直枝政広がまだ〈政太郎〉だった頃、湾岸スタジオに送ったデモ・テープをキッカケに生まれた、
ムーンライダーズの
鈴木博文との絆。それは
政風会というロック結社へと発展し、86年に
カーネーションとのスプリット・ミニ・アルバム
『DUCK BOAT』を発表する。そして、それから21年。長い散歩の果てに、二人は再びスタジオで向かい合った。
鈴木「いつかまたやりたい、っていうのはあったんだよね。解散とか、そういうことは言ってなかったし」
直枝「昨年末、何も打ち合わせしないでお互いギターを持って歌い始めた時に、不思議なフォーク・サイケ感がふっと降りてきた。“あ、これでいいや”って思いましたね」
政風会にとってファースト・アルバムとなる
『政風会』は、『DUCK BOAT』とは違った手応えを持つアルバムだ。小里誠(
ザ・コレクターズ)、中原由貴(タマコウォルズ)をゲストに迎えた本作は、無頼なバンド・アンサンブルがズシリと重く、生々しい。
鈴木「最初は二人だけで、“スタジオ・ワークに時間をかけて”って思ってたけど、二人のアーティスト(小里、中原)を入れて、バーンと4曲録った感触が良かったから、そっち寄りになってきた」
直枝「政風会としてライヴがやりたかったんで、なるべくストレートでシンプルな曲を持っていこうと。政風会かソロの曲にするか迷った曲もあったんですよね、〈Starsailer〉とか。でも“やっぱり政風会だ!”と思ったとたん、政風会はバンドでやろうって、自分のなかで見えてきたものがあった」
アルバムのキーとなった直枝作「Starsailer」から、〈星(Star)〉で繋げた鈴木作「Highway Star」への流れは鳥肌もののカッコ良さだが、オオカミの輪唱のようなデュエット・ナンバー「同じ道」は、二人が辿り着いた新境地。政風会の新たなスタート地点といえるかもしれない。
直枝「
ヴァン・モリソンと
ボブ・ディランがデュエットしてる曲があるんですけど、あんな風に二人で歌える曲が欲しいねって話をしてて。あの曲はたぶん、今の究極の政風会。アルバムのすべてを物語ってる」
そして、これから。政風会はどこへ向かって歩き出すのか。照れくさいことは承知で、これからお互いに期待するもの、なんてことを最後に訊いてみた。
鈴木「直枝君には今以上に女の子ファンを増やしてほしいね(笑)。俺はそのおこぼれをもらう。やっぱり直枝風ダンディズムってあるじゃない? 絶対、隙を見せないというか。シャツのボタンを2つ開けようか、3つ開けようか悩んだりね」
直枝「見てるなあ(笑)。おれは博文さんには永遠にエロであってほしい。こんなモテる人いないからね。それについてはおれが一番よく知ってるし、それが博文さんだと思ってるから。これからもずっとエロであり続けてくれたら、音楽も続いていくと思う。エロ=音楽!(笑)」
グラマラスに枯れ続ける、どうやら政風会のこれからのテーマが決まったようだ。そんなこんなで、オーバー・40のロックはまだまだローリングし続ける。
鈴木「グラム・フォーク・ロック(笑)、そういう新しいジャンル作ろう」
直枝「ジャケットの裏、ギラギラだったりしてね。トラックみたいな装飾で(笑)」
取材・文/村尾 泰郎(2007年11月)