WEBタイムス 平成10年(1998年)09月04日 第544号
   

<アストラムライン接続、己斐案が濃厚>

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 【西区】新交通システム・アストラムラインの延伸問題は、広島市が進めている南北線(吉島ルートか宇品ルートか)、東西線(地下鉄か、高速路面電車か、新交通システムか)とともに西部丘陵都市線として、市議会都市交通問題調査特別委員会で少なくとも平成三年から検討されてきた。
 西部丘陵都市線とは、アストラムライン広域公園前駅から都心部の交通機関へ結ぶ交通網で、問題はJR山陽本線のどの駅へ接続するかが注目されてきた。
 西部丘陵都市線接続案として上げられてきたのは、JR五日市駅接続案(十キロ)、JR新井口駅接続案(十キロ)、JR西広島接続案(六キロ)の三ルート。昨年末にその比較検討結果が公表され、市広報の今年二月十五日号によれば、三ルートのうちで西広島駅接続が優先して検討されている。そしてまた、この八月二十六日(水)の特別委員会へ東西線についての市の提案がなされたが、平和大通り線を提案している広電に対し、市の提案する新交通システムとの競合が生じるとして、広電ルートの変更案が出された。
 そこでも、市の新交通システム案は西部丘陵都市線の西広島駅への高架による接続案が「前提」とされており、「アストラムライン西広島駅」が濃厚になってきた。三ルートはいずれも「単独では採算がとれない」(市都市交通部)そうだ。西広島駅が優先案とされた理由は、広島駅に最も近い、市北西部と都心の交通を円滑にする、JR西広島駅国鉄清算事業団用地の利用を含めた己斐地区の再開発を進めるに効果的、など。
 広域公園駅から西広島駅の事業費は八百億円とされており、当然、基本ルートは想定されているはずだが、担当課の市都市交通部計画課では「親道路(高架を通す道路)のための用地買収の関係もあり、公開する段階ではない」としている。そこで、二十六日の特別委員会に出された資料の「西部丘陵都市線の検討ルートと沿線の状況」により、おおよそのルートを推定したのがである。
 西広島駅接続によって切り放される感じのする以西の地域の受けとり方はどうだろう。東西の交通路によって街を分断されている形の五日市地区にとっては、五日市駅への延伸は夢であることが、図に置いてみると、いっそう分かる。五日市商工会の年間活動目標には一貫して「アストラムラインの延伸」が上げられているが、少なくとも組織的な陳情行動などは、同商工会内に置いている「佐伯区を活性化する会」が平成五年に行ったものがあるだけのようだ。この会は、商工会をはじめ、連合町内会、社会福祉協議会、老人クラブ、PTAなど、区民のあらゆる団体を網羅していたものだったが、この会もその後、目立った行動はない。
 また、石内地区平地開発促進を理由に作られている「石内地区まちづくり協議会」の増田勲会長も、「欲しいが己斐に決まるんでしょうなあ。あまり話題にもなりません。この地区は開発調整区域にもなっていたので人口も少なく、ここを通っても採算がとれないということでしょうか」とあきらめムードである。
 新交通が五日市駅を経由して商工センターを横断し、都心部への循環コースとして開設した場合を想定し「広島市西部流通団地の公共交通機関整備促進に係わるアンケート調査」を八月に実施した市西部団地組合連合会では、四百四社中二百六十七社(六六%)から回答を得、周辺からの来訪の二一%、遠来の来訪者一九%、従業員一六%が自家用車を含む他の交通手段からアストラムライン利用に切り換えるとの結果を得ている。同組合では、もっと調査を充実させて陳情などにもっていきたい、としている。
 さて、それぞれ別行動をとってきた五日市商工会と西部団地組合、西広島駅接続のいろが濃くなった今日、ともに西部地区の交通について、アストラムラインだけでなく南道路も含めた検討をしようと、初めての会合が十一月頃開かれる予定だ。
 



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