いしけりあそび

一言メッセージ :ひとりで石けって遊んでます。いじけて、かも。たまにスペイン語。ラテン音楽は人生です。ああ、人生なんて...

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拝啓 チャベス大統領閣下 その2/5

 犯罪は、その人その人ごとの事情があって発生するものです。広島幼女誘拐殺人事件は、特殊な性的嗜好や罪の意識のどんまがうんだ忌むべき犯行であって、その犯人ヤギ某がペルー人だったからといって、他のペルー人が危険だということにはなりません。しかしながら、残念なことに、世界のおおくの国と同様、わが国にも、そのような偏見からのがれることのできない人が、かなりの数存在します。
 「人権啓発及び民間における人権擁護運動の助長に関すること」(法務省設置法第4条第27号)を任務のひとつとする法務省は、本来であればこうした風潮に警鐘をならし、外国人、特に広島幼女誘拐殺人事件の加害者と同じ国籍のペルー人、おろかな人々からは「同類」とみられる危険があるラテン・アメリカ諸国の出身者に対するいわれなき偏見と不当な差別を防止するために、啓発活動その他の適切な措置をこうじる義務がありました。
 ところが、法務省は、適切な措置を講じるどころか、こうした偏見をストレートに反映させた告示を発しました。
 すなわち、法務省入国管理局は、2006年3月29日、「定住者」の在留資格を有する者による犯罪が相当数発生していること、日系人として「定住者」の在留資格で入国し、在留する外国人による重大事件が発生し(3月28日の閣議後の記者会見で、当時の杉浦正健法務大臣は「相当数発生」とは検挙者の数のことで、「重大事件」とは広島女児誘拐殺人事件であることを明言しています)、治安に対する国民の不安が高まっているなどという理由をあげて、ラテン・アメリカ出身者が多数を占める日系人とその家族をターゲットにして、日系人及びその家族が「定住者」の在留資格を取得する要件に「素行が善良であること」を追加するとして、上陸及び滞在に著しく厳しい要件を課すことにしたのです(「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件の一部を改正する件」《平成18年法務省告示第172号》の一部改正。 以下「素行善良」に関係する部分のみを「本件告示」といいます。)

 告示の内容は複雑ですが、正確さを失わない限度で単純化すると以下のとおりになります。
○ 対象者は「定住者」の在留資格で滞在する日系三世、日系三世の配偶者、日系四世。
○ 素行善良とは、過去に道路交通法違反の罰金刑以外の、あらゆる刑罰歴を含む。また、少年法による保護処分が継続中の場合などは「素行善良」であるとは認めない。
 なお、本件告示では、定住者で在留する者のうち、いわゆる中国残留孤児、インドシナ難民、ベトナム難民等の子孫とその家族は、日系人であると否とを問わず除外されました。

 従来、有罪判決を受けた外国人については、薬物や売春などの特定の犯罪の場合を除き、軽微な犯罪であれば、在留資格の更新は認められることがふつうでした。今でも、「定住者」以外の外国人についてはそうした取扱いがなされています。罰金刑を受けたことを理由に、在留期間の更新が認められなかったケースは、わたしの知る限り存在しません。

 他方、2005年度における「定住者」の在留資格により滞在する外国人登録者数をみると、合計265,639人のうち、ブラジル人が153,815人、中国人が33,086人、フィリピン人が26,811人、ペルー人が21,428人、韓国・朝鮮人が8,908人、ベトナム人が5,103人、ボリビア人が3,142人等となっています。このうち中国人、ベトナム人と国籍不明のその他を除くと、全体227,450人のうち上記ラテン・アメリカ三国出身者は177,755人、約80%を占めます。
 
 このとおり、本件告示は、その経緯からしても、対象者からしても、ラテン・アメリカ諸国の出身者を狙い撃ちにしたものであることがあきらかです。(※)

 本件告示は、2006年4月29日から適用され、しかも、おどろくべきことに、告示前の罪についても遡及的に、過去にその罪の後に在留期間更新が許可されている場合も含めて、適用されることとなりました。
 
 実例をあげます。

 まず日系三世ボリビア人のリカルド・タカハシさんのケースです。
 彼は2000年6月に、在留資格「定住者」(3年)を得て日本に上陸しました。
 そして、翌2001年 9月、交通事故を起こしました。被害者は全治2週間のむち打ちになりましたが、入院はしていません。当時、彼は有効な国際免許は持っていましたが、日本における期限は3ヶ月前に切れていました。そして、彼は、事故について業務上過失傷害、道路交通法違反で20万円の罰金刑を受けました。
 その後、2003年 7月、彼は、在留期間を更新しています(定住者・3年)。罰金刑のことはなんら問題になりませんでした。さらに、2004年 8月には、日本の運転免許も取得しました。
 ところが、2006年6月に、彼がふたたび在留期間の更新を申請したところ、不許可になったのです。彼とともに、同じく「定住者」として在留していたコロンビア人である彼の妻と子も不許可となりました。
 理由は2002年10月に業務上過失傷害で罰金刑を受けたこと、これが告示の条件を満たさないことでした(道路交通法違反は除外されるので、免許の期限切れは問題にされていません)。

 次に日系三世ペルー人のフェリックス・サカタさんのケース。
 彼は2000年8月に在留資格「定住者」(3年)を得て日本に上陸しました。
 2002年11月、姉に頼まれて姉が空き地に冷蔵庫を捨てるのを手伝いました。これは貴殿ならご理解いただけると思いますが、彼は、その後誰かがもっていくだろうと考えて、要らない電化製品を空き地に置いておくラテンのやり方を、そのまま持ち込んでしまったのでした。
 ただし、これは日本では違法な行為です。そのため、彼は2003年1月、ゴミ捨てについて、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反で罰金20万円の有罪判決をうけました。
 2003年8月に、彼は在留期間更新を許可され、「定住者」(3年)の在留資格を受けました。ゴミ捨ての罰金刑は何の問題にもなりませんでした。
 ところが、2006年 6月、3年の期間が経過したので、在留期間更新申請をしたところ、今度は不許可とされたのです。理由は2003年1月に廃棄物処理法で罰金刑を受けたことでした。

 彼らのいいぶんはこうです。
「ボクは確かに事故を起こした。ゴミを捨てた。それは悪かったし、罰金も払った。だが、なぜそれが広島の事件と関係があるのか。ボクは女の子を殺したわけではない。物を盗んだわけでもない。なぜボクが治安に対する不安を理由に滞在を拒否されなければならないのか。
 しかも、入管自身、ボクが罰金刑を受けたことを知りながら、その後、ビザの更新を許可しているではないか。なぜ、いまになって、何年も前の事件のことがむしかえされて、突然、更新が拒絶され、この国から追放されなければならないのか。
 妻や子どもとともにきずいてきたボクの生活は、どうなってしまうのか。」
(つづく)

(※)ここまであからさまであっても、裁判になったとたんに、南米人を対象にしたとは認めないのが国の態度です。それは告示に「ペルー」「ブラジル」などの国名が入っていないからであり、その程度のいいわけが裁判所では簡単に通用するからです。ちなみに「排日移民法」の名まえで知られ、日本の反米感情をたかめたアメリカ合衆国の旧移民・帰化法13条C項も、「帰化の不能な外国人」の移民の制限をうたっていただけで、「日本人」とはどこにも書いてありませんでした。

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拝啓 チャベス大統領閣下 その1/5

拝啓

 ウーゴ・ラファエル・チャベス・フリーアス大統領閣下
 わたしは、ベネズエラ・ボリバル共和国からみると地球の裏側・日本で、弁護士をしている者です。スペイン語を話すことから、故郷をはなれてはるかかなたの東洋の国でくらすおおくのラテン・アメリカ諸国出身者からの依頼をうけています。

 さて、先日、新聞報道で、閣下が、欧州議会が不法滞在の外国人に対する強制収容や強制送還などのきびしい規則を承認したことに対し反発し、「恥ずべき決定だ。そんな所にわれわれの石油は行かない」と述べられたこと、その発言をうけて、他の南米諸国の首脳も、移民の保護のために、団結をよびかけたことを知りました
 移民送り出し国は、一般に移民受け入れ国にくらべると、経済的におとっているため、移民がひどい扱いをうけていても、これまで、なかなか声をあげることができませんでした。資源高を背景に、ラテン・アメリカ諸国の経済力が向上し、受け入れ国の経済に多大な貢献をしてきた移民の正当な評価と、その権利の擁護をもとめて、以前よりもおおきな声をあげることができるようになったのは、わたしにとってこころづよい限りです。

 ところで、本日は、閣下にぜひとも知っていただきたいことがあります。自国の恥をさらすようで、たいへん心苦しいのですが、この国では、ラテン・アメリカ諸国の出身者に対して、不正義が行われています。それはレイシズムと表現してもよいものです。わたしは、それをただすために、法廷や入国管理局で活動をしてきましたが、残念ながら、一介の弁護士にはどうすることもできません。そこで、閣下が、この事実をお知りになり、もしもこれが「不正義」であるとのわたしの考えにご賛同いただけるのであれば、ぜひ、日本政府に対しても、抗議の声をあげていただきたいのです。

 まず、ラティーノスが、どういう立場で日本にいるのかからご説明します。
 現在、日本に滞在するラティーノスのほとんどは、日系人とその家族です。彼らの在留がひろく認められるようになったきっかけは、1990年の入管法改正にあります。それまで、日系二世については日本人の子として、日系三世については個別事情を考慮したうえで例外的に認められていた日本への滞在が、この改正によって創設された在留資格「定住者」と、「定住者」に日系二世の配偶者、日系三世とその配偶者、子(但し日系四世については未成年で未婚に限る)が含まれるという法務省告示によって、広く認められるようになったのです。
 この改正は、1980年代後半のバブル経済のもと、人手不足に悩む製造業や建設業の3K(キツイ、キタナイ、キケン)仕事に外国人を、という産業界の要請にこたえたものでした。もっとも「外国人の単純労働は認めない」とのタテマエに固執する日本政府は、現在もなお、改正が事実上の単純労働力導入であったことを否定し、同胞愛の見地から、移民をした元日本人とその子孫に里帰りの便宜をはかった、という奇妙な説明に固執しています。
 いずれにせよ、政策決定の動機はともかくとして、この改正後、日本に滞在する日系人とその家族の数は、南米出身者、とりわけブラジル人とペルー人を中心に、爆発的に増加しました。たとえば、1989年当時、ブラジル人、ペルー人の外国人登録者数は2万人にもみたないものでしたが、2007年12月末には、376,663人にたっしています。

 ところが、2005年11月、日本でくらすラティーノスの地位をおおきくゆさぶる事件がおきます。
 11月22日に、広島県広島市で、下校途中に行方不明になっていた小学校1年生の女の子が、遺体で発見され、やがて、通学路沿いに住むペルー人男性が、逮捕され、性的暴行を加えて殺害した事実があきらかになったのです。

 その直後から、日本のマスコミには、外国人に対する偏見をあおる記事があふれました。ふたつつほど例をあげます。
 2005年11月30日付毎日新聞は、今年上半期の来日外国人の検挙件数、検挙者数について「凶悪犯全体では152件(同11件減)、185人(同13人減)と減少しているが、殺人だけを見ると25件(同6件増)、28人(同10人増)と増加している。」などと書きました。しかしながら、来日外国人の殺人事件の検挙人数(未遂を含む)は通年で1997年・83人→98年・62人→99年・51人→2000年・54人→01年・59人→02年・41人→03年61人→04年52人、増加傾向がみられません。同時期に、外国人の数は飛躍的に増加していることを考えると(外国人登録数では1997年12月末の1,482,707人から2004年12月末は1,973,747人へ。)、むしろ減っているとすらいえるでしょう。毎日新聞は、外国人と凶悪犯罪をむすびつけるために、たまたま増加した半期のみの数値をピックアップして、印象操作をはかったのです。
 2005年12月1日付産経新聞は「広島市の女児殺害事件は、外国人労働者の増加が犯罪の凶悪化など危険と隣り合わせになっている実態を浮かび上がらせた。来日外国人による犯罪が増加する背景の一つとして、近隣諸国との賃金格差に起因する不法就労を目的として流入してきた外国人の定着化が挙げられる。こうした外国人はこれまで“ジャパンマネー”を得るために強盗や窃盗、薬物の密輸・密売などの犯罪を繰り返してきた。」と分析してみせました。しかしながら、外国人が増加したから犯罪が凶悪化した、不法就労者が強盗や窃盗、薬物の密輸・密売を繰り返すなどという事実がないのは統計をみればあきらかですし(わが国で何度かおきている大量殺人事件の犯人は日本人です。)、賃金格差に注目してはたらきに来るのは不法滞在者ばかりではありませんし、そもそも「就労」を目的として来日するのが不法就労者であれば、彼らが「犯罪を繰り返す」というのは矛盾しています。

 聡明なる閣下がご理解されているとおり、こうした報道の根本的な問題は、統計をあれこれ検討して外国人の犯罪が多い少ないにあるのではありません。当然のように「外国人犯罪」というカテゴリーを設定する報道の、他人の痛みに対する自覚のなさにあります。たとえば、わが国でも、「低所得者」「母子家庭」「被差別部落出身者」について犯罪者が多い少ないという報道はみられません。個々の犯罪について、ある集団に属していることに犯罪の原因を求めるべきでないこと、そうした議論は差別をあおる有害なものであることについては、ある程度の理解はあるのです。しかしながら、奇妙なことに、こうした理解は「外国人」について論じる際には、まったくうしなわれます。こうして、たいはんの日本人の視界には、こうした報道を、暗い気持ちでみつめている外国人の姿ははいらなくなるのです。
(つづく)

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日本人の子に対する強制送還にみる裁判官の人権感覚

 先週、あるフィリピン人母とその子のケースの相談を受けました。
 子は日本人の子であるにもかかわらず、母とともに強制送還を命じられ、弁護士に依頼して強制送還取消しの裁判を申し立てにもかかわらず、東京地裁で敗訴をしたとのこと。
 
 もう少し説明すると、母は、日本人と結婚したが、その後、結婚生活は破綻して別居、籍を抜かないまま別の日本人の子を妊娠、いったん帰国してフィリピンで出産。
 その後、別居を理由に配偶者のビザは更新不許可となり、その子は短期滞在で来日、母は、その子の戸籍上の父との親子関係不存在、血縁上の父の認知の手続を理由にいったん定住者ビザに変更許可を受けたが、手続が進まないまま、母の定住者ビザも子の短期滞在も更新不許可になり、母子ともに退去強制手続に。
 退去強制手続の最中に、親子関係不存在調停を申し立て、入管はそのことをもちろん知っていたにもかかわらず、母子に強制送還命令、母を入管に収容、母からひきはなされた子は泣きながら児童相談所へと送られました。認知が成立したのは、その直後でした。

 この事件には、複雑かつアホな法制度がからんでいます。子は日本人の嫡出子として出生しました。子が退令手続にのったのは、嫡出子としての出生届を出さずに、国籍留保(外国で生まれた日本国民で、出生によって外国籍も取得した人は、3ヶ月以内に国籍留保をしないと、父も母も日本人である場合もふくめて、出生時にさかのぼって日本国籍がなくなってしまうのです。変でしょ?)もしないまま、フィリピン旅券で、短期滞在の在留資格で上陸したからです。上陸後、直ちに国籍再取得の手続をすれば、日本国民になったのですが、それはしませんでした。したとしても、親子関係不存在の確定とともにその日本国籍は失われ、別の日本人から認知されても、先の国籍法違憲判決までは、国籍は取得できませんでした。
 要するに、この子は、日本人Aの子として嫡出推定を受けたところ、実は日本人Bの子だったいうだけの話で、AからBに父をただす手続をやっている最中だったのに、国籍はおろか、在留も認められずに強制送還を命じられ、母からひきはなされて児童相談所に送られて、東京地裁の裁判官殿は、それは当然、としていたわけです。

 判決には「在留特別許可を付与するか否かについては、法務大臣等の広い裁量にゆだねられているところ、認知された非嫡出子であっても、必ず在留特別許可を付与しなければならないというような制約を定めた法規等はなく、またそのような基準が存在することを認めるに足りる証拠はないのであるから、仮に法無駄違人等が日本人から認知された外国人子に対する在留特別許可を付与しなかったとしても、その事情のみから当該判断に裁量権の逸脱又は濫用があったということはできない。」と書いてありました。つづめていうと、日本人の子だろうがそんなの関係ねぇ〜ってことです。

 私が、国籍確認訴訟という、Apemanさんいわく「搦手」で勝負した理由がおわかりでしょう。
 この国では、外国人とカテゴライズされると、とたんに「煮て食おうが焼いて食おうが勝手」になってしまうのです。大多数の裁判官の頭は、「外国人」と聞いたとたんに機能が停止するようにできているので、彼らに外国人の権利についてとくとくと説明するのは、モアイ像にむかって話しかけているのと同じで、ほとんどの場合時間のムダなのです。まあ、私の場合は、いまさら商売変えもできないので、いちおうやりますけど。
 
 さてと、今週あたり、最高裁判決もって子の国籍取得届でも出しにいくか(現在の国籍法には、3条の届出取得の場合、出生地要件はありません。)。裁判官殿、せっかくの判決、ムダにしてしまってごめんなさいね〜。

 

(ボク〜ホルヘ・セレドン)
ねえ、ママ、ドアのところにいる男の人が
おまえのパパだよ、おまえと話がしたいっていってるよ
ねえ、ママ、教えて
あの人はボクのパパなの
もしそうなら友だちにいってやりたいんだ
だって学校で友だちがいうんだよ
おまえパパいるの、おまえのパパ見たことないぞ、学校におまえを迎えに来たことないだろうって
(ママ〜ラ・インディア・メリヤラ。「誰だそれ?」ってコロンビア音楽のファンの方、あのソノーラ・ディナミタの歌手ですよ!)
かわいいむすこよ
おまえのパパは天国にいるのよ
ずっと前に私たちに悲しみだけを残していってしまったのよ
あの人がいってしまってから、心の休まるときなんかない
でもママがいちばん悲しいのは、おまえがパパを知らないことよ
ドアのところにいる男のいうことなんて信じちゃだめよ
友だちには、ボクのパパは天国にいるんだよっていってやりなさい
(パパ〜ダニエル・セレドン)
どうして子どもにそんなウソをいうんだよ
パパはこの空の下で放浪の人生を送っているっていってやればいいじゃないか
おまえの愛情をもてあそんだのは、あのつまらん通りすがりの男なのよっていってやれよ
いいたくなければ、オレをだましていなくなってしまったのはおまえだってことまではいわなくていい
ここにいる男が、オレがおまえのパパだよ
オレはそれを伝えたいだけなんだ
(ボク)
Ay, Hombe(ああ、なんてこったい)、ボクラ子どもたちはいったいどれだけ大人のせいで苦しまなければならないんだよ…

“ Drama provinciano”por El Doble Poder, 1981

PS 「法務大臣」にタイポがあったのに気がつきました。ステキなのでそのままにしておきますが、こうみえても私も「出入りの業者」なんで、「オレを無駄なんて強制送還された人への侮辱だ!」とか怒られたら困るなぁ。

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300日無戸籍児の問題は法制度の問題というよりは恵まれない立場の人の司法アクセスの問題+意外にアクセスがあるので解説を充実しました

○ 無戸籍」一斉申し立てへ 実父に認知求め調停
「離婚後300日以内に生まれた子は『前夫の子』とみなす民法の規定により、無戸籍となっている約20人が19日までに、実父に認知を求める調停を7月上旬に一斉に各地の家裁に申し立てることを決めた。
 支援組織の特定非営利活動法人(NPO法人)『親子法改正研究会』によると、無戸籍の子どもが実父に認知を求める調停手続きが可能かどうか最高裁に説明を求めところ、最高裁側から『可能』との回答があったという。
 調停が成立すれば、実父の子として出生届が受理され戸籍が得られる。ただ調停の推移によっては『前夫の子ではない』という立証を求められる可能性がある。
 これまで実父の子として戸籍を作るには、前夫との親子関係がないことを確認するために調停が必要だったが、家庭内暴力などが原因で離婚した場合、前夫の協力が得られないケースも多かった。」
 2008年6月20日 01:23 【共同通信】
 http://www.47news.jp/CN/200806/CN2008061901000945.html

 これまでもできましたよ。ぼくは普通にやっていましたもん。むしろ、判例があるのに、なんで家裁で、この方法ができることをいちいち説明しなければならないのか不思議でしたね。これで家裁で無駄な説明をする手間が省けると思えば(※1)、まあよかった。
 
「実務家のための入管法入門」東京弁護士会外国人の権利に関する委員会編
「ところで、このように嫡出推定が及んでいる子について、認知をするにはふたつの方法があります。ひとつめは、先ほどの『親子関係不存在確認』または『嫡出否認』の裁判を行い、その後、裁判外で認知をする方法で、ふたつめ、これらの裁判をしないで、裁判で認知を求める方法、『強制認知』です。
 みなさんが普通に思い浮かべる方法は前者だと思いますが、私が使いやすいと思うのはむしろ強制認知です。
 強制認知というのは、もともとは、実父が認知してくれないときに強制的に認知をさせるという制度です。夫との嫡出子とされている子について、真実の父に認知を求めても、そのままでは、認められません。すでに説明したとおり、認知は、嫡出でない子について認められるからです。ただし、そのような場合であっても、子どもが血縁上の父を相手方として認知の裁判を申し立て、その裁判の中で、いわゆる『先決問題』として、子どもと戸籍上の父の間には親子関係がないと認めてもらったうえで、認知を求めることはできます。親子関係の存否は、確認訴訟によらなくても、別の訴訟(たとえば相続回復訴訟や認知訴訟)において、先決問題として主張することもできます(最高裁昭和39年3月6日判決民集18巻3号446頁など)。それと同様に、強制認知においても、先決問題として親子関係の不存在を認めたうえで、認知をせよという裁判が認められます。」(「国籍・戸籍・身分関係」より。弁護士向けの講習会での講演をまとめたものです。著者はぼく。なおこの章は認知と国籍の関係に関するもので、たぶんこの本でもっともややこしいもののひとつですが、この前の国籍法違憲判決で文献としての価値をいっきょに失いました。)

 なお、この記事を書いた共同通信の記者はまだ理解していない。「調停の推移によっては『前夫の子ではない』という立証を求められる可能性がある。」ってあたりまえじゃんか!もういいかげんわかってくださいよ(笑)。(※3)


 実際の案件をみないと言い切れないけど、離婚後300日問題っていうのは、法制度がどうのというより、司法のアクセスや使い勝手の問題だと思いますよ。普通の知識がある弁護士にめぐりあって、普通の知識がある家庭裁判所にあたれば、夫と同居しながら別の男性の子どもを産んだようなケース以外は、前夫がDV男だろうが解決可能です。ぼくは、たぶん弁護士としてはこの種の事件についていちばんたくさん扱っていると思うけど(外国人女性の場合ビザの問題があるので、別居してもなかなか離婚しないことが多いから)(※4)、子どもの出生届も出せないような結末になったことは一度もないですよ。
 要するに、1964年からできた処理なのに、弱い立場にあって専門家にもアクセスできず、出生届けも出せない人がおおぜいいたり、こんな問い合わせがいまさらニュースになること自体が問題なんです。法制度が非現実的とかいうよりは、弁護士、裁判官、ちゃんとしろってことかと。(※5)

 あとは、「夫と同居しながら別の男性の子どもを産んだようなケース」で、血縁+家庭破綻説(血縁関係がなく、かつ親子関係不存在確認が必要になった時点で、親子の関係が完全に破綻しているような場合に親子関係不存在を認める説。)を最高裁が正面から認めるだけですね(※6)。家裁の実務を知らない専門家は意外に思うかも知れませんが、実務は事実上これに近い動きをしているし、いまはDNAで血縁あるなしは間違いなく判断できるので、判例変更しても混乱ないですよ。そもそも血縁もないうえに、当事者が別の家庭をきずいて、たがいに相手を親子と思っていないのに、裁判所が親子だっていいはるの、おかしくね?
 実は、「嫡出推定を前提問題として排除しつつ強制認知」という方法があまり取り上げられなかったのは、親子関係不存在の要件がいちおう「長期別居」とされている→(前)夫が刑務所や海外にいたような事案は別にして、裁判所としてはやはりその部分について(前)夫にも確かめたい→(前)夫が当事者にならない手続を裁判所が嫌がる→あんまり使われなくなる、という悪循環があったのです。(※7)

■ 意外に読んでくださる方が多く、ブクマもついたので、注記を足します。(2008年6月21日)■
※1 まあ、説明するのがめんどうくさいので、親子関係不存在でやったのもありますけどね。ただ外国人がらみだと、※2に書く管轄の関係で、どうしても強制認知でないとダメな場合があるのですよ。浦和家裁で、いくら説明してもなかなかこの方法が理解できない裁判官にあたったこともあります。
※2 嫡出推定が及ぶ子どもを認知する二つの方法には、以下の違いがあります。
「親子関係不存在の裁判をして、推定上の父との親子関係を断ち切ってから、血縁父が認知をする方法」…裁判の相手(被告)は推定上の父となります。そのため、別れた前夫の居場所がわからないとか、暴力が怖いからといって二の足をふむ、というのが問題点とされています。ただし、居場所がわからなくても公示送達という方法で裁判をすることは可能です。また暴力をふるう人の場合は、申立書に現住所以外の住所(前の住所など)を書く、調停の時間をずらして顔をあわせないようにすることで、ほとんどの場合対処が可能です。裁判所もそのくらいの融通はきかせています。ちなみに「家庭内暴力などが原因で離婚した場合、前夫の協力が得られないケースも多かった」と記事にあるのはNPO法人(「親子法改正法研究会」。HPの記載から判断すると、どうやらプロではなさそうです。)のHPの記載がネタ元のようですが、意味不明です。裁判所に来なければ調停(=相手の同意がないとダメ。もっとも親子関係不存在は合意が成立しても調停ではなくて審判ですが。)は不調で人事訴訟になるだけ、訴訟は被告が欠席でも判決します。DV男は、むしろなんにもしてくれないほうが裁判はやりやすいのです。
「強制認知」…裁判の相手(被告)は血縁上の父。嫡出推定については、認知の裁判の過程で、及ばないことを確認します。
 なお、かんちがいしている報道がほとんどですが、嫡出推定そのものは、子どもにできるだけ父を持たせようという制度なので、どこの国の民法にもあるのです(けっして不当な制度ではありません。)。したがって、外国人女性が、本国で結婚をしていた場合、本国にいる夫との嫡出推定も排除しないと、血縁上の父は認知できません。その場合、親子関係不存在確認→認知という方法しか取れないと、実際上、不可能となる場合があります。というのも、国際裁判の管轄というのは、原則として被告(相手方)の居住地国とされているからです。
※3 上に書いたとおり、認知の裁判の過程で、嫡出推定(=前夫の子であるとの推定)が排除されなければならないのは当然です。調停の推移次第じゃありませんよ。この件に関する報道は「これはひどい」ものばかりです。
※4 つまり、外国人女性の場合、日本人夫と離婚してしまうとビザがなくなってしまうので、愛がなくてもなかなか籍を抜かない、その状態で別の男の子を妊娠することがあるということです。
※5 世の中の大半の人にとって、裁判というのはとてつもなくたいへんなことです。報道されているようなケースは、現行法の元でも、ひとつひとつステップを踏んでいけば解決は可能であり、少なくとも何十年も放置して問題になった子がさらに子を産むという事態は避けられたと思います。ただ、シングルマザーで、DVで打ちひしがれ、事務処理が苦手だったりして、こういうステップをひとりで上ることができない人は、世の中にたくさんいるのです。そういう人に対して、手をさしのべるべき弁護士や裁判所が機能していないことが、この問題の重要なポイントなのです。
※6 現在の最高裁判例によると、妊娠可能期間中に推定上の父と長期別居をしていることが、嫡出推定の排除のための要件になっています(長期別居説・外観説)。ただし、本文でも書いたとおり、関係者のほとんどは「血縁もないうえに、当事者が別の家庭をきずいて、たがいに相手を親子と思っていないのに、裁判所が親子だっていいはるの、おかしくね?」と思っているので、実は家裁ではこっそり血縁+家庭破綻説で動いています。長期別居説は「男の沽券」のにおいがしますし(夫が妻を寝とられたのはみっともないってこと。)、かつてのように親子鑑定の精度に問題があった時代ならともかく、いまはDNAでばっちりですので、長期別居の厳格な立証にこだわって、血縁もなければ育てる気もない推定上の父との関係を維持する理由はないと思います。
※7 なお、強制認知の方法が広く家裁で認められても、長期別居説を維持したままだと、裁判所としてはやはり推定上の父に確かめたいという気持ちはあるでしょうね。その場合、推定上の父を、裁判所が証人というかたちで呼んで確かめる、文書の回答や電話で確認するという手法が広く取られるべきでしょう。これは建設的な提案ですよ。

興味のある人はこれもあわせてお読みください。
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/archive/2007/04/06

(おまけ)
○ あきれた司法修習生!取り調べをブログで公開
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20080620-OHT1T00071.htm
 彼のブログの幼稚な表現にはいい感じはうけないが(これが守秘義務違反かというと疑問も残ります。)、報知新聞の記者さんは、被疑者の実名入りで取り調べ内容を記者にペラペラ話している警察官にはあきれないんですかね〜。
○ 加藤容疑者「親は他人」…秋葉原無差別殺傷事件
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20080619-OHT1T00228.htm

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剣はペンより強いのか〜秋葉原無差別殺人事件


> この事件に関しては本当に言うべき言葉がない。一般的にみて俺は(かなり)左よりの方だと思うが、それでも貧困や格差の問題を声高に主張するための格好の事例として、いやもっとぶっちゃけていえば、自分の政治的発言のためにこの事件を利用してほしくない。

 一般的にみないでもかなり左のわたしも、きしさんのいうことに、つよく共感します。刑事事件なんていうのは、実際に弁護をしてみると、報道されている内容、判決の結果、実際に起きたこと、どれもがバラバラなんですけど、あんなわけのわからない事件で、みんな、よくいうわ。

 事件の背景にそうした問題がないとはいいません。わたしも被疑者のしたとされる書きこみのログには切ないものを感じました。ただ、大臣までもが「背景に派遣労働者の問題がある。日雇い派遣は原則的にやめる方向でやるべきではないか。秋には法律の形で対応したい」なんていいだすと、なんだよそりゃ、といいたくなります(※)。じゃあ、貧困に絶望した母子(日本のひとり親世帯の子どもの貧困率は57.3%です。)が大量殺人でもすれば、生活保護の母子加算の廃止も撤回してくれるんでしょうか。今、牛久の収容所に、人材派遣業者から1月と2月の前半の給料から水道光熱費だなんだかんだと359,011円も引かれて(支払を受けたのは87,600円)、所持金がないので帰国のチケットも買えないまま4ヶ月も収容されているコロンビア人がいますが、彼女のために大臣はなにかしてくれないのでしょうか。

 行政への申入だの訴訟だの街頭デモだのとまっとうにやると冷笑されるのに、あれだけメチャクチャするとみんなが「疎外」だの「孤独」だのと気にやんでくれる。高名な学者まで「幼稚」以上の説明をしてくれないのですから(それにしても「アキバ系の感性」なんて説明してくれないとわからないぞ、と思うのはわたしがオヤジだからでしょうか。)、わたしにはなぜかなんてわかりませんが(現状に不満はあっても「人権」だの「連帯」だの「抵抗」だのとサヨクっぽいのは嫌いってことなんでしょうか)、やはり“The pen is mightier than the sword”(ペンは剣より強し)の前には“Beneath the rule of men entirely great”(完全に偉大な人物の統治のもとでは)という留保が欠かせないようです。

※ 実際はグッドウィルの件のためでしょう。だったらなおさら、この事件とは関係ない、というのが政治家としての見識です。まだ捜査すら終わっていない事件なのですから。
 なお、わたし自身は、派遣労働の拡大について、総合規制改革会議が適用業務の完全自由化をうちだしたころから、これを懸念するエッセイを雑誌で発表していました。製造業への解禁前から、外国人労働者の間では偽装請負が一般化していたこと、そうしたはたらきかたが、単に待遇のわるさ、不安定さをもたらすにとどまらず、外国人のライフスタイルをネガティブなものにしているのをみてきたからです。当時は、組合の活動家すら「外国人に特有の問題」と考えていたようですが。

(参考)
○ トヨタの労働現場―ダイナミズムとコンテクスト
 伊原 亮司(著) 著者は院から“ナベマサ”ゼミ。ブレイバーマンの Labor and Monopoly Capitalや絶望工場とあわせて読むといいかも。
○ 雇用融解―これが新しい「日本型雇用」なのか
 風間 直樹(著) 著者は高校の後輩らしい。若さあふれるいいルポ。
○ 越境する雇用システムと外国人労働者
 丹野 清人(著) 著者は友だち。中川さんよ、外国人受け入れうんぬんするなら、これぐらい読んでからだ。
○ 外国人研修生殺人事件
 安田 浩一 (著) 評論家も事件について大きな物語を語るならこれぐらい真剣に取材してください。

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