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怪しい話−35

「月の伝説」

 月の伝説といえば、ウサギがお餅をついて、人が狼に変身して、狸が腹鼓を打って、かぐや姫は里帰りをして、蟹に身が無くなるという・・・。

 満月の夜には犯罪の発生が増加することが統計的に立証されていますが、他にも人間のさまざまな周期が、地球の自転、公転運動のリズムよりも、月のリズムに支配されていることが知られています。

 私たち東京オリンピック世代の一般常識として、月に関して知られていることは、

  • 公転と自転の周期が同じで地球に対して常に同じ側を向けている
  • 重力が地球の1/6
  • 大気が無い
  • 水が無い
  • 生物がいない
といったことでしょうか?

 しかし、これは本当なのでしょうか?

 さて、ヒュー・ロフティングの名作、ドゥリトル先生シリーズ(岩波書店)に「月からの使い」→「月へ行く」→「月から帰る」という月の3部作があります。

 最初に読んだのは年が一桁のころだったのですが、ドリトル先生と記述した方が日本では分かり易い?

 後年、ドゥリトルがDolittle(怠け者、藪医者)を意味していると知って笑い転げたのですが、さすが井伏鱒二、山椒魚を悲しませただけのことはある。

 シリーズ全12巻中、第1巻の「ドゥリトル先生アフリカ行き」の初版が1920年のことなので、80年以上経過していますが、今読んでもじゅうぶんおもしろいという・・。

 映画化も2回(エディマーフィーの1,2を2回とすると3回)されていますが、いずれも原作には遙かにおよびませんなあ〜。

 それはともかく、月には水も大気もあり、重力も地球の1/3程度という説があります。

 特に、水に関しては、地底湖の形で何層にも分けて内部にストックされていて、表層の大半は凍っているそうです。

 もっとも、これは”月=恒星間移住用宇宙船説”によればということなんですが・・・。

 つまり、大人数の星間移住を試みる場合、手頃な大きさの天体を加工してその内部で世代を重ねながら旅をするのが一番確実ではないかと私が考えているだけのことなんですが。

 例え、どのような宇宙船を作ったとしても、いわゆる宇宙塵のような障害物が高速で衝突した場合、大きさによってはタイタニックよりあっけなく一瞬で全滅する可能性がありません?

 現在建設中の国際宇宙ステーションって、そのあたり大丈夫なんでしょうか?

 しかしながら、数キロにおよぶ外壁を持つことができる加工した天体というのは、自分で太陽に突っ込まない限り、ほとんど無敵です。

 ジュールベルヌの「地底旅行」が下敷きにしている地球空洞説というのがありますが、加工天体である月の内部が空洞であると仮定すると、いろいろな謎が一度に解けていきます。

 ただし、私が仮定している月空洞説のモデルになる地球空洞説といえば、エドガー・ライス・バロウズの「地底世界ペルシダー」(早川SF文庫)の小太陽が1日中輝いている地球空洞説の方が近いのか?

 こう書いてくると嘘臭いけれど、ハレー彗星でその名を知られているイギリスの天文学者エドマンド・ハレーも地球空洞説を発表していることを明記しておこう・・・もっとも1692年に発表ということを書いておいた方がフェアかな?

 ・・・んでもって、月が恒星間移住宇用宙船ということになると、倍くらい不整合が増えるんですが気にしてはいけない(大笑)。

 ここまでくれば、とんでも本というよりファンタジー小説という「衝突する宇宙」(イマヌエル・ヴェリコフスキー 著:法政大学出版局)でさえ、さすがに”月=恒星間移住用宇宙船”説は唱えていないので、とりあえず勝った・・・勝ってどうするという気もするが。

 もっと穏やかに、月の表面に異星人(が常設基地を築いている)となると、「ぼくの地球を守って」(日渡早紀:白泉社)が白眉ですが、この話では具体的に彼らがどうやって月までやってきたかは謎。

 なお、2001年末に「記憶鮮明U」(白泉社)で「ぼく球」のサイドストーリーがやっと収録された・・・コレクターとしては、よかったよかった。

 ほぼ同時期の、400光年の星の海を鮭のごとく地球で産まれた人魚が宇宙を回遊して再び帰ってくるという背景で描かれている「月の子」(清水玲子:白泉社)も、人魚がどうやって泳いでいるかは謎。

 そういえば、「月の子」は作者自身が途中で怖くなったのか意図的に路線が変わったような気がしますが・・・。

 こうした惑星間移住ということでは、やっぱ、1978年のスター・レッド(萩尾望都:フラワーコミックス)は無視できないか?

 そういえば、月は火星にもあるんですが、これをスイフトが「ガリバー旅行記」の中で予言(衛星発見は1877年で、出版は1726年)していたことは有名ですが、やっぱり火星の月にも人工天体説があったりします。


 * 月人工天体説は、旧ソ連の時代(1970)にミハイル・ヴァシンとアレクサンドル・シュシェルバコフが既に唱えているのだそうです。

 一人でなかったと喜ぶべきか、一番乗りでなかったと悲しむべきか・・・まあ、一番乗りは難しいなあ。

(2003/01/09)


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