【モスクワ大木俊治】ロシアで1日から、ルーレットやスロットマシンなどを備えたカジノが全面禁止され、夜のネオン街から「カジノ」の灯が消えた。06年にプーチン前大統領(現首相)が、風紀を乱すなどとしてカジノの営業を禁止する法案を提起し、下院が採択していた。
ロシア全土のカジノの店数を示すデータはないが、首都モスクワだけで約3000店とされる。多くは6月30日までに店舗を閉鎖したとみられ、同日深夜にカウントダウン行事を開いたカジノもあった。モスクワ市警は1日未明、巡回捜査を行ったが、違法営業はなかったという。
法律は、西部カリーニングラード州や極東の沿海地方など4地域を例外的にカジノ営業を認めるゾーンに指定し、他の場所でのカジノを09年7月1日から禁止すると規定。だが、この4地域でカジノ建設は全く進んでおらず、ソ連崩壊後、急速にロシア全土に広まったカジノはすべて閉鎖されたことになる。
カジノ業界は、経済危機の中で「従業員を解雇すれば全国で約40万人の失業者が出る」として禁止の見直しを求めてきたが、メドベージェフ大統領はプーチン氏の肝いりでできた法律の「厳格な運用」を優先した。
背景にはロシアで近年、ギャンブルで生活破綻(はたん)する例が急増していたことも挙げられ、国民の72%がカジノ禁止を支持しているとの世論調査結果もある。
毎日新聞 2009年7月2日 東京夕刊