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議論に勝つ常識
2009年版
[児童ポルノについての基礎知識]
[基礎知識]どうすれば子どもの性虐待はなくなるか?


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売買される子どもたち
 二〇〇八年八月、幼児売買を扱う衝撃的な映画が公開された。タイを舞台に、買春や臓器密売のために売られてゆく子どもたちを描いた『闇の子供たち』(原作は梁石日氏の同名小説)である。この映画は、少年少女が貧しさゆえに売春宿に売られ、欧米人や日本人の児童性愛者の玩具として“消費”されてゆく姿を生々しく描いている。エイズを発症して客をとれなくなった少女は、黒いごみ袋に入れられてごみ捨て場に廃棄される。ある少年は生きたまま心臓をとられて臓器移植のドナーにさせられる……。
 現在、東南アジアを中心に世界で一〇〇万人以上の子どもが売春に従事させられている。成人男性の児童性愛者や同性愛者が、少女や少年を買うだけではない。大人の女性による少年への性的虐待行為も多発している。少年の性器に強力なホルモン剤を注入したうえで性行為を強要する例が急増しているのだ。一一〜一二歳の少年に五、六回そういう薬物を投与すると、死に至るケースもある。


増加する日本の児童ポルノ事件
 このような売春宿に売られた子どもたちは、児童ポルノ画像の被写体にもなっている。それらの画像や、各国で秘密裏に撮影された画像は、インターネットの普及により、国境を越えて急速に広がる。そのため、児童ポルノは国際問題に発展していった。
 日本では、児童ポルノがらみの事件が後を絶たない。〇八年六月、埼玉県在住の元小学校教師・渡辺敏郎(三五歳)容疑者が、東京都世田谷区内の小学校で再び逮捕された。渡辺容疑者は、〇七年二月から三月にかけて、交通事故で死亡した児童たちの写真を自分のホームページに無断で掲載したなどとして、著作権違反と児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕され、懲役二年六月、執行猶予五年の有罪判決を受けていた。保護観察中にもかかわらず、児童の写真を撮るため小学校の校庭でカメラをもって歩いていたところを、駆けつけた警官に逮捕されたのだ。
 〇八年八月には、全裸の少女の画像をインターネットに投稿していた東京都在住のフリーターの藪谷薫容疑者(三六歳)が、児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕された。藪谷容疑者は、インターネットの画像サイトに一〇歳前後の少女の全裸写真を投稿していたが、ICPO(国際刑事警察機構)を通じてドイツの警察から警察庁に通報があり、事件が発覚したのだ。同容疑者の自宅からは、ファイル交換ソフトを使って集めた静止画二万五〇〇〇枚を記録させたDVDなどが押収された。
 これらの事件は氷山の一角にすぎない。〇八年上半期に全国の警察が摘発した児童ポルノ製造・提供事件は、前年同期より一七・二%増えて三〇七件にのぼり、児童買春・児童ポルノ禁止法が施行された二〇〇〇年以降、最も多くなった。児童のわいせつ写真をインターネットを通じて売買するケースがほとんどで、児童ポルノ製造・提供事件で摘発された一九一人のうちインターネット関連は一〇五人。かたや同事件関連の被害児童は、前年より三六・四%増加し、過去最悪を記録した。(図参照) インターネットの普及に伴い、日本は児童ポルノ画像や動画を発信する“児童ポルノ大国”となった。内外からの批判が相次ぎ、〇四年に法改正を実施する際、児童ポルノ画像を持っているだけで処罰の対象にすることも検討されたが、捜査権の乱用やプライバシー権の侵害につながる恐れがあるため、見送られた経緯がある。だが、単純所持の禁止を求める声は根強く、自民党は〇八年二月、同法の改正をめざす法務部会を設置した。そして同年六月、自民、公明与党の児童ポルノに関するプロジェクトチーム(森山真弓座長)は、児童ポルノの単純所持禁止などを盛り込んだ法律案を衆議院に提出した。


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論 点 児童ポルノ規制の範囲とは 2009年版

私の主張
世界に恥ずべき日本の児童ポルノ文化――倫理なくして何が表現の自由か
森山真弓(衆議院議員)
現行児童ポルノ法では不十分か? 安易な規制強化の持つ危険性
山口貴士(弁護士)


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