警察が職務中に行う質問、いわゆる職務質問に関してはオカルトな知識が飛び交っている。

曰く「多少イラッときても
全面協力が一番。
ごねると1時間コースです。



 などである。他にも警察官に非協力的だと何時間でも質問を続けられるあるいは交番に連れて行かれるという誤解も一般的にある。

 これらの誤解は警察官による質問(職務質問)の理解に誤りから生じるものである。本来、警察官が国民に対して行う質問というのは警察官職務執行法2条の内容に限られる。


警察官職務執行法
(質問)第2条 
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる


 これは警察官が職務において国民に質問できるのは犯罪に関することだけという規定である。本来、警察官は治安(具体的には犯罪取締まり)を守るために存在している公務員であることからも容易に理解できることである。

 では、なぜ、何時間でも質問が続けられるあるいは交番に連れて行かれるという誤解があるのかというと、これは、職務質問をされる側に証拠がないからである。
 一般に、警察官は数人で地区を巡回している。このため、たとえ質問された人が怪しいことはしていないと主張しても、警察官が複数いるために警察官の複数があやしかったと主張すれば、そちらの方の証言の信憑性の方が高くなる、という単純にそういう理由で警察官はやりたい放題という時代が続いたのである。

 現在では一般人にも証拠保全手段としての高性能なデジカメ付きの携帯がある。このため、まず職務質問されたときは

1.どのような理由に基づいて質問をするのかを聞く。
2.法律何条を根拠とするのかを聞く。
3.質問に答える間、携帯電話等で動画で録画する旨を伝える(たいてい「なぜか」と問われるが、「警察法79条に基づく苦情申立の証拠保全のため」と答えればよい)。
4.警察官全ての所属と警察手帳の表紙と警察官を全員録画する。

 ここまで準備できて撮影を継続できれば、あとは警察官の警察官職務執行法2条に基づく質問を受け付ける準備ができる。ちなみに警察官職務執行法2条を上げた場合はどのような点が
異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由
にあたるかを聞かなければならない。面白いことにこの点について警察官は同じ答えをいう、おそらくマニュアルがあるのだろう。

 質問段階で答える際には

1.任意の質問か?
2.法律上答える義務はあるのか?

2−1.義務があるとすれば法律上の根拠はどの法律の何条か

3.疑いは晴れたか?


という質問が必須である。3以外のそれぞれの質問はその場にいる警察官全員に各自に考えさせながら撮影しなければならない。

 こういった録画などの行動は全て、これらの証拠が仮に裁判官に見られたら裁判官はどう思うか?ということを意識した行動である。警察官は職務全てにおいてその意識がある。ところが、国民にそんな意識は通常ない、このため、勝手に怪しまれてしまうわけである。国民よりも同じ公務員である警察を信用する裁判官を責めるのはお門違いといえよう。証言以外の証拠保全手段として携帯は非常に有用なのである。

 実体験として、この方法を使った時の職務質問の時間は、警察官の質問に完全に協力的である場合と比較してもそれほど長くなることはない。なぜかというと完全協力の場合は証明書の照会の手続を省くことができるが、警察官に協力的であると身分証の照会をされることがあるため、結果的に長い時間がかかるということになるからである。

 ちなみに、以上の方法は法律を理解できる一般的な警察官なら許容しなければならない方法である。仮に撮影を何らかの手段でやめさせると、これは国家による権限の発動なので逆に警察官らにとって理由の説明が面倒なことになる。