくことも考えなければなるまい。 もちろん、国や自治体の説明不足が窓口の混乱を招く一因となっている可能性も否定で きない。高齢者に通知書を送付する際に難解な専門用語を多用したチラシやパンフレットを同封したり、インターネットでPRしたりして、それだけで説明を尽くしたつもりになってはいないだろうか。行政も広報活動を点検し、見直すべき点は見直すとともに、「制度が分かりにくい」などと尋ねてくる高齢者に対しては、きちんと説明して理解を得る努力を惜しまないでもらいたい。
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