独自の電子マネー「円天」を使った巨額詐欺事件で組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)に問われた「エル・アンド・ジー(L&G)」(東京都新宿区、破産)元会長、波和二(かずつぎ)被告(76)は2日、東京地裁(山口裕之裁判長)の初公判で、起訴内容について「そういうことは全面的にない。100%勝てる。預かった金の利払いや返還を行うつもりだった」と否認した。検察側は冒頭陳述で「波被告が『詐欺的』との顧問弁護士の指摘を受け入れず資金を集めた」と指摘した。
円天は05年5月に導入され、会員は当初ネットショッピングなどで利用していた。
検察側は冒頭陳述で波被告が05年9月の会議で「(円天は)より大きな金を集めるための装置」、06年5月の会議で「出資金の利払いが現金から円天になるかもしれない」と発言したと指摘し「遅くとも06年6月には返済不可能と認識していた」と主張した。さらに07年2月、実際に利払いを円天に切り替え、破綻(はたん)状態を隠したとした。
高利息をうたい広く資金集めを始めたのは00年ごろから。検察側は90年から継続的に債務超過で、02年9月、顧問弁護士から「出資法に違反し詐欺的」と指摘されたが聞き入れなかったと主張した。
00年7月以降、約3万7000人から約1285億円を集めた。波被告は年1億800万円の報酬を受け取るなどして約20億5000万円を得ていた。気に入ったキャバクラ従業員を雇っては1回30万円を渡し性行為をしていたとし「事件の首謀者」と主張した。
起訴状によると波被告は元営業担当社長、寺嶋惇被告(64)らと共謀して06~07年「年利36%の利息を配当し元本も返還する」などとうそを言い、男女31人から約3億2700万円を詐取したとされる。事件では22人が起訴され、18人が審理入りし、残る4人の初公判が23日に開かれる。【安高晋】
午後1時半、黒いTシャツ姿の波被告が傍聴席をきょろきょろ見回しながら入廷した。逮捕から約5カ月。顔はやつれ、真っ黒だった髪は白髪が目立つ。逮捕当日の朝、ビール片手に報道陣に自説を展開した面影はない。検事が起訴状を朗読しようとすると、立っていた波被告は「足腰がつらくて。もう76歳ですから」と裁判長に許可を求めて座った。
その後、裁判長が「返済できないのに資金を集めたのですか」と尋ねると雄弁に語り始めた。「3年かけて事業をやっているところだった。何で調べてくれないのか」。裁判長が事業内容を聞くと「円天事業は世界に対して発表する機会があれば、その時分かる」と言い「(起訴内容は)僕の考える思想と初めから食い違っているので反論したい」と捜査批判も繰り返して、裁判長から再三発言を制止された。
法廷には被害者の姿も目立った。373万円の損害を被った東京都目黒区の無職男性(77)は、キャバクラ従業員に金を支払ったとする冒頭陳述に「老後のための財産を奪われた私たちを愚弄(ぐろう)している」と憤った。起訴内容を否認したことについて「責任を感じているようには思えない」と話した。【町田徳丈、安高晋】
毎日新聞 2009年7月2日 20時45分(最終更新 7月2日 22時53分)