「『この中で、国籍法改正案を全部理解している人は手を挙げてください』20日昼の自民党津島派の総会で、戸井田徹衆院議員はこう呼びかけたが、手を挙げた議員は1人もいなかった。」
立法府に属していながら、わずか一ヶ所、最高裁判決どおりになおすだけの改正が理解できないことはないでしょう。金融危機と景気後退の最中に、衆議院で全会一致で可決された法案について、いまさら粘着な議論を吹っかけられるのが嫌だから手を挙げなかっただけではないですか? ボクだったら手を挙げませんよ。戸井田議員と話すのは疲れるので。
そもそも議員が法案「全部」を理解しているなんてことは、現代社会ではあり得ません。いや、ほとんどの法案はまったく理解していないでしょう。たとえば、戸井田議員は、金融商品取引法(証券取引法の全面改正。この度の国籍法改正よりもよほどみなさんの生活に関係しています。)について全部理解、いや全部じゃなくて一番基本的な部分でけっこう、新しく有価証券概念に含まれるようになった権利やアセットマネージャーの規制について、正確に理解していますか?
金融商品取引法 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO025.html
金融商品取引法施行令 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40SE321.html
「金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案等」に対するパブリックコメントの結果等について http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20070731-7.html
※ 特に最後のページのリンク先は、仕事に関係ない人はクリックしないほうがいいです。A4PDFで全部で1000ページ以上(両面印刷しても4.8kg:いしけりあそび実測)、ヘボいPCだと固まります。
現代社会では、行政に対する民主的な統制を「議員が知っている」「知らない」なんて基準のみで達成しようとすること自体が、およそ非現実的なのです(憲法学の常識でしょ。)。そして、仮に金商法よりもはるかにわかりやすいこの改正案について一部理解していない議員がいても、最高裁判決どおりにするだけのこの法案は、非戦闘地域がどこかもわからないままイラク特別措置法に基づいて自衛隊を派遣するよりもはるかに問題は少ないです。いくらこの記事を書いた産経新聞の記者(私に取材した人でないのを祈ります)の程度が低くても、そのぐらいのことは理解しているはずです。特定の法案だけ取り上げてこんなことを書くのですから、産経新聞の記事は、悪質な印象操作です。まあ、自社のHPにあのデタラメだらけの国籍法まとめWIKIなるページをリンクしていたぐらいですから、この件に関しては新聞扱いしないほうがいいのかも知れませんが。
うちのHPにも売国うんちゃらかんちゃらメールしてくるのがいるし、もういい加減にしませんか?
昨日連絡があったのですが、展開によっては、ひと前で話すのが大の苦手の「いしけりあそび」も、とあるオフィシャルなところにひっぱりだされるかも知れません。衆議院で全開一致で可決しているのに、いまさらボクの話なんて聞いても意味ないと思いますが。
一審の違憲判決、最高裁判決といずれも新聞の一面トップで報道され、すべての全国紙が社説でとりあげ、さらに法案の段階でも、偽装防止の体制も含めて、繰り返し報道されているのに、なぜ寸前になってここまで大騒ぎになるのか、まったく理解できません。ハーメルンの笛吹き男でしょうか?
心あるブログの読者は、ことの本質を理解していただいているので(いくつかのブログで、私のエントリーを読んで考えが変わったと書いている方をみつけました。素直にうれしいです。)、あっさりしか書きません。「日本人の血」に執着するあまり、ドイツがどうの、イギリスでDNAがどうの(義務付けなんてしてません。イギリス議会のHP検索してみてください。)、法務省は諸外国の例を調べないでどうのと、どっかのトンでもHPをネタに粘着している 新聞記者さんがいますけどね、ドイツは、そもそも血統主義だけじゃなくて、ドイツで生まれた外国人の子どもも、両親のいずれかが少なくとも8年間合法的に滞在して、かつ永住とって3年経過していれば、出生と同時に子どももドイツ国籍を取得するし、イギリスも永住の父か母から生まれれば、外国人の子どももイギリス国籍を取得します(おまけに重国籍もOKです。)。そうした制度の中での非嫡出子の国籍をどうする、偽装防止をどうする、という議論なのですよ。要するに、彼は、「諸外国ではどう運営されているかもろくに調べていないことが分かりました。やれやれです。」なんていってますけどね、諸外国の例を全部ぶちまけちゃうと、彼が(たぶん)大好きな在日コリアン全部、ブラジル人や中国人の子どものかなりの部分が、みんな日本人になっちゃうのですよ(その意味で、この改正案が通ろうと日本が世界的にみて閉鎖的な国籍法を持つ国であることにはかわりありません。)。法務省は、諸外国の例なんて知ってるけど、全部出すと、みなさんがうろたえてしまうから遠慮して出さないでくれているのだと思いますよ。ああ、この優しさがボクのクライアントにも向けてもらえれば!
ところで、 元国会議員で、産経新聞よりもはるかにひどい文章をブログにのせているひとをみかけました(直接リンクするのも憚られる内容なので、はてなブクマをリンクします)。法律解釈はテクニカルな作業ですし、実際にどう機能しているかは実務家でないとわからないところがあるので、誤解される人がいるのは仕方ないですし、自分の意見を述べる自由は、誤解に基づくものであっても認められますが(もちろん誤解の「程度」と意見表明の方法次第では単なる迷惑行為になる場合もあると思います。)、この内容は、そうした建前では正当化できません。この元議員は東大出の元外務官僚とのことですが、中国人、フィリピン人、インドネシア人の親から生まれた子どもというだけで、「はだの色も濃い」というだけで、西成に住んでいるというだけで、どうしてここまで悪し様にののしられ、侮辱されなければならないのでしょうか。この種の表現に、傷つけられ、深い悲しみや憤りを感じている子どもたちに日々接しているだけに、わたし自身も、怒りとやりきれない思いでいっぱいになります。
(追記)
先ほど、この件で、非常に腹がたつ情報に接した。奴らのいう「日本人の血」は、まともに議論もできない根性なしってことか。結局、議論の時間がどうのなんてオオウソなんだよ。勝手にしやがれ。こんな茶番につきあえるかよ。書ける状況がくるかわからないが、その時期がくれば書く。
(再追記)
もうDNAでも何でもすればいいんじゃないですか(ボソッ)。そうしたら今法務局にたまっているボクの手持ちの案件のうち、DNAがない14件、全部裁判するので。国賠もつけちゃおうかな。まあ、さすがにそんなことにはならないですが
この期におよんで反対反対ってわめいている人は、いわゆる「キレ芸」でしょ。これだけのデマがとびかっているので、一般の人のなかには、あおられてしまった方も多いかも知れませんが、議員は、さすがに今度の改正阻止だのDNA義務付けで修正だのは考えていなくって(そこまでアホじゃないでしょ。まあ何人かは真正もいそうですが。)、キレたふり、ナリフリかまわないふりして、法務省や他の議員にトラウマを植えつけて、今後、国籍や外国人がらみの話をしにくい雰囲気を作ろうとしているのでしょう。だから、ボクも、時間がもったいないので、怒るのやめました。実際、ただでさえ、来週はこの件でリアルに時間とられるハメになったんで(おかげで仮処分の審尋、いけなくなりました。)。それに彼らには悪いけどもう最高裁で勝っちゃったし。
小倉弁護士が、ドイツの例について、紹介をされています。もうちょっと説明しないと一般の人にはわかりにくいかも知れませんが、これ読む限りは、反対派の言ってるのは、あっちゃこっっちゃの法律をツギハギしたデマ、それにのせられた産経新聞はアホ(これもキレ芸?)ということのようです。
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2008/11/dna-5848.html
※「これ読む限りは」とつけたのは、小倉先生が信用できないという意味ではなくて、小倉先生も慎重に留保されているとおり、ボクらプロは、閣議決定があってからあわててネットのまとめページとかを検索する素人議員とちがって、法解釈に際しては、「国会図書館調査及び立法考査局」がだしたものであっても、原文にあたって、かつ実務の裏づけもとらない限り、断言しないからです。ボクも、2006年にこの事件の上告理由書だすまでは、国とやりあっていたので、調べましたが、それ以後の外国の立法については、全部そこまでやっていないです。
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