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緊急提言 「臓器移植法改正に国民的議論を〜いま問われる日本人の倫理観」

2009. 5. 29  大阪大学副学長 病院担当 門田守人(21世紀医療フォーラム代表世話人)

 WHOあるいはイスタンブール宣言で強制されるからではなく、日本人自らがどちらを選択するかが求められているのです。

 しかし、日本国内では現在も臓器移植を待つ多くの患者が存在し、臓器移植がなければ死を待つだけ、ということも一方の現実です。私は外科医として、臓器移植については、「脳死は人の死」を前提にした改正案を成立させ、国内での移植数を増加させるべきだと考えています。

 当然、今の段階で「脳死を人の死」と認められない人のため、書面または家族を通じて、脳死判定・臓器提供を拒否できる権利を担保しておくことは言うまでもありません。

臓器移植の先進国といわれるドイツでは、家族の同意が必要な現在の「同意法」から、生前に本人が拒否していない限り臓器提供が可能とする法律、「拒否法」への改正が検討され、より臓器移植が活発になるよう、国民的議論がなされています。

 繰り返しになりますが、日本の臓器移植問題において重要なことは、国際社会への甘えが許されない今、脳死臓器移植以外では救えない患者に対して、「国際社会と同様に、日本国内での脳死臓器移植を進めるか」、あるいは、「我が国独自の文化として、患者を国際的かつ標準的治療とは言えない『保存的治療』に専念する道を選択する」かを考えなければならないということです。

 結論を得ることは難しくありません。国際社会で活躍する我が国が、生命倫理観のみグローバル社会から逸脱した我が国独自のものを主張していて良いでしょうか。

 いまこそ、臓器移植に対する国民的関心の高まりと、事実を見極めた論議が必要であり、結論として、「脳死は人の死」としたA案を採択すべきであると考えます。

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