’96.9
授業実践レポート NO.59
テストの答え方の指導〜国語 |
1.はじめに
標題のような指導は、意外に授業として扱われていないように思える。
どの学校・学級でも1単元の教科学習が終わると、市販のワークテストをし採点をするだろうが、
特に国語のテストの場合「○」「×」や「ア、イ、ウ」などの記号化させる選択肢のある問題や、
漢字等の読み書きの問題を除けば、大部分が文章記述形式の問題で構成されている。
赤字の解答例を見ると、「〜なぜですか。」と問うているのに「〜だった。」と記されているものも時にある。
私は、ワークテスト等の教材選定をする際は、こういう赤字の解答の表記の仕方もよくみるようにしている。
良くない答え方が記されているものは、教材としてのレベルも低いとも考えている。
「なぜ」と問われたら「〜から。」と答えねばならないし、「どんなこと」と問われたら「〜こと。」と答えることが至極当然なことだからである。
さて、ここでは、教材やワークの不備を指摘・批判することではなく、答え方としての基本をきちんと指導することの必要性をとくことが本論である。
1年間に1回くらいは1時間かけて、じっくりと指導してみたいことであり、
これは、ひいては、子供たちに安易な文章使いに気付かせ、その是正を促し、正しい言語の使い方を学ばせる好機会と考える。
以下に、その授業の展開を記すことにする。
2.授業の展開(授業記録より)
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指示1 |
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ある学校で国語のテストがありました。(別紙練習プリントを配る。ステップ1) |
ステップ1 ○次の文を読んで答えなさい。 たけし君は、今日ねぼうした。 だから、学校に遅刻した。 (問題)なぜ、たけし君は、学校に遅刻したのですか。 三浦君の答え・・・・・(ねぼうした。) 藤澤君の答え・・・・・(ねぼうしたから。) |
発問1 |
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さて、どちらの答えが良い答えですか。そして、それはどうしてですか。 |
数名発言させた後、束ねる。
説明1 |
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この問題は、学校に遅刻したわけを聞いている問題ですね。わけを答えるときには、「から」を付ける方がよいのです。だから、「藤沢君」の答え方の方がよい答え方です。(カード提示・・・「なぜ」と問われたら「〜から。」と答えよ。) |
指示2 |
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では、これはどうでしょう。ステップ2を目で読みなさい。 |
ステップ2 文と文をつなぐことばです。 ( )のどちらのことばを使えばいいですか。よい方を○でかこみなさい。 雨が降り始めました。 (だから・でも)かさをさしました。 |
全員読んだのを確認して、
指示3 |
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できた人から先生に持ってきなさい。○つけてあげます。 |
全員チェックしたあと、
発問2 |
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ある人は、こんなふうに答えていましたよ。 |
比較的容易に、大方の子供たちはBの方が正しいと見抜く。
説明2 |
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その問題が、何を求めているのかをよく読んで、求めているとおりに答えないと○になりません。ここでは、「かこみなさい」だから、B君が正しい答え方で、A君は正しい答え方ではないのです。 |
指示4 |
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同じようにステップ3をやりなさい。 |
ステップ3 つぎの( )に当てはまるつなぎことばは、どれですか。□の中から選んで、その記号を( )に書きなさい。 わたしは、川であゆを見たことがある。 ( )、へびは見たことがない。 |
○あ だから ○い しかし |
全員できたところで、尋ねる。
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発問3 |
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答え方が正しくないのはどれですか。それはどうしてですか。 |
発言を求めると、BとCの明確な違いが言えないでいる。
説明3 |
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「記号で書け」の問題は、BもCもいいですね。ただ、Cの方が、丁寧さが身についているというのが分かります。○まで記号の中に含むと考えている先生もいますから、これからは○まで書くようにしましょう。(カード提示・・・「記号で書け」は「その通りの記号で書け」) |
指示5 |
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それでは、次に、先ほど渡されたテストを見なさい。鉛筆持って、全員立ちなさい。テストの上半分の文章の中に、会話文が一つあります。それを見つけて、その文に線を引きなさい。引いた人から座りなさい。 |
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指示6 |
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線を引いたところを声に出して読みなさい。 |
発問4 |
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「線の言葉は、だれに言ったのですか。」(板書)その答えを、その文のそばに書きなさい。 |
机間巡視して、列指名。「書いたものを、そのままそっくり言いなさい。」と指示する。以下のような解答文が挙げられた。
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説明4 |
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正解は、問題文の「か」を取って、「だれ」の部分に書いた答えを入れて読めば分かります。 |
各自、声に出して読ませる。余計な言葉は要らないということに気付かせる。
(カード提示・・・「だれ?」と問われたら「だれ」とだけ答える。)
指示7 |
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では、こんな問題には、どう答えればいいのでしょう。プリントのステップ5を見なさい。そこの問題@を読んで答えを書きなさい。 |
ステップ5 太郎君は、今日の漢字のテストが気になって仕方がなかった。 先生から、ようやく答案用紙がわたされた。 すると、なんと、100点だった。 うきうきした太郎君は、スキップしながら家に帰った。 お母さんは「よかったね。」と言ってほめてくれた。 (問題@) お母さんからほめられたとき、太郎君はどういう気持ちでしたか。 ( ) (問題A) 太郎君は、どんなことをお母さんからほめられたのでしょう。 ( ) |
全員書いたのを確認して、
指示8 |
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全員起立。( )さん、答えを読んでください。 |
全員の答え方を細かにチェックするわけである。
やはり若干数、正しい答え方をしていないことが分かる。
説明5 |
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どんな気持ちと問われたら、「〜な気持ち」と書かなくてはなりません。(カード提示・・・「どんな気持ち」と問われたら「〜な気持ち」と答えよ。) |
指示9 |
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こんな答え方で、問題Aもやりなさい。 |
書き終えた子に次々と当てる。すぐ評定する。「50点」「70点」「30点」・・・というように。
説明6 |
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これも同じで、「どんなこと」と問われているのですから、「〜なこと」と答えるのが正しいのです。 |
以上が授業の流れと展開である。
最後に次のようにいって授業を締めた。
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3.おわりに
以上のような授業は、前述したように年に1回は、行いたいと考えている。
採点後のテストを返却する度に、子供に告げていたのでは、一貫性に欠け習熟もままならない。
しっかりとした指導の場を設定し意識づける時間を保証したいものである。
とは言っても、この1時間の授業で「答え方」が全員マスターできるとも当然考えていない。
即時的・継続的な指導が必要であることは言うまでもない。