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長谷川V9宣伝カー、がんと闘う母元気づけ

 V9戦宣伝カーの前で記念撮影を行う長谷川の母・裕美子さんと父・大二郎さん=兵庫県西脇市
 V9戦宣伝カーの前で記念撮影を行う長谷川の母・裕美子さんと父・大二郎さん=兵庫県西脇市

 「WBC世界バンタム級王座戦12回戦」(7月14日、神戸ワールド記念ホール)

 王者・長谷川穂積(28)=真正=のV9戦宣伝カーが2日、故郷の兵庫県西脇市内を駆け抜けた。がんで闘病中の母・裕美子さん(54)を元気づけるために、という王者の強い希望で実現したパレード。6月10日に西脇病院に入院し、28日に退院したばかりの裕美子さんは、我が子の粋な計らいに勇気づけられた。7月14日の世界戦当日、母はリングサイドから孝行息子に声援を送る。

  ◇  ◇

 西脇の町に大音量の「ロッキー」テーマ曲が鳴り響いた。近づいてくる2トントラックの両サイドには、長谷川の世界戦を告知する縦2メートル、横4メートル60センチの巨大看板が張られている。町行く通行人が、すれ違うドライバーが、思わず目を留め振り返った。「おらが町のヒーロー」のド派手なパレードだ。

 王者たっての願いで実現した。世界戦のために用意された宣伝カーは、神戸と大阪市内での走行を予定していたが「西脇にも行ってもらえませんか」と頭を下げた。

 「母が西脇病院に入院してるんです。病院の前を通ってもらえませんか」-。

 母・裕美子さんは、3年前の11月から、がんで闘病生活が続いている。今年2月には兵庫県たつの市のがん医療施設で肺がんの粒子線治療を受けた。保険のきかない治療のため、約300万円と高額な費用がかかるが、長谷川がすべて負担した。裕美子さんは「この治療で全部なくなって、医者から『5年は大丈夫』と言われたんですけど…」。5月の検査で、また肺にがんが見つかったという。

 そして6月に入って「今までにないしんどさを感じた」という。10日から西脇病院に緊急入院。その後は元気を取り戻し、28日に退院した。そのため、この日は大木町の実家で“息子”の到着を出迎え、「すごいですね。おおきいわ」と感激した。車の前で父・大二郎さん(53)と並んで記念撮影し、満面の笑みでフレームに納まった。

 だが長谷川の話になったとき、一転して裕美子さんの顔が曇った。「きのうのテレビで生田神社に参拝する穂積を見たんです。なんだかしんどそうで…いつも私のことを心配してくれるけど、私は子供のことがすごく心配」。息子の体調を案じた。夜には直接電話し「体は冷やしたらあかんで」と忠告した。

 「周囲の期待は大きいし、いろんな物を肩に背負ってるんだろうけど、無理はしてほしくない」。母の不安は尽きないが「試合は何があっても駆けつけます」とリングサイドから声援を送ることを約束した。世界一の息子に元気と勇気を与えること-。それが、裕美子さんにとっては何よりの特効薬になる。

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