【会ってみた No.2】“男”疑惑は予想外でした…【ミンカ・リー】
近年、インターネット上で賑わいを見せている動画共有サイト。今や海外、国内を問わず無数のサービスが展開されており、一度はサービスを利用して動画を見たことがある方も多いはずだ。そんな動画共有サイトの1つで、国内最大手のサービスである『ニコニコ動画』。リアルタイムで動画にコメントをつけることが可能なため、独特なその空気の“共有感”が人気を呼んでいる。インタビュー・シリーズ【会ってきた】の第2回目は、その『ニコニコ動画』の中で作品を公開し、多くの人々の支持を得ている“素人”の1人、『ミンカ・リー』さんの元を訪れた(この記事の詳細はこちら)。
※『ミンカ・リー』さんの動画は以下よりご覧になれます
http://www.nicovideo.jp/mylist/10295585
コスプレ姿で表に立って踊りを披露する女性『ミンカ・リー』。そんなミンカを撮影し、動画を編集する裏方の『アルト伯爵』。2人が『ニコニコ動画』にアップロードした5本の動画は、6月30日の時点で合計160万回も再生されており、総コメント数は約10万件にも上る。出会ってから3年が経つというこの素人2人は、どのような道を経て現在の状況へとたどり着いたのだろうか。
■そのキャラクターの誕生
現れた『ミンカ・リー』さんは、ややおっとりした口調で語り出した。
ミンカ
「こんなに反響があるとは思ってなかったんですよね。最初は別に顔を出すことへの抵抗なんかはなかったというか、まったく想像ができてなかったんですよ。動画の再生数が1000行けば面白いなぁなんて軽い気持ちで始めたので。こんなに『男なんじゃないか』『顔出しか』『馬鹿じゃないのか』だとかね、そういうふうに“叩かれる”ことも予想できなかったですね(笑)。もっと他の踊り子さんと同じような扱いになると思ってたんですが……おかしいな…」
― そんなユーザーからの反応が怖くはなかったのだろうか。
ミンカ
「一応、女の子なんで(笑)。怖いなとも思いましたけどね。むしろ想像力が凄いなぁって。観察力というか。もうみんな面白いんですよ。撮影場所に使っている家があるんですけど、そのちょっと空いた障子の隙間が怖いとか。エアコンの電源コードが伸びてパツンパツンにはってるだとか。まぁ私が“男”っていうのもですね…あの映像でそこまで想像が膨らむっていうのが凄いなぁと思いましたね。でもぼんやりとですが、顔を出していたということ、あと“男”疑惑があったから、ここまで再生回数が伸びてしまったのかなぁとは思ってます」
― 確かに「撮影のたびテレビの上の『Amazon』のダンボール箱が増えている」など、細かい突っ込みがコメントで入っている。
ミンカ
「『Amazon』の箱は伯爵が買っているものなので、細かいことは知らないんですけど。ただでも確実に行くたびにDVDやCDが増えてますよ」
そして話しはミンカと伯爵、2人の出会いに及ぶ。
ミンカ
「3年ほど前に某レンタルショップのアルバイトのオープニングメンバーとして知り合ったのがきっかけなんです。よくある普通の話しですよね(笑)。それでまぁ、お互いオタクだったので趣味があったというか、話しがあったというか。2人で話してると何かと設定が生まれたりするんですよ。私はこうなりたいとか、じゃあ伯爵はこうなろうとか(笑)」
― それから互いが『ニコニコ動画』を知り、作品の制作が始まったというわけだ。
ミンカ
「最初はただの興味本位だったんですけどね。踊るなら衣装は『ランカ・リー(2008年に放送されたアニメ『マクロスF』に登場するヒロインの1人)』に似せたものにしようという話しだったんだけど、これが持ってなかった(笑)。なので私が持ってたメイド服になったんですよね。で、私がそれで踊るなら伯爵はどんな設定にしようかと。じゃあメイド服なんで、雇っている伯爵にしようというのが、2人で映像を作り始めたきっかけなんです」
■ミンカと伯爵による共同作業
― 日本の原風景に見られるような“民家”で、『ランカ・リー』の曲をバックに踊っている。そんな理由で『ミンカ・リー』と名付けられた彼女。その“民家”はどこなのだろうか。
ミンカ
「撮影は伯爵のおうちで、2人の予定が合う時に撮ってます。大体、3~4時間くらいで1本撮れますね。練習の時間は別にしてですけど。ちなみになんですが、あの部屋は2階なんですよ…。だから踊っている時はかなり床がギシギシ言うってしまうので、そうとう気を使いながら撮影しているんですよ(笑)。でも昔は撮影する機会も多かったんですけどね…今はそれほどなくなってしまったんですよね」
― 最初から素顔をさらけ出していたわけだが、そこに理由はあったのだろうか。
ミンカ
「ダンスが上手いわけでもないので、顔が見えたほうが、表情が見えたほうがより伝わりやすいんじゃないかと思ったんですよ。口元、目元が見えないだけで印象が変わったりするじゃないですか。せっかくやるんだから、見てくれる人にできるだけ悪い印象を与えたくないな、という思いがあっただけなんです」
― 伯爵という存在、そこにも何か意図があったのかと尋ねた。
ミンカ
「伯爵の存在は気にされている方も多いみたいなんですよね。私としては他の踊り子の方と違って、そういう手伝ってくれる存在がいたので、人気なんて全く出ないかと思っていたのですが…。1人じゃ動画が作成できないので、2人合わせての『ミンカ・リー』なんですよね。でも踊りを覚えるのも自分自身だし、ブログの更新だって1人でやってるし。なので伯爵より頑張ってるつもりですよ!」
― 失礼だとは思いながらも、2人の関係を確認してみる。
ミンカ
「伯爵とメイドという、それ以上でも以下でもないんですよ」
そう笑いながら、そんな2人の成果物の中でも特に気に入ったものがあると彼女は続けた。
ミンカ
「個人的には『みらくるアンコール』が好き。踊りの練習量なんかは一番少なかったんですけど、分かりやすい、伝わりやすい動画かなと思ってます。おまけにハルヒ(2006年に放送されたアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のヒロイン)のコスプレをして、エンディングテーマを踊った映像もつけたんで。でもあれはあんまり人気がないんですよね…。最近アップした動画『最強パレパレード』は、あとから出たのに凄い再生数になってしまったんですが…何かあるんですかね」
不思議そうな表情を浮かべなた彼女だが、恥ずかしさもあって自分の動画は何回も見直せないのだと明かした。
■動画を通して見たもの
― そもそも、なぜ映像作品を選んだのだろうか。
ミンカ
「それは本当にシンプルなんですけど、作ったものに対する分かりやすい反応が見たかったので、『ニコニコ動画』にアップしてみたんですけどね。それでまぁ、12月の初めぐらいに最初の動画をアップしたんですけど。『星間飛行(アニメ『マクロスF』の挿入歌)』をバックに踊ったものだったんですけどね。それが2、3日で再生回数が10万回になってしまって…。考えてた数字の10倍? 100倍ですか? 本当にビックリしたというか、予想外としか言いようがなかったですね」
― そんな“ミンカ”人気は急上昇したわけだが、実生活への影響が気になった。
ミンカ
「メイド服は部屋に飾ってるんですけどね、親はまったく気付いてないと思います。周りの人には特に隠したりということはないかったので、『やってくれたな』なんていう意見というか、反応はありましたね。『見たよ』とか『よくやるよね』なんて言われましたけど、総じて『頑張れよ』というメッセージが含まれてましたねぇ。感謝してます」
― 劇的な変化はなかったということなのか。
ミンカ
「本当に実生活にはまったく影響がないんですけど、ネットを介しての人とのつながりが急速に増えたというのはありますよ。『ニコニコ動画』に作品をアップしている他の人や、応援してくれる人。地域や性別、年齢もみんなバラバラなんですけど、そういう人達と知り合えたっていうのは、動画をアップしたおかげですね」
しかし彼女達は1度目の動画を取り下げ、活動を停止した次期がある。
ミンカ
「予想を遥かに上回る再生数とその反響で、もう自分達が収集できる状況ではなくなったと感じてしまったんですよね。だって、ただインターネット上をふらふらしていただけだったのに、それが何かを発信する側に回ったわけじゃないですか。それとちょっと怖くなってしまうようなコメントもあったので、やっていく自信を失くしてしまったんですよ」
― だが2人はまた動画をアップし、活動を再開した。
ミンカ
「色々ありましたけど、それでも復活をのぞんでくれる声をチラホラ聞いたので。そこまで応援してくれるなら、やってみようかなと。決心しました」
― 応援してくれる人達への目線というのは、どのようなものなのだろうか。
ミンカ
「多くの人が見てくれていることに関しては、率直に言えばうれしいですね。ただまぁ…そんなに見なくてもいいのに…という思いもあります。恐縮しちゃいますよ。でも見てくれている人が居る、そういうものが支えになってるんですけどね。逆に言えば、当初の自分がやりたいという気持ちはなくなってきちゃったのかな」
そんな人達に何か返せないかと、日々考えているという。
ミンカ
「ラジオをやってるんですよ、ファンというか、応援してくれている方と交流するために。同じく『ニコニコ動画』の「踊ってみた」に動画をアップしている『いとくとら』ちゃんとやったりしたんですけどね。これからもどんどんやっていきたいですよね。あと『ニコニコ生放送』はやりたいんですけどね。これが枠取り(生放送をするためには、人数が限定された枠を押さえる必要がある)ができないんですよ。やろうと思って何回か試してはいるんですけどね」
※『ミンカ・リー』さんへのインタビューはまだまだ続きます。次週、7月8日(水)掲載予定の『会ってみた No.2、ミンカ・リー後編』では、そんな彼女のプライベートに迫りたいと思います。
――――――――――
編集後記
一昔前なら、家庭、そして職場や学校、その次のサードスペースに存在したのは路上(ストリート)だった。今はネットがそれに取って代わり、若者達はギターをかき鳴らしたり声を張り上げたりする代わりに、PCを利用してWEBに向けて発信し続けているのかもしれない。
――――――――――
■シリーズ【会ってみた】バックナンバー
『脱出ゲーム』は5歳から思い描いていた夢の場所だった 【会ってみた No.1】