強盗致傷事件で逮捕、送検された男性が処分保留で釈放された。弁護人は安堵感を示しつつも、捜査の在り方を批判。県警幹部は「検察の判断は予想していなかった」と苦渋の表情。自白強要との指摘には「慎重に取り調べた」と反論した。

　南風原町のパチンコ店裏の景品交換所の強盗致傷事件の容疑者として拘置され、２日に処分保留で釈放された赤嶺武さん（５０）＝南風原町＝が同日夕、弁護士とともに県庁で会見した。

　「今後、こういう間違いがないようお願いしたい。それだけです」

　２３日間身柄を拘束されていた赤嶺さん。警察に対する思いを聞かれ、少し疲れたような表情で言葉少なに語った。

　釈放されたことには「やっぱり、正直に言ってよかったと思いました」と話した。

　弁護人の岡島実弁護士によると、赤嶺さんは６月１０日午前に与那原署の署員に任意同行を求められ、その後７時間にわたる取り調べで、心理的な圧迫を加えられ、警察官の言うままに容疑を認めたという。

　赤嶺さんは刑事から「ちゃんとしゃべらないと一生刑務所行きになるぞ」「弁護士の言うことを聞いていると不利になるぞ」などと言われたという。岡島弁護士は、警察による弁護権や黙秘権の侵害を指摘し、「虚偽自白が作出される典型的な経過だ」として、捜査手法を批判した。

　現段階では、不起訴処分ではなく、県警や地検は「捜査継続」を強調している。岡島弁護士は「きちっとしたアリバイがある。真犯人はほかにいる。そこをあたってほしい」とした。

　また、県警が「決定的な証拠がある」と発表していることに、岡島弁護士は「決定的であれば釈放されていない」との見解を示した。

県警「証拠は十分」
捜査は継続

　強盗致傷容疑で逮捕されていた赤嶺武さんを地検が処分保留で釈放したことを受け、捜査にあたった与那原署や県警本部刑事部内には「証拠も十分で捜査は尽くしていた。検察の判断はまったく予想していなかった」と驚きの声があった。

　一方、県警が容疑者と裏付ける決め手となった証拠は、赤嶺さんの自宅などの捜索で押収した衣服に被害者女性との接点をうかがわせる物証が残っていたことや、拳銃の模造品が入っていたとみられるパッケージが見つかったことだったことが２日、捜査関係者らへの取材で分かった。

　県警の仲宗根孝刑事部長は地検の記者発表から１時間後に県警本部で会見。「自供を基に裏付け捜査を進める中で、決め手となる物的証拠、補強できる物的証拠もあった」と説明。地検の決定に納得できない表情を浮かべながら「まだ起訴される可能性もある。警察としては逮捕当初の全面自供を基に裏付け捜査を進めており、今後、足りない部分を補っていくしかない」と述べた。

　赤嶺さんと弁護士が、警察の取り調べの中で自白を迫られたとされる件について、仲宗根部長は「裁判員裁判を見据えたモデル事案として、慎重に取り調べを行った。強要という話はない」と反論した。

　県警によると、赤嶺さんは６月１０日午前中に任意同行され、同日夕方に自供。１１日未明に逮捕された。

　与那原署によると、任意同行を求めた赤嶺さんの供述が犯行状況と合致し、容疑を認めたため逮捕。事件に使ったとされる拳銃のようなものは模造品だと話していたという。