1000の論客、1000の主張 日本最大の論争データベース『日本の論点PLUS』ついに誕生!!
日本の論点PLUSとは? 本サイトの読み方
日本の論点PLUS
執筆者検索 重要語検索
フリーワード検索  
検索の使い方
HOME 政治 外交・安全保障 経済・景気 行政・地方自治 科学・環境 医療・福祉 法律・人権 教育 社会・スポーツ
今週の必読・必勝 日本を読み解く定番論争 議論に勝つ常識一覧

論 点 「児童ポルノ規制の範囲とは」 2009年版
世界に恥ずべき日本の児童ポルノ文化――倫理なくして何が表現の自由か
[児童ポルノについての基礎知識] >>>

もりやま・まゆみ
森山真弓 (衆議院議員)
▼プロフィールを見る
▼対論あり

全2ページ|1p2p
一度映像化されたら無期限に人権が侵される
 スウェーデンの会議でショックをうけた日本は九七年六月一八日与党の児童買春問題等プロジェクトチームを発足し、紆余曲折の結果、まず参議院に法案を提出し、九九年五月一八日に衆議院本会議でこれを可決、成立させました。少しでも早く児童買春・ポルノ禁止法を作りたいという議員たちの気持ちが結実したものです。
 この法律は児童の権利擁護を目的として、一八歳未満の児童に対価を供与して性交し、又はこれを周旋することを罰則をもって禁じております。又児童を相手とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態の写真、電磁的記録に係る記録媒体等の物を、不特定多数に提供する目的で、製造し、所持し、運搬し、輸入し輸出することなども罰則をもって禁じています。
 〇四年に厳罰化のために一部改正されました。しかし、内容は基本的に同じで、児童ポルノの販売や提供目的で所持することは罰せられるのですが、個人的に収集する目的などのいわゆる単純所持は規制されていません。しかし、これでは子どもを性欲の対象として見ることを容認するだけでなく、製造や販売を煽ることにもなります。本当に児童ポルノをなくすためには、自分の趣味で集めるという単純所持もなくさなければならないと思います。プライバシーの侵害とか、警察権の乱用が心配されるなど根強い反対があったので、これまでは見送られてきたのでした。
 〇三年一二月第二回の「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」が横浜で開かれました。これは日本が禁止する法律を作ったことを世界にアピールするとともに国民にも広く知ってもらうためでありました。
 しかし、その後情報手段の急速な発展により、ネットやデジタルカメラの普及で、瞬時に画像が世界中をかけめぐり、一度映像化された子どもはほとんど無期限にその人権を侵され続け、その心の傷は一生消えないだけでなく、一度流出した画像や映像は回収不可能で生涯苦しむことになる状況になってしまいました。これらを考えて国際的にはすでに単純所持が禁止され、処罰されるのが常識となっており、G8の中で残るのはロシアと日本だけといわれ、この犯罪の国際的な捜査のうえからも日本も早く規制してほしいという動きが強くなってきました。


欧米諸国の多くはアニメや漫画も含めて禁止
 第一六九回国会で与党は児童ポルノの単純所持の禁止を盛り込んだ法律の改正案を衆院に提出し、継続審議といたしました。野党も真剣に検討されましたが、政局がにわかに流動的となり、〇八年一〇月現在、法案成立の見通しが立っていません。〇八年一一月下旬にブラジルで第三回の世界会議が行われる予定で、そのときには日本も、胸を張って参加したいと思っています。
 これが成立した後にもまだ大きな課題が残ります。この法律が、もともと現に存在する子どもの人権を守るということを前提としているので、架空の子ども、つまりアニメや漫画を律し切れないのです。街の書店には幼児がレイプされている場面などを描いた、見るに堪えない漫画雑誌が堂々と並んでいます。こうした雑誌などは異常な性欲をもつ大人を刺激し、犯罪を増加させるということで、欧米諸国ではアニメや漫画も厳しく禁止している国が多いのです。
 将来は日本でもこれらをも規制することが、性倫理の確立、ひいては子どもの人権を本当に守るために不可欠だと思います。


前のページへ

全2ページ|1p2p




議論に勝つ常識
2009年版
[児童ポルノについての基礎知識]
[基礎知識]どうすれば子どもの性虐待はなくなるか?



論 点 「児童ポルノ規制の範囲とは」 2009年版

対論!もう1つの主張
現行児童ポルノ法では不十分か? 安易な規制強化の持つ危険性
山口貴士(弁護士)


▲上へ
関連論文

筆者の掲載許可が得られない論文はリンクしていません。
96年以前の論文については随時追加していきます。ご了承ください。

(2005年)健全か否かは「お上」が決める――わいせつコミック裁判の横暴
藤本由香里(評論家)
(2000年)このままでは児童買春・ポルノ禁止法は援交撲滅と児童ポルノ摘発法だ
藤井誠二(ノンフィクションライター)
(1997年)インターネットのわいせつは処罰になじまず――各ユーザーで対処すべし
園田 寿(関西大学法学部教授)
(1996年)パソコン通信は第三のメディア――現行法では悪用防止に限界がある
堀部政男(一橋大学法学部教授・法学部長)
(1996年)腰くだけといわれようと、警察の考えるワイセツの範囲はバッチリ取材した
加納典明(写真家)
(1996年)「愚行権」は認めるが、子供に野放しのポルノグラフィーは日本の恥だ
加藤尚武(京都大学文学部教授)
(1995年)ヘアヌード解禁は正しいのだろうが、文化の味が消えた
赤瀬川原平(グラフィックデザイナー、作家(尾辻克彦))
(1994年)ヘア写真という毒を健康的に俗化させた“罪”はマスメディアにある
泉 麻人(コラムニスト)
(1993年)性の解放が進めば進むほど、人間の性的欲望は弱化する
岸田 秀(和光大学人文学部教授)
(1993年)性情報を規制すればするほど、若者の性犯罪は増加する
福島 章(上智大学文学部教授)
(1993年)「ヘアー論争」は当局と出版・映画会社のゲームである
池田満寿夫(画家、作家)



personal data

もりやま・まゆみ
森山真弓

1927年東京都生まれ。東京大学法学部卒。労働省婦人少年局長を経て、80年参院選に初当選。外務政務次官、内閣官房長官(女性初)、文部大臣などを歴任。96年に衆院選に初当選、2001年小泉内閣で法務大臣を務める。07年より白鴎大学学長。08年に自民党法務部会児童ポルノ禁止法見直しに関する小委員会委員長として、児童ポルノ法の改正に積極的に取り組む。著書に『よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法』(共著)、『法務大臣の八八〇日』『春夏秋冬』『この日この時』『非常識からの出発』ほか。




▲上へ
Copyright Bungeishunju Ltd.