衆院選後の「処遇」をおそれ小沢氏を批判できない民主党
2009年6月30日 週刊文春
東京地裁で六月十九日に開かれた西松建設事件初公判の冒頭陳述で、事実上、検察側から公共工事で落札業者を決める「天の声」を出していたと指摘された民主党の小沢一郎氏。代表辞任後も、選挙担当の筆頭代表代行に横滑りし、今も衆院選対策の采配を振る司令塔である。裁判が政権交代を懸けた衆院選にどう影響するか、民主党議員ならずとも気になるところだ。与党側には「代表代行を辞任すべきだという声が民主党内で上がるのではないか」と期待する向きもあったが、実際は寂(せき)として声なし。記者団の質問に一切答えず、だんまりを決め込む小沢氏に対し、説明責任を果たすよう求める意見すら出なかった。
民主党関係者が党内の状況を解説する。
「西松問題が選挙にマイナスであることは間違いないが、小沢氏の責任追及を始めれば、反小沢グループ対親小沢グループの党内抗争に発展しかねない。そのマイナスの方が大きいという共通認識がある。小沢氏の公設秘書が逮捕された後も党の支持率、政権交代への期待度がさほど落ちなかった経験則から、放置しても致命傷にはならないという楽観論も影響している」
それに加えて「みんな選挙後の処遇を考えている」と指摘するのは、小沢氏に近い中堅、若手議員グループ「一新会」メンバーの一人だ。
次期衆院選で民主党が政権を手にした場合、自民党の小泉チルドレン(八十三人)を上回る規模の一年生議員が誕生することになる。彼らの多くは小沢代表時代に選ばれ、物心両面で面倒を見てもらってきた“小沢チルドレン”。
落選中の側近も復活すれば、「小沢軍団」は党内で最大最強の勢力になり、鳩山由紀夫代表はこれまで以上に小沢氏の意向に配慮せざるを得なくなる。それを見越して、
「ここで小沢さんに後ろから鉄砲を撃つような真似をすれば、選挙後に干される、とそろばんを弾いている」(前出の一新会メンバー)
という見立てだ。
小沢氏は代表辞任後に地方行脚を再開し、新人候補のてこ入れに余念がない。夜の会食の席には地元の連合幹部や有力支援者を集め、とっておきの笑顔で一人一人お酌をして回るスキンシップ作戦を展開している。西松事件で首相の座を棒に振ったかに見える小沢氏だが、政権交代を実現すれば「復活の日」はそう遠くない?
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。
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