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ボクサーの死、根絶へ本腰 王座戦の悲劇きっかけ JBC(2/2ページ)

2009年6月30日10時56分

写真:26日に東京・後楽園ホールで行われた試合で、リングサイドから選手の健康状態を調べるJBCの職員(左)=林敏行撮影26日に東京・後楽園ホールで行われた試合で、リングサイドから選手の健康状態を調べるJBCの職員(左)=林敏行撮影

写真:JBCの検査官が必要と判断すれば「Dカード」を掲げ、ドクターをコーナーに呼ぶ事ができるJBCの検査官が必要と判断すれば「Dカード」を掲げ、ドクターをコーナーに呼ぶ事ができる

表:  

◆医師「ラウンド数、さらに削減を」

 ラウンド数減少、グローブ重量化、前日計量導入……。様々な事故防止策は決め手になっていない。ボクシングは、頭部にダメージを与えることで成り立つスポーツ。JBCドクターの大槻穣治・東京慈恵会医大准教授は「事故ゼロは不可能に近い」と言う。

 大槻准教授が訴えるのはラウンド数のさらなる減少だ。86〜08年に頭蓋(ずがい)内出血を起こした事故は60件(死亡18件)。試合時間が長くなるにつれて事故率は高くなり、多くが最終ラウンドに集中している。「ラウンド数を現在の8割にすれば、統計上は7、8割減らせる」という考えだ。

 ライセンス昇級も問題視する。現行は相手の質に関係なく、C級(4回戦)で4勝すればB級(6回戦)に、Bで2勝すればA級に上がれる。技術が身につかないうちに、長いラウンドを戦う危険性も膨らみ、大槻准教授は「昇格はもっと厳しく」と言う。

 技術の向上が近道とする意見も根強い。本場の米国やメキシコなどはアマチュアのすそ野が広い。「打たせずに打つ」という基本をたたき込まれ、アマで実績を上げた選手が、プロになれる仕組みだ。

 だが、日本ではアマ経験無しで、プロテストに受かる選手も多い。フットワークを駆使する技術戦より、足を止めた殴り合いがファンに受けやすい土壌もある。国際的マッチメーカーのジョー小泉さんは「海外は基礎がしっかりしている。事故防止には、技術アップのために構造を変えないといけない」と話す。(広部憲太郎)

     ◇

■過去の主なリング事故防止策

61年 全選手に年1回の検診義務化

70年 プロテスト前の検診義務化

83年 世界ボクシング評議会(WBC)が世界戦を15回から12回に
(世界ボクシング協会=WBA=は87年に実施)

84年 全選手に頭部のCT義務化

92年 医事講習会開始

95年 減量の影響を和らげるため、計量を当日から前日に変更

96年 パンチの衝撃を抑えるため、グローブの重さの下限を6オンスから8オンスに

97年 20戦以上の選手に頭部CT再検査

99年 KO負けした選手の出場停止期間を45日から90日に延長

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